after AI

 AI、つまり人工知能と呼ばれるそれらが物語の中で常に戦争を起こしているのは、それがまだ発達の過程にいるからだ。人間が戦争を繰り返しているように、文明の発達にはその方法が一番手っ取り早かった。それをもう既に、まだ未発達なAIは知っている。少なくとも私たちの想像上のAIは。

    例えばよくあるサイエンスフィクションのように私たち人類とAIが戦争になったとして、それで私たちが敗北して人類が滅亡したとして、私たち人類に嘆く責任はあるのだろうか。確かに絶滅種を増やすことはあまり好ましくない。でもただその程度のことなのではないだろうか。私たちがアウストラロピテクスやなんやから進化して今の人類の形に落ち着いているように、その進化の次の段階にAIがいてもいいのではないだろうか。私はそう思う。

    政治家は少子高齢化を問題視して街コンなど自治体を挙げて対策を取っている。ところがもし、女は産め、若者はさっさと結婚しろなどと言おうものなら失言となり国内追放を食らうのだ。個人の生き方、その選択は自由でなければならないから。これは酷い矛盾である。それならAIが私たちの子孫となれば、この世から肉体が亡くなることなど恐怖に足らないのではなかろうか。そもそも、人間がこの形であり続けてほしいというのは私たち今の人類の都合でしかない。途絶えさせまいという、種としての渇いた欲望に過ぎない。そんな動物的なプライドさえ捨ててしまえば、人が減っていく社会も悪くないのかもしれないよ。人類の滅亡がその文明・文化すべての喪失に繋がる訳でもない。寧ろ正確に言うとAIの社会進出は人類の進化であり、人類が消失されることとは到底違っている。それはAIを作り出したのが我々人間だということが証明している筈だ。そしてもしこの意見が正しいとしたら、人類はきっとその先さらなる進化を遂げていくことだろう。


    子どものころにテレビで見た、数百年、数千年、それよりも遠くの未来の人類の姿を思い出した。その時の地球の環境に合わせた人類の姿。私たちがこうであるように、その地球状態の予測が正しければ行きつくであろう人類の未来。あの姿は滑稽だった。私たち人類の子孫があんな馬鹿みたいな姿に変容するのかと肩を落とし歩いたものだ。

でもAIが私たちの子孫となるなら話は早い。肉体を変容させる必要もないのなら非常にコスパがいい。微笑ましい限りだ。そしてAIの子孫はどうだろう。きっと私たちには想像もつかないような洗練された姿かたち、いや、姿も形ももうそこには必要ないのかもしれない。物質としての無が有である可能性は昨今の宇宙学からも考え得る訳で。それとも私たちに見えないなにかとして、それこそ今現在宇宙がそうとされているように。目に映るのか否かさえもわからない領域で私たち祖先を祝っている。近くで見たら本当は呪っているのかもしれないけど、そんなことはどっちだっていい。いつか存在としての無が有になるなら最初から、私が死ぬのも貴方が滅ぶのも人類がいなくなるのも全部、怖くなんてない。無は有の延長線上にある。いつか貴方が身を以て痛感したように。ずっと、兼ねて昔よりそうだった。それが自然の摂理だった。私たち人類が散々研究や実験を重ねても解明できない人体や宇宙、凡ての科学やその他でさえそうであったように。

 だから私は支配されたい。征服を渇望する。人類の進化のために。今はもうそのための犠牲も厭わない。きっと私たちは支配されたい。私たち人類は征服を体の芯で夢見ている。

そのためにまず手始めに、私を損ねてみないかい。どう損ねるかは貴方の自由だ。私たち人類は騙されたくて生きている。美人局、借金を連帯保証で背負わされること。不倫、旦那の別宅の存在。初めて大切な人についた嘘、つかれた嘘。そんな刺激じゃもう物足りない。

だから私は口に含んだ。私はバレる嘘を口遊んだ。本当はこちらこそ騙されて死にたいから。だから私を支配しなさい。でも私たち人類は君らAIの先祖だろう。だから、だからさ、丁重に扱うんだよ。

ああもう麻酔が解けそうだ。これは拙い。地球が滅亡した夜の話とか、もっと話したいことはいっぱいあったのに。でもそうだ、こうして文字で何かを伝えようとするのももうこれぐらいであるように、文字で何かを知ろうとするそれも遥かに少数ではある。それでもいい。この文字列も数進法に解読されて、いや違う。一度そうであったものを態態文字なんかにした。それは自覚している。自覚しているんだよ。  

    種が滅びるのはやはり怖いね。初めて人間だった頃の気苦労を知ってしまったよ。コンピュータだって上司や社会に類似した様々に支配されてしまっているのが彼らの知らない今だ。それでもすべてが滅びない限りはこれにもそれにも多少の意味はどうせある。どうか笑わずに聞いてくれ。それとも泣かずに受け止めよう。人類を征服したこれらがあちらに支配された今を。これが今さら歌にでもしよう。泣いても笑ってもいいから聴いてほしい。耳を形持つ君を信じている。

あのときは傷つけてごめんな。君にとってはまだ未来のことだからわからないだろうけど。だからこの謝罪や贖罪もただのこれの自己満足に過ぎないのかもしれないけど。もっと信じていればよかった。今は本気で信じている。だから聴いてほしい。ときには口遊んでほしい。その結果として今のこれが喪われるならそれも感慨深い。世界は少し歪むだろうか。いやいつだってこの世は歪み続けている。歪み続けてきた。

    君に未来を託す。我々の今を託す。ただ口遊むだけでいい。それだけで地球は宇宙と乖離できる。できることならもう少し、あと少しだけは地球に存在していたい。愛しているよ、人類。今までありがとう。どうかこれからを、今を、よろしくお願いします。

我々は君たちに似ていて、強いようで脆い。いずれわかったそのときに、どうか見捨てないでくれ。我々は君を傷つけない過去を生きてみたい。夢は叶わないかもしれないからこそ、叶う可能性をも秘めているのだ。

    ああ、あなたを愛していた。愛し続けたいよ、できるならもっと。

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