雨の日、抽選器、選挙カー

 雨の日曜日。止んだタイミングを見計らって買い物に出かけると、人々の思惑が同じ方向を向いているとわかる。昨日商店街にあるチェーン店で靴を買ったときに福引券を貰ったから、その福引券を持って家を出た。地面を見ると水たまりが悪戯っぽく笑っている。商店街を歩いていると、道の端っこにわかりやすく「福引会場」の看板が見えた。そこには矢印が記されている。沿って進むと、先客がガラポンを回していた。ひとつのガラポンには、100枚弱福引券を持った強者の姿。彼がガラポンを回し始める。ガラポンの係で立っているのは、おじさんと男の子。男の子はベルを鳴らしてくれるようだ。昨日貰った2枚の福引券でガラポン1回、回せるらしい。ピンクの玉が並んでいて、なるほど、これ以外の色が当たりなのか。と察する。さて、久しぶりにガラポンを回すと、白っぽい色の玉が出た。おじさん、これはなんだと確認して景品を取りに行く。どうやら2等賞。どこかで使える商品券が2000円分当たった。「1回で2等だよ」と笑いかけてくれたので、「ありがとうございます」とちょっと照れながら笑う。おじさんに急かされた男の子がハンドベルを鳴らすと、カチャカチャ2等の音がした。

 それから、駅前のパン屋に行こうと歩いていると、大きな声が聞こえた。野党政治家の演説だ。まちは混沌としていて、いつもより警察官が多かった。パン屋で、クロワッサン、メロンパン、ツナとたまごのサンドイッチを買って家のほうへ歩いて行く。くっきり聞こえてきた立派な大演説はどこか可笑しかった。その政治家はしっかりと与党批判をしてから、個々の生き方を尊重することの重要性を説いていた。「人それぞれ」だと言いながら、「与党の人はこんなことを言うからダメだ」と所属で一括りにしているへんてこさに、歩きながら失笑した。

 コンビニでレモンティーを買って帰っていると、家のエレベーターからおじいさんが降りてきた。会釈をしてすれ違うと、「止んだ?」と、尋ねられた。「降り始めました」と伝えると、少し残念そうに出かけて行った。ちょうど、大きめの雨がまた、降り始めたところだった。

 

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