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好きとか、嫌いとか、東京生活とか / 東京生活日記1


東京にきて、3ヶ月が経った。

3という数字にはちょっと意味があるのか、
三日坊主とか、石の上にも三年とか、先人の教訓は3を皮切りにすることが多いようだし、それに習って、今日からたまに東京生活日記を書いてみようと思う。12月13日。上京約、3か月目。


朝早く起きて色々しようと思っていたのに、目を覚ましたのが11:30でがっくりとし、追い討ちをかけるように窓の外は曇りだったので、結局夢見心地のままお布団で過ごした。気づいたら14:30になっていた。

東京にきてからは、一日中やっているカフェで働いているので、夜遅くまで働いていることが多く、生活習慣は結構こんな感じだ。
14:00〜23:00のシフトが結構体にしっくりきて、私ってやっぱり夜型だったんだ、と再確認したりした。

とりあえずお腹が空いたので昨日の仕事帰りにセイユーで買ったプリンの3/4個目を食べた。
2/4は昨晩ルームメイトと一緒に食べた。

東京では、大きいおうちに、高校時代から親友のドラマーと、ドラマーの親戚の映画監督志望の子と住んでいる。経緯は色々あるのだが、格安で住まわせてもらっているし、キッチンは広いし、リビングのテレビは大きいし、各々の部屋もちゃんとある。最近は宅録もできる、楽器常備の音楽部屋を作ったりして、環境はサイコーだ。結構ドラマみたいなことが普通に起こっている。音楽部屋づくりは大変だったけど、みんなで夜通し作業をして、遅れてきた青春のような感じが楽しかった。プチ事件は色々あれど、楽しく生活できている。最近はルームメイトの勧めで再チャレンジしたジョジョ(アニメ)に、あまりにもハマっている。


おうちは好きだし、住んでいる街は、小さい頃に小説を読んだとき物語で想像した街と驚くほど似ている。本当にいい街で、理想の街。かわいいお肉屋さんも、格安の八百屋も、一本50円のお団子屋さんまである。
たまにここにくることが決められていたんじゃないかと思うほど、なぜか懐かしくて、目を奪われるほど好きだと思う瞬間や景色がある。だから東京に来てからは、家から、住んでいる街からでることが少し減った。

けど今日は珍しくすぐにどこかへ行きたくなって、目的もなく電車に乗ろうと思った。

しかし鏡に映る自分を見たら、ついついお化粧に手が伸びてしまった。久しぶりにオレンジのアイシャドウを塗って、2年目の可愛い古着のニットまで着てしまった。去年もお気に入りだったやつ。

おしゃれは好きだけど、本当は見た目なんて気にせず思いのまま家を飛び出したかった。そんな人を気にしない街が東京なのに、私ってやっぱり、理性的なんだなぁと、ちょっとがっかりした。



道中で読む本を選んでいたら、16:30をお知らせする音楽が窓越しに聴こえた。
「カラス、なぜ泣くの?」のあとから続く歌詞を正確に言える人が少ない音楽が、この町では毎日16:30に鳴る。
あっというまに夜へのカウントダウンが始まる、12月。


秋と冬はあんまり好きじゃない。
寒いし、夜が長い。夜は大好きだけど、もしかして、短いからいいんじゃないかとすら思う。

冬の夜の残念なところは、貴重な夜が全然貴重じゃなくなってしまうところ。
現に夏の夜は大好きだ。ずっとこの時間が続けばいいのに、と思う瞬間が幾度もある。
真夏の夜、19時頃、たったの30分程度、少しずつ夜になっていくあの水色っぽい時間が365日24時間の中で1番好きだ。お祭りの前のような気持ちになる。そして夜が来る。そしてあっというまに明ける。あの美しい時間が好きだ。なんだか人生で経験するようなことと同じだな、と思う。

もう早々に真っ暗になってしまった17時過ぎ、定期圏内の高田馬場駅で降り、行ってみたかった「ロマン」という喫茶店に行った。


看板メニューのナポリタンを頼んだ。ナポリタンは大好きだ。仙台の「タピオラ」という喫茶店のナポリタンが世界で一番好きだけど、ここもすごく美味しかった。
ちょっと宇宙船みたいな、電車のような形をしたタイムマシンがあったら、こんな感じなんだろうな。みたいな。そんな窓がある素敵な喫茶店。

喫茶店が好きだ。

仙台にいた頃から、お気に入りの店を見つけるべく、友達とも、ひとりでも、たくさん練り歩いた。仙台の喫茶店は、大体コンプリートしたと思うくらいには行った。
中でも、時間がゆっくり流れているような喫茶店が好きだ。綺麗すぎなくて、たくさんの人がこれまで愛してきたであろう温もりがあって、明るすぎない照明、BGMは本が読みやすいくらいの人の声、もしくはレコードが流れていると尚、好き。
仙台では、3つに絞るとしたら、コーナーハウス、タピオラ、珈巣多夢かな。特に落ち着く、大好きな喫茶店。


色んな場所に行くと、自分の好きと、苦手を知ることができる。自分を知ることと同じ。それは何か芸術や食事を摂取することも、人間と関わることも、おんなじような気がする。
だから人生を豊かにするためには、経験はやっぱり大事なのだろうと思う。

そして、この経験を経て見つけた、自分の"好き"な空間にいると、自分を取り戻せる感覚がする。私は、社会の中で生きていくことも、自分を保つことも、元々はそんなに得意じゃないから、自分を取り戻せる場所を見つけることが大切だと、24年間のまだ乏しい経験からだが、学んだ。

