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姉の一人暮らし。

姉が東京で、初めての一人暮らしをスタートさせた。

あちらこちらに住む私と違い、ずっと地元で暮らす姉。昔から結婚願望もない人なので、きっと姉は一生実家から出ないであろうとたかを括っていた。

だから、「東京へ転勤だ」と聞いたとき、本人よりも私が慌てふためいた。生まれてこの方、実家しか暮らしたことのない姉が、一人暮らしできるのだろうか?と過度に心配した。

最初のうちは気丈に振る舞っていた姉も、初めての家探し、契約、家具選び、引っ越し、片付け、、、とやることだらけの状況に気落ちし、手伝いに参上した私を見ると涙目に。

多分、生まれて初めて「あんたがいてよかった」と言われた。

怒涛の勢いで片付けを行い、なんとか明日から住める状態には落ちついた。普段ほとんど連絡をとらない姉妹だけど、こんな時には役に立つよね。

「じゃあね」と言って姉の家を後にし、最寄駅まで歩きながら、「これからこの道を通って仕事に行くのかな」「こっちのスーパーで買い物するんだろうな」とか、姉のこの先の日々を想像した。

ふと、なんだか、涙がでそうになった。

きっと私が初めての一人暮らしを始めたとき、母はこんな気持ちだったのではと思った。本人も寂しいけれど、送り出す方はもっと寂しい。案の定、母に連絡すると、寂しくて泣いているとのこと。

これまで長きにわたって子どもに尽くしてきたことの労いの言葉を送る。母に代わって、姉を支える。そのことがせめてもの、恩送り。

世間的な恩返しができなくても、これが年齢を重ねたこの位置の自分の役割であり、喜んで承ることなんだなと。

そんなこんなで感傷に浸りながら、京都への帰路に着く。

せっかく拠点ができたので、姉の顔を見がてら、東京にちょくちょく足を運ぼうかな。

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