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『VERSUS FATE』座談会 part 1 seek×Nao×鳴瀬シュウヘイ×MASATO編


seek(Psycho le Cemu、MIMIZUQ)の発案によりスタートした
コンピレーションCD『VERSUS FATE』には、
90年代のヴィジュアルシーンの中に堂々と存在を示していた
from姫路の5バンドが収録されている。
彼らを生んだ姫路Betaのために、2021年に再び一同に会した彼らの
熱く楽しい座談会をお届け。
音楽にかける青春と、決して切れることのない関係、
そして姫路Betaへの思いがぎっしりと詰まった濃い時間となった。


まず電話したのはmichi.(MASCHERA)ではなくTAKA(TRANSTIC NERVE)


●『VERSUS FATE』の企画を発案したのは、seekさんなんですよね。
seek:去年11月に、姫路Betaで弾き語りのライヴをしたときにまだまだ大変だってことを知って、継続的に支援したいと思ったんです。チャリティTシャツとかとは違う形をと思って年末に考えて。絶対皆さんイヤやろうなと思ったんですけど、Betaが財産として持っている当時の音源を出したらどうかなって思ったんですね。権利とかもあるし、何はさておきメンバーさんの気持ちが大事やから、OKしてくださるか年明けからご相談しました。


●皆さん、seekさんからご連絡があったんですね。どう思いました?
Nao(ex.ILLUMINA):めっちゃおもろいやんて思いました。ただ、できたらええけど、どっかのバンドの誰かがイヤがるやろうなって。電話をもらったとき、酔うてたんやけどね(笑)。
seek:Naoさんが一番の秒速で、「ええよ」って言ってくれはりましたね。ちょっと飲んではるんかなとも思ったんですけど。
Nao:ちょっとやない(笑)。我々も何かしたいという思いはずっとあったから、seekが旗を振ってくれるんやったら、乗る乗るって、もろ手をあげたよね。
鳴瀬シュウヘイ(ex.DEVELOP FRAME 以下、シュウヘイ):同じくですね。DEVELOP FRAMEのメンバーは、半分ぐらい現役のミュージシャンじゃなかったりするので、俺が決めたら決定できるから全然大丈夫ですよって言いました。過去のもので何か役に立つなら、っていうぐらいの感じですね。

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seek:バンドさんごとの事情もあるから、皆さんにちゃんとお話したいと思ってたんです。結果的には、それでいろんな人とお電話できたのがすごく嬉しかったですね。僕は、姫路Betaの杮落しの6DAYSに、全部チケットを買って見に行ってるぐらいやから、皆さんスーパースターなんです。そういう人らと25年のときを経て、直接電話できたから。
シュウヘイ:一番最初にコンタクトをとったのは誰? 
seek:この企画自体、MASCHERAが参加できないんやったらやめようと思ってたんです。でも、いきなりmichi.さんに電話する勇気がちょっとなくて。
一同:(笑)
seek:その前に一回誰かに相談したいなと思って、TAKAさんに電話したら、いいやんって背中押してくれはったんで。そのときも、「でも、ネックはMASCHERAやな」って話してましたけど(苦笑)。

●MASATOさんはどんな風に聞いたんですか。
MASATO(ex.TRANSTIC NERVE、defspiral):TAKAから話を聞いて、その後にスタジオでばったりseekと会ったんで、直接話を聞いて。最初に聞いたときは、すごいことを考えるなって思いました。自分らはええけどなかなか難しいんちゃう?って。


●皆さんの心配をよそに企画が通ったのは、姫路Betaへの熱い思いゆえだと思いますが、選曲に関してはどんな風に決めたんですか。
Nao:お客さんが一番聴きたい曲かなと思って選びましたね。それで一枚でもCDが売れて、何か還元することができればと思ったから。2曲ともメジャーでも出してるんで、このバージョンも聴いてもらえたら嬉しいし。
MASATO: TRANSTIC NERVEも、今回収録してるインディー盤の2曲は、「SHELL」というアルバムで再録してるのでそちらも聴いてほしいですね。
シュウヘイ:Betaから出したアルバムのタイトル曲と、もう一曲に関しては純平とTETSUが二人で選んだんです。
seek:僕らは、売れたいからこの2曲やろって。そういうスタンスは昔から変わらないんで、何の相談をすることもなく決まりました。

シュウヘイ:ちゃんとMASCHERAに言った?、「売りたいから」って。
一同:(笑)
seek:その話はしたい。皆さんが、MASCHERAの選曲に対してどう思ってるのか。MASCHERAのMASCHERAたる選曲やなって思ったんで。
MASATO:さすがやんって思ったもん。今日も聴きながら来て、これにめちゃめちゃ影響を受けたなってすごく思い出した。
seek:「運命の車輪」とかが来るのかなと思ってた自分がめちゃめちゃ恥ずかしくなった。
シュウヘイ:ポップな曲と暗い曲というのは考えられるよね。
seek:両方暗いですから。2曲目で「サヨナラ」って言うてますから。
Nao:それで次が「忘れないで」やしね(笑)。


優秀な長男(?)MASCHERAから、自由人の末っ子(?)Psycho le Cemu


●皆さんの中で、一番のお兄さんがMASCHERAということになるんですよね。
Nao:俺とmichiは、EVIL EYESっていうバンドを昔やってたんです。michi.がヴォーカルで、俺がギターで。
MASATO:俺、初めてライヴを見に行ったのが、EVIL EYESでした。高校1年生のとき。
シュウヘイ:人生初のライヴっていうこと?
MASATO:初です。何じゃこの高校生は、こんな高校生おるんかって思って。すごかったですよね。そこからバンド熱がわいてきましたね、
Nao:EVIL EYESの解散ライヴの対バンが、MASCHERAの楽器隊がやってたバンドなんです。
seek:姫路シーンの中で活動するバンドが合体して一つのバンドになるケースですね。TRANSTIC NERVEもそうