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3.基礎年金は最低保障 厚生年金は稼ぎ次第

ご訪問いただきありがとうございます。

社労士試験の学習をしているあなたは、「年金の2科目は、他と比較して格別に難しく、基礎からしっかり説明してくれるテキストがあれば・・」と感じたことはありませんか。

このnoteの目的は、社労士を目指している方が、年金2科目のテキストに書いてあることを理解できるようにすることです。
社労士試験最大のヤマ場であろう年金制度の基本となる考え方や、なぜそのよう仕組みなのかを主眼に解説します。

noteは全部で9つあります。
全部読んだあともう一度、受験テキストを読んでみてください。
難解だった年金がすっきり頭に入るようになります。
今回のノートは第3回目です。

前回は、保険料はどのように納めていれば、年金がもらえる資格が得られるのか、その条件について説明しました。
第1・2・3号いずれの被保険者も、国民年金の保険料の納付状況により、基礎年金・厚生年金の支給される・されないが決定される、という内容でした。

今回は、年金の金額について解説します。


(1)基礎(国民)年金 年金額の考え方

1)国民年金の保険料納付と年金額の関係
国民年金保険の保険料納付方法は以下のとおりです。

第1号被保険者:所得に関係なく月額17,000円程度を自分で納付する

第2号被保険者:所得に応じて、給与・賞与から厚生年金保険料として徴収される

第3号被保険者:第2号被保険者の厚生年金保険料納付が第3号被保険者の国民年金保険料納付と見なされる

支給される年金額については、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金とも満額の年金額は同じです。
その人の所得に関係なく、年額で780,900円×改定率です。

改定率とは、簡単にいうと物価によって変動させる係数です。

基礎年金は、広く国民の最低限の生活を保障する、保険の主契約、2階建て年金の1階部分です。
したがって、「780,900円×改定率という金額が、この国で最低限の生活するための必要額である」という考え方のもと、日本の年金は制度設計がされています。


2)老齢基礎年金
老齢基礎年金の金額は、
780,900円×改定率×国民年金保険料納付月数/480か月です。
480か月とは、20歳以上60歳未満の40年間の月数合計です。

老齢基礎年金の金額は、国民年金保険料を納付した月数に比例してます。
被保険者期間である20歳以上60歳未満の480か月全ての月の保険料を全額納付すると、年金額が満額となります。
保険料免除期間や合算対象期間、滞納期間があると金額はその月数分の割合で減額されます。

第2号被保険者として厚生年金保険料を支払った月や第3号被保険者として届け出されている月は、国民年金保険料を全額納付した月となります。


3)障害基礎年金
障害基礎年金は、満額の780,900円×改定率の定額にて支給されます。

障害基礎年金は、生命保険に似た制度です。

一般の生命保険は、加入している期間であれば、いつ障害事故が起こっても、多額の保険金が支払われます。

同様に障害基礎年金は、保険料を納付している被保険者の期間に障害になるという事故が発生すると、支給要件を満たしていれば、生涯に渡り年金が、減額されることなく支給されます。

4)遺族基礎年金
遺族基礎年金も、満額の780,900円×改定率の定額にて支給されます。

障害基礎年金と全く同じように、国民年金に加入している被保険者の期間中であれば、または国民年金保険料を25年以上納付した人であれば、いつ死亡事故が起こっても、要件を満たしていれば、遺族に年金が支給されます。


(2)厚生年金保険 年金額の考え方

1)厚生年金保険の保険料納付と年金額
厚生年金保険は、民間企業に勤めるサラリーマンが加入する年金です。
その保険料の払い方は以下のとおりです。

【月給分】
・基本給・残業代・通勤費などを含めた給与月額の平均額を算出する。
・その算出された金額を、32段階にランク分けされた標準報酬月額の該当する金額に当てはめる。
・標準報酬月額×18.3%を会社と本人が半分ずつ負担する。
(給与から標準報酬月額の9.15%を厚生年金保険料として控除し、同額を会社が加算したうえで、会社が国へ納付する)

