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初めて髪を染めた時のこと


私が通っていた高校は校則が厳しい学校だった。毎月ある服装検査の時には、前髪の長さやスカートの長さなどいかにごまかすかが女子の腕の見せ所だった。

おしゃれに興味のある年頃の私達は、そんな中でもこっそりと学校でのおしゃれを楽しんでいた。例えば、補正屋さんに制服を持って行き、ブレザーの丈や脇を詰めてもらったり、スカートの丈を出してもらったり。髪の毛には部分パーマを掛けてみたり。

初めて髪を染めたのは、高校3年の秋の事だ。

高校3年になった頃、うちの近くに美容院ができた。試しに行ってみると、オーナー夫婦と見習いの男の子の3人でやっているこじんまりした所だった。オーナー夫婦は温かい人柄で、人見知りの私でも打ち解けて楽しくお話ができた。もちろん、技術もバッチリだ。

見習いの男の子は、1学年下の子で高校には行かずに働いているとの事だった。同じ中学の子で、どうやら中学の時はちょっとやんちゃな子だったようだ。でも、そんな感じはなく、可愛くて楽しい子だった。

それからはショートだった事もあり、毎月のようにその美容院へ行った。その頃流行り出したグラデーションボブにいち早くカットしてもらったりもした。美容院の方と施術中におしゃべりするのもとても楽しかった。なかでも、見習いの男の子とは年も近いのでよく話をした。

秋になり、9月中には無事に就職の内定をもらい、卒業後の進路が決まった。

そんな頃美容院に行った時の事だ。鏡の所にポップが貼ってある。そこには見慣れない単語「ヘアマニキュア」と書いてあった。オーナーに聞いてみると、芯から染めるんじゃなくて、爪にマニキュアを塗るような感じの施術で、ほんのり染まってツヤが出るとの事だった。

自称おしゃれ女子の私としては、興味津々でやってみたい!と思った。だけど、うちの高校は校則が厳しい。生徒指導の先生に見つからないか、そこが心配だった。
当時、髪を染めるといえば不良な人のイメージがあった。それに愛読書であった別冊マーガレットに載っていたホットロードでは、ヒロインの和希はオキシドールで脱色していた。
やっぱり、髪を染めるのは不良少女のイメージが大きくて相当悩んだ。

だけど、だけど、やっぱりやってみたい。
それに、これはヘアマニキュアだ。段々色は落ちていくのだ。大丈夫、見つかったりなんかしない。
なぜか、妙に確信めいた自信さえ出てきた。
好奇心の方が勝った私は、次の美容院でヘアマニキュアをしてもらう事にした。そうと決まれば、ヘアマニキュア代のお金を確保しなくては。

うちの高校はバイトができなかったため、月のお小遣いを少し多めに貰っていた。そこから毎月取り分けて貯金していた。ヘアカット代は親から出してもらうけど、パーマを掛けたりする時はそこからお金を出していた。

いよいよ美容院に行く日がきた。学校の帰りに美容院に行ったけど、なぜかとても緊張していた。

「いらっしゃい。今日はどうする?」
「あ、あの。カットと・・・ヘアマニキュアして下さい・・・」
「カットとマニキュアね。シャンプー台へどうぞ」

シャンプー台で髪を濡らしてもらって、そのあとカットをした。いつもの、グラデーションボブ。そして、いよいよヘアマニキュアをしてもらう事になった。色は、オーナーと相談してイエローにした。ピンクや赤だと学校にバレるかもしれないけど、イエローやオレンジなら大丈夫だろうとの事だった。

仕上がった。カットは相変わらずいい感じに整っている。ヘアマニキュアの方は、ぱっと見は分からない。だけど、ツヤツヤしている。光にかざすと、色が入っているのが分かる。これならバレなさそうだ。

家に帰っても、親からも何も言われない。よし、大丈夫大丈夫。

学校に行って、友達に報告した。友達にもなかなか好評だ。お日様の日にかざすとほんのり黄色に染まっていて、とてもキレイだ。太くて堅い私の髪もツヤツヤで、手触りもいい。

生徒指導の先生の授業の時や、廊下ですれ違う時に少しドキドキしたけど、バレる事はなかった。それに、私は服装違反をしれっとしているけど、見るからにヤンキー系ではないので、そんなに先生に目を付けられる事も無い。顔も地味だし、成績もそこそこいいし、真面目っぽく見える生徒だったので、多少服装違反をしていてもバレにくいのだ。

味を占めた私は、それからもヘアマニキュアをした。色もオレンジに変えた。オレンジの方が、より染めた感が出るからだ。ふと気付けば、周りでもヘアマニキュアをしている子が増えてきた。まるで、自分が流行を作った様な、そんな自意識過剰でバカな事を考えた高校3年の冬だった。


この話の後日談で見習いの男の子が登場する番外編へ続く( ̄▽ ̄)



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