目利き

 例えばアイシャドウの色とかで、私と君は分かり合えなくなる。だけどそう思った瞬間に、分かり合えたことなんてたった一度もなかったことに気がついて、何故だか誇らしくなった。分かり合えるはずもないことを知って、悔しくて可笑しくなった。強力粉がないからって薄力粉で代用する浅ましさと淡白さで、これからも隣を歩いてしまう。ただ物理的に見つめ合ってしまう。それくらいの時間を、愛らしいと思ってしまう。

 君が人間をやめたいと言った日に私は人間になりたいと思った。君の分までなってやろうじゃないかと思った。360°私と君は人間のままで、無意味な会話のなかで、そんなことを思った。

 アイブロウの色を濃くしたくらいで君に嫌われてしまえるならこんな世界も悪くないね。下らなくても未来は未来で逆行なんてしない訳だから。

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