【賞与分】
・賞与実額×18.3%を会社と本人が半分ずつ負担する。
 (同様)

厚生年金保険料の金額はその人の収入に比例します。
たくさん稼ぐ人は、たくさん保険料を納めます。
厚生年金保険料を長く、多く納めるほど、年金額も増える仕組みです。
2階建て年金の2階部分に該当する厚生年金保険は、基礎年金にて支給される年金に加えて、現役時代に自分の判断と努力で、補償を厚くする制度です。

2)老齢厚生年金

老齢厚生年金の支給額計算は以下のとおりです。

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単純な例で説明します。

ここに平成15年4月に20歳で就職した人がいます。
60歳までの40年間480か月勤めました。
平均標準報酬月額は45万円でした。
(40年間の月収の平均値は45万円でした。)

老齢厚生年金額は
A:450,000円 × 給付乗率5.481/1000 × B:480か月 = 1,183,896円


この方の場合、国民年金保険料も、480か月の納付実績があると見なされますので、老齢基礎年金も満額もらえます。

老齢基礎年金 + 老齢厚生年金 の合計年金額は
780,900円  + 1,183,896円 = 1,964,796円 
です。
(老齢基礎年金の改定率を1.0とした場合)

さて、この老齢厚生年金の計算式を見てわかるとおり、
A:納付した厚生年金保険料の金額が高いほど(収入が高いほど)
B:納付した厚生年金保険料の期間が長いほど
Ⅽ:老齢厚生年金額は高くなります。


また、老齢厚生年金は、国民年金の被保険者として10年以上国民年金保険料を納付していれば、たとえ厚生年金保険の被保険者期間が1か月しかなくても、1か月分の厚生年金保険料分は支給されます。


・ある人が平成15年4月に20歳で就職して厚生年金保険に加入した
・そのときの標準報酬月額は、200千円だった。
・ところが、1か月で会社を辞めて、その後は第一号被保険者として
 国民年金保険料を、その後9年11か月納めた。

この場合の老齢基礎年金・老齢厚生年金の金額は
老齢基礎年金額:
780,900円×改定率×120か月/480か月=195,225円
*改定率:1.00
120か月の内訳
第2号被保険者(厚生年金保険加入)の月数:1か月
第1号被保険者の月数:119か月(9年11か月)

老齢厚生年金額:
200,000円×5.481/1000×1か月=1,097円
(1円未満の端数は、少数第1位で四捨五入)

老齢基礎年金+老齢厚生年金の合計額:
195,225円+1,097円=196,441円

このような基本的な老齢基礎年金・老齢厚生年金の計算方法はおさえてください。

2)障害厚生年金

障害厚生年金の金額は以下のとおりです。

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障害厚生年金の金額は、老齢厚生年金の金額計算方法を転用しています。
納付する保険料の額及び納付した期間が、年金額に比例します。
ただし、保険料納付の月数については、老齢厚生年金とは考え方が少し異なります。
老齢厚生年金の場合、実際に保険料を納付した月数を年金額の計算に用います。
しかし、障害基礎年金はその月数が300か月未満の場合、300か月として計算します。

理由は、障害厚生年金は保険だからです。
万が一の障害事故に対して、これまで納付した保険料の月数に関係なく、一定額の障害厚生年金と保険金が支給される仕組みです。

ただし、保険料を300か月以上支払った人には、老齢厚生年金と同様に、実際に保険料を納付した月数をもとに、年金額の計算をします。
300か月(25年)の保険料納付実績があれば、それ以降の障害厚生年金の金額は、保険料納付の月数に比例して、高くなります。

これは、2017年(平成29年)まで、老齢基礎年金・老齢厚生年金の支給要件を満たすためには、25年(300か月)の国民保険料納付実績が必要だったことと同じ考え方がベースにあります。
25年間保険料を納めれば、年金受給に関して一定の権利を得る、という考え方です。
この25年間の納付実績が必要という基準は、他の支給ルールの際にも用いられます。

3)遺族厚生年金

遺族厚生年金の金額計算も、障害厚生年金とほぼ同様の考え方です。

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遺族厚生年金の金額は老齢厚生年金の金額の3/4です。
これは以下のような考え方がベースにあります。

