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ボーイング社のエンジニアに日航機墜落事故について尋ねた

今、ユダヤ教の新年の祭日で、友人宅に食事に誘われることが多い。素晴らしいコミュニティで生活しているが、祭日に仕事の話はご法度なので、主がどんな仕事をしている方か、ずっと後になって知る。

昨夜、ディナーに招いて頂いたお宅のご主人が、ボーイング社のエンジニアだと知ったのは数ヶ月前だった。

米航空機大手のボーイング社はイリノイ州シカゴに本社があり、私の住む、ミズーリ州セントルイスにも、2500人の従業員を持つ3つの工場がある。


毎年、お盆の頃になると、1985年に起こった日航機墜落事故の動画が、YouTubeのオススメに現れるので、今年も数本の動画を見た。

38年前、群馬県御巣鷹山で墜落し、520人の犠牲者を出した日航ジャンボ機墜落事故は、現在でも世界で最悪な単独の航空機事故としての記録を持つ。

この機は御巣鷹山での墜落の数年前に、大阪の伊丹空港で尻もち事故を起こしている。この時のボーイング社の修理ミスが墜落の原因とされているが、この事について、詳しく説明されている動画に、私は、釘付けになった。

その動画が作られた時点では、ボーイング社は、自社のミスを認めていない、とのことだった。

私は、激しい怒りを感じた。


近所に住み、仲良くさせていただいているご家庭のご主人が、ボーイング社のエンジニアだと知った時、すぐに日航機墜落事故について思った。

現在、ボーイングの社員は、世界で最悪の航空機事故である日航機墜落事故について、どう思っているのか、いつか尋ねてみたい、と思っていた。

神聖で楽しい雰囲気に包まれる安息日や祭日に、事故の話題はそぐわない。しかし、昨夜、チャンスが訪れた。

祭日の晩餐も佳境に入り、主もゲストも、メインディッシュに舌鼓をうち、ワインを楽しみながら、知的クイズを出し合うゲームが始まった。

政治や経済のクイズに始まり、誰かが、米国で最悪の交通事故について質問し、その話題で盛り上がった。

今だ、と思い、思い切って質問した。

世界で最悪の航空機事故は何でしょう?

私は、極力、笑顔で、単なる質問だ、という感じを装った。

私の質問が終わるのをまたず、ボーイングのエンジニアのトッドが真剣な顔で静かに口を開いた。

"In 1985, in Japan. 520 dead. It was our mistake、it was caused by our improper repair. We watch the video regarding this mistake every summer to remind us how the small mistake will cause the big aviation accident and the tragedy for the passengers and their families"

クイズの答え以上の発言だった。

私は、トッドは知らないかもしれない、日本の航空事故になんか、興味が無いかもしれない、それでも、気分は害さないと決めていた。

意外だった。

ボーイングの社員は、日航機墜落事故における、自社の修理ミスを認めている。そして、小さなミスが、どれだけ大きな事故に繋がり、乗客とその家族に、どれだけの苦痛と悲劇をもたらすか、忘れることの無いように、毎年、事故の日に動画を見て、弔っている。

私は、早速YouTubeやGoogleで事故の最新情報を調べてみた。ボーイングは賠償金も支払っている、という情報も得た。しかし、軽はずみに信じてはならない様な情報の方が、圧倒的に多い。

トッドの許可を得て、日航機墜落事故に対する、彼の言葉や、他の社員の意見や思いを動画に撮ってみたい、と心から思った。

真実は、現実と生身の人間の中にある。
動画や似非情報に惑わされるのは、危険だ。



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