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世界共通言語ではない、「イギリス語」としての英語に出会う

「私の知っている英語と違う…」

昨年秋にイギリスに来て、現地の人と話す中で「私の知っている英語と違う…」と思う瞬間が何度もあった。簡単な、中学英語で習った挨拶ですら、自分の知っている使い方とちがって衝撃を受けた。

私は大学生のとき、フィンランドで1年間交換留学をした。現在の自分の英語力のほとんどは、その時期に築かれたといっても過言ではない。私の話す英語は、「世界共通言語」としての英語、あるいは「最大公約数的」な英語ともいえる。世界共通言語としての英語を話すとき、1番の目的は、さまざまな国から集まった留学生同士がお互いを理解できることだ。いつも、みんなが知っている簡単な単語や言い回しを使うことを心がけていたので、ネイティブにとっては必ずしも自然な英語ではなかったかもしれない。

イギリスに来て、イギリスの人々が母語として話す「イギリス語」としての英語にふれて、多くの新しい発見があった。その中から、とくに印象的なものを3つご紹介したいと思う。

一言目には、“Are you OK?(あなた、大丈夫?)”

朝、会社で会った人に、カフェの店員さんに、目が合うと一言目に言われる“Are you OK?”や“Are you all right?”。

自分のこれまでの認識では、体調の悪い人や明らかに何かがAll rightでない人に投げかける質問だと思っていたので、「私そんなに大丈夫じゃなさそうなのかな…」と思ってしまった。その後、イギリスでは「どうも!」「元気?」くらいの軽いニュアンスで使われている表現だと知って、ちょっとほっとした。

“Are you OK?”と聞かれたら、“I am OK”と答えれば、よかったね!となって会話が終わることもあるし、相手もOKかを訊ねたり、実は昨日こんなことがあって…と近況のアップデートにつながったりすることもある。アメリカ英語で言う“What‘s up?“も近いニュアンスなのかもしれない。挨拶の一言目に、相手の調子を気遣う言葉が出てくるのは、思いやりを感じる素敵な習慣だなと思う。

知らない人の“My Love(愛する人)”になった

職場の人に“Thank you my sweetheart”と言われたり、飛行機の添乗員さんに“See you my love”と言われたり。“Sweetheart”、“Darling”、“My love”なんて映画でしか出てこない、恋人への呼びかけ方かと思っていたら、案外、街中でよく聞く表現で驚いた。最初は、距離感が異様に近い気がして戸惑ったが、彼らのニュアンスでは「お嬢さん」くらいの気軽さなのかもしれない。私の経験では、男性よりも女性から言われることのほうが多い気がする。

お疲れ様、さようなら、の代わりに”Good night”

“Good night”は、「おやすみなさい」。中学英語で習ったときから当然のように思っていたが、ここイギリスでは仕事終わりにお疲れ様、さようなら、の代わりに“Good night”を使う。“Good morning”と同じ要領で、「よい夜を!」という意味を持っている、夕方から夜にかけて使う便利な挨拶なのだと知った。“See you”よりも“Good night”のほうが、私はよく使っている。

言語とは、文化だ!

言語とは文化に直結したものだと、イギリスに来て改めて感じている。ここで話されている英語は、世界共通言語としての英語ではなく、イギリスの人々にとっての母語としての英語、イギリスの文化に結びついた「イギリス語」なのだ。生活の中で、イギリスならではの英語にふれることで、イギリス文化の一端を知り、それらが、自分の話す言葉の一部になっていくのを楽しみながら、日々を過ごしている。

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