①老齢厚生年金は、第2号被保険者と第3号被保険者が2人共同で保険料を納付した夫婦の共有財産である。

②遺族厚生年金は、遺族となった配偶者1人分だけの保障で足りるので、老齢厚生年金の3/4の金額で十分である。


また、遺族厚生年金にも、短期要件・長期要件というルールがあります。

短期要件:国民年金保険料の納付実績が25年未満(300か月未満)
長期要件:国民年金保険料の納付実績が25年以上(300か月以上)

短期要件とは簡単にいうと、若い現役世代の方の死亡です。
この場合、300か月の最低保障があります。
生命保険の死亡保障と同様に、死亡すると、保険加入の歳月の長さに関係なく、保険料納付300か月で計算をした多額の年金が遺族に支給されます。

長期要件を簡単にいうと、長いこと保険料を納付したおおむね50歳以降の方の死亡です。
国民年金保険料を25年以上納付した方は、死亡時厚生年金保険に加入していなくても、過去に支払った厚生年金保険料のか月に基づき、遺族厚生年金が支給されます。

なお、この支給は老齢厚生年金の受給権者も含まれます。
この場合、支給されていた老齢厚生年金の3/4の額が、遺族に支給されます。

遺族厚生年金は、若い時の死亡は生命保険、老齢になってからの死亡は遺産相続とよく似た制度となっています。

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(3)厚生年保険 生年月日による給付乗率の読み替えについて  


老齢厚生年金と長期要件に該当する遺族厚生年金の金額の計算には、「生年月日による給付乗率の読み替え」という仕組みがあります。
一方、障害厚生年金と短期要件に該当する遺族厚生年金には「読み替え」の制度はありません。

給付乗率読み替えの制度の概要は、下表のとおりです。

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「読み替え」の制度は、昭和21年4月1日以前に生まれた方の、老齢厚生年金の金額を高くするためのです。

では、なぜそのような制度が存在するのでしょうか。

旧厚生年金制度による老齢年金額は、新しい老齢厚生年金額よりも高く設定されていました。

昭和21年4月1日以前に生まれた方は、昭和61年4月2日新厚生年金保険法が施行されたときは、40歳を超えていました。
新法を60歳以下の人にそのまま適用すると、60歳に近い人ほど急に年金額が下がることになります。

そのような方々を救済するため、老齢厚生年金の計算には生年月日による給付乗率の読み替えの制度があります。
遺族厚生年金の長期要件の場合、実質配偶者に対する老齢厚生年金の相続ですから、同様にその年金額を保護するため、読み替えが行われます。

一方、障害厚生年金・遺族厚生年金の短期要件は、万が一の事故に備えた保険です。
主に現役世代と対象にした制度なので、読み替えによる保護は必要はないという判断です。


(4)最後にまとめ

1)基礎年金は780,900円が満額
日本の年金制度は、780,900円×改定率がこの国で最低限の生活をするために必要という認識のもと成り立っています。
老齢基礎年金は、国民年金保険料を納付した月がすくないと、その分減額されます。
障害基礎年金、遺族基礎年金は減額されません。満額支給されます。

2)厚生年金の金額は、保険料を納付した月数を納付した額に比例する
サラリーマンは、給与や賞与から厚生年金保険料が控除されます。
その金額は、その人の収入に比例します。

老齢厚生年金は、厚生年金保険料を納付した月数と金額に比例します。
障害厚生年金・遺族厚生年金も同様ですが、保険料納付月数が300か月未満の場合、納付月数300か月として金額を計算します。

3)厚生年金には生年月日による給付乗率の読み替えがある
現在の厚生年金保険法が施行された昭和61年当時、40歳以上だった方の受け取る年金額が急激に少なくならないようにするための救済措置です。

今回のnote 

社労士試験 年金がわからない人へ 3
年金は2階建ての保険
3 基礎年金は最低保障 厚生年金は稼ぎ次第
    は
これで終了です。

次回のnoteは

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