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「夢中」


夢の中にいる、と書いて夢中。私はこの2週間、出演させていただいていた舞台「昭和歌謡コメディ」に、夢中でした。

昭和歌謡コメディの座組の皆様と一緒にいると、こんな世界がこの世にはあったんだ、と思います。
やさしくて、あたたかくて、お客様に楽しんで頂くにはどうすればよいか、どうしたら芝居が伝わるのか、真剣に考えて、たくさんのアイディアが出てきます。私はそれに圧倒されるばかりですが、よりよい要素のひとつになる為に、全力でぶつかりにいきます。

今回は、いつもとは違う、私が今まで挑戦したことのない役を頂きました。

舞台は喫茶チェリー。7年前に行方不明となった息子の失踪宣告を、懸賞金1000万円をかけてすると決意をしたマスター。
その懸賞金1000万円をねらった人々がが登場し、物語は展開していきます。

私は喫茶チェリーのアルバイト役、みゆを演じさせて頂きました。
みゆは、生意気で、マスターの気持ちに気づいていません。息子がいなくなってさびしいけれど、それを隠していつもおちゃらけていることに、です。
なので、マスターの友達の弁護士、石尾さんにも強く当たります。
しかし、息子探しをしたい、というマスターに協力したいという思いで感情を大きく表します。

そこに、マスターの息子そっくりな男、はやとが現れます。
最初は本物なのか、偽物なのか、みんながとまどいますが、だんだんと父と息子として馴染んでいく二人を見て、みゆは温かい気持ちを初めて現します。
根は優しいキャラクターなのです。
この、みゆの、隠れた本性を表現するのに苦戦しました。
ただの「いい人」にならないように、照れや、心がくすぐったくなるような気持ちを表すには、と研究しました。
そして石尾さんとのシーンは何度も稽古を重ねました。1度上手くいっても、少し心の動きがずれると、皆様に通じなくなってしまう。そして勢いも必要で、重なるようなセリフだったので、舞台袖や本番前は目を合わせて一緒に練習しました。

そして今回、改めて実感したのは、セリフが無いシーンのフリーの芝居の重要さです。
そこで、私たちの反応がはっきりしていれば、よりお客様に伝わりやすくなります。驚いているのか、喜んでいるのか、楽しいのか、悲しいのか。
板の上に立ったら、一時も気を抜けません。
まばたき、呼吸、ひとつのうごき、そのすべてが物語にかかわってくるのです。

本番前の、ピリッとした空気が、私はとても好きです。あの独特の、身が引き締まるような空気。鏡の前で丁寧にメイクをして、歯を磨いて、衣装を着て、靴紐をしっかりと結びます。キャスト全員で円陣を組み、座長の言葉一つでみんながひとつになります。真っ暗な舞台袖で、セリフを小さい声で発すると、自然と皆さんが次のセリフを返してくださり、なんとも言えない昂りがあります。

音楽がかかり、呼吸をして、ステージに出る。
照明の熱と、皆様の瞳の潤い。
ああずっとここにいれたらなと、私は思うのです。
最後のシーンは、出演していなかったので、舞台袖で見ていました。舞い散る桜は美しく、いなくなってしまった、マスターの息子の姿だったのだろうと思いました。

2部は歌謡ショー。

お芝居の衣装から着替え、大きなリボンをつけて、イヤリングを飾り、幕が開くのを待ちます。

愉快な音楽が流れ、身体いっぱいで踊ります。キャストと、お客さまと、目を合わせて、リズムに合わせて弾みます。

ソロのステージは、「とにかく楽しく」!
お客さまからの紙テープをつかむと、心も通います。
出番直前、舞台袖で言われた監督からの言葉。
「世界一、可愛くなるといいよ」
その言葉のもと、目いっぱい表現しました。音楽はやはり素晴らしく、人と人とも、自分とも、繋がれるものだと思いました。

表現で、エンターテインメントで、お客様を笑顔にする。 そんな幼い頃の夢を、今、叶えている。

私は今、夢の途中にいます。

この選択をして、なにがあっても、夢を信じて進んできて、本当に良かったと思いました。
夢の途中で、こんなに大好きな空間、そして皆様に出会うことが出来ました。

座長はいつも私たちを前向きに引っ張ってくださります。まるで魔法の箱のように、次々とアイディアが飛び出します。現場がピリつきそうになっても、座長の一言でみんなが和み、またさらに、座長について行きたいと思います。

まるみさんは、お芝居がとても細やかで、小さい違和感も綺麗に発見し、改善し、導いてくださります。誰にでも分け隔てなく、明るくキラキラした瞳でみんなに幸せを感じさせてくれます。そしていつも笑顔がとっても可愛い♡

由美子さんはそこにいてくださるだけで、ふわっと優しい気持ちになって、やわらかい笑顔で接してくださいます。ファンの方もとても熱心で、その気持ちがすごくわかります。ずっとずっと目が離せない存在です。

はやとさんはいつも全力で物事に挑まれている姿がとても素敵だと思います。みんなのお兄さんのような存在で、伸びやかな声で歌い上げる歌は圧巻です。楽器も演奏されている姿は、音楽の神に愛されているんだなと感じます。

石尾さんは、天才です!普通のセリフも、石尾さんの工夫ひとつで特別になります。石尾さんがいなければ昭和歌謡コメディは成り立たないと言っても過言ではありません。準備から手伝いまで、いつも率先してやられていて、とても頼りになる存在です。

三井さん、鋼のハートの持ち主です。何があってもへこたれず、笑顔を絶やさず、接してくださいます。お客様からも支持されている理由が分かります。優しくて、いい人代表のような、とても温かい存在です。

カズヨさん!今回たくさんお話して頂きました。身体いっぱいで表現するダンスはとても美しく、全力の芝居も目が離せませんでした。気配り上手で褒め上手なので、カズヨさんと一緒にいるとやさしい気持ちになります。

わっちゃん!いつも明るくて笑顔で元気で、優しくてよく動く、本当にとても素敵な人です。わっちゃんに出会えて本当によかった。いつもパワーをもらっていました。頭の回転が早く、小さなことも見逃さない。どんなこともエンターテインメントに変える。ピンチもわっちゃんにかかれば大チャンスになります。私が最も尊敬する方の1人です。

黒さん!とても優しくて面白いです。真摯にお芝居や歌に取り組まれていて、とても謙虚な方。最後の踊りの立ち位置が近かったこともあり、私のファンの方にも快く接してくださいました。いっぱい遊んでくれてありがとうございました笑

監督の壱位さん。これほどまでに熱い方を見たことがありません。お芝居に対して常に全力で、どのキャラクターも壱位さんの一声で色づき、深まり、心が通い始めます。いつも学びや発見がとても多かったです。本番中は、ずっと出演者の喉や身体を気にかけ、いたわってくださっていました。そして、監督という立場でありながら裏方の仕事もかなりされていて、とても偉大な存在であると感じました。


舞台は千秋楽をむかえましたが、皆様と、私たちの日々はそれぞれ続いていきます。

みんなそれぞれなにか、夢や目標、やりたいこと、それから抱えていることがあると思います。
その中で、いつかまた交わって、皆様と同じ空間で、同じ時間を過ごせることを、心から楽しみにしています。


本当に本当にありがとうございました!!!

愛をこめて❤️


小松みゆ



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