東京ではまだそんな場所を見つけられていない。だから、どこかちょっとだけ不安定で、生きづらさも感じる、3ヶ月でもあった。



ロマンは19時閉店だったけど、積読からやっと順番の回ってきた東直子さんの「とりつくしま」もまだ半分くらいしか読めてないし、まだ少し家に帰りたくなかったので、高田馬場駅から東西線に乗って、中野まで行った。



中野駅を降りたら、東京によくある昔ながらの商店街がすぐ見えた。商店街から続く路地裏は何本もあるのに、曲がれど覗けど、永遠に続く飲み屋街。ステンドグラスになった街頭も綺麗だった。商店街の坂を登り、21:30までやっている。「マロ」を目指した。

商店街道中で、文房具屋さんに入った。時間があれば手紙を書きたいと思い持ってきたレターセットたちだけをカバンに入れ、肝心なボールペンを忘れたからだ。正直私って、いつもそうだ。お弁当を作ったのに、お箸やフォークを忘れたりする。

ペン類は中学生の頃から0.3mm〜0.4mmが好きだ。好きな色は赤とピンクだけど、今年の冬はなぜか青に惹かれるので、水色のパッケージの0.3mmのボールペンを買った。

現金のみの狭いレジで、店員のおばあさんが
「きれいな色ねえ」と言った。


「にしても、今日は冷えるねえ、お風呂がつらいわ」と二言目で聞こえた後ろでは、商店街のクリスマスソングが鳴った。

そのあとはパン屋さんに入った。
カットされているフランスパンが160円だったので、ついつい買ってしまった。店内のほとんどは売り切れ。大きくて丸い窓がかわいらしいパン屋さんだった。


「マロ」に着いた。

ピンク色の固定電話と、アナログのテレビ。
左斜め前には、一口一口、ものすごく美味しそうに煙草を吸うおばさんがいて、すごくよかった。



メニューは悩みつつ、ミックスサンドのアイスコーヒーセットに。タピオラでもナポリタンの次に好きなメニューはヤサイサンドだった。喫茶店特有の、パンが焼かれていなくて耳が綺麗に切り取られた一口サイズの白いサンドイッチが、なぜかすごく好きだ。

マロのミックスサンドも、美味しくてすぐに食べ終わってしまったし、珈琲もすごく美味しかった。ガムシロップが茶色いのも最高。珈琲は途中までブラックで飲んで最後は甘くするのが好き。そして、お砂糖が茶色いともっと好き。でも、アイスの珈琲のガムシロップまで茶色にしてくれる喫茶店は初めてだった。

結局、手紙も書かなかったし、読みかけのとりつくしまも手につけず、もう一冊持ってきた、既に数年前に読み終えている吉本ばななさんの名作「キッチン」を読んだ。

東京にきて、実家を離れてから、やたらキッチンと料理が好きだ。
人のキッチンを見るのも好きで、キッチン特集の雑誌や台所の写真がたくさん載ったインテリアの本も買ってしまう。
それでふとまた読みたくなった「キッチン」は、前に読んだ時よりも素晴らしく輝いて見える文章だった。
あれ、こんな始まりだったっけ?という調子で。

一度読んでいるのに、言葉が新鮮にきらきらとしていて、一瞬にして世界が色づく感じがした。すごくいい時間だった。本を読んでいるときや音楽を聴いているときのこの感覚が、大好き。


もうあと30分で閉店という時に、隣の席にカップルが座った。
一杯350円の格安の珈琲を2人とも頼んだ。

お会計をしようと席でお財布をガサゴソとしていると、隣から

「クリスマスツリー、飾らなきゃな」
と、おそらく入口に飾られたクリスマスツリーを見て思い出したであろう彼女のつぶやきが聞こえた。

「あー、そうだね、帰ったら出そっか」
「いや、掃除してからね」
「今日、ちょっとしたよ」

と、ふたりの会話は続く。

ふたりはもう去年のクリスマスから一緒に暮らしているのかなあ、なんて想像してなんだか幸せな気持ちになった。

お店を後にし、駅方面へ、商店街を下った。東京ではながらスマホは危ないので(本当はどこでもダメ)帰路の電車で、これを書いている。


帰ってきたら22:30。これから昨日しそびれた洗い物をして、ちょっと音楽部屋で音楽でもして、カフェインレスの珈琲でも入れて寝ようかなあ。


こっちでは元々いたお友達がいる以外、コミニュティがまだできてないし、人混みが本当のところかなり苦手なので、家に篭もりがちだったけど、こうやって街に出てみたら、東京っていい街だなぁと、やっとちゃんと思い始める、3か月目でした。
また、東京さんぽしようっと。

あまりにもダラダラと書いた文章。
でも、日記ってそんなもんだよね。
読んでくれた方、どうもありがとう。


ps.
冬は苦手だけど、クリスマスだけは大好き。音楽も、映画も、きらきらした街並みも、クリスマス特有の、みんなが誰かしらや自分にプレゼントをあげようとそわそわした幸せな空気感も。キュンとするメロディが多いクリスマスソングは、毎年新しいお気に入りができる。毎年観てるピーナッツのクリスマスDVDは実家から持ってきたけど、1960年台のクリスマスキャロルは家族揃って大好きなので置いてきた。サブスクにはないのでちょっと寂しい。今年は社会人になって初めて、クリスマスどちらも休みを取った。土日なのに、迷惑な社員!まあアルバイトだしいいよね!

仕事より生活優先な人生がなんやかんや、ちゃんと始められている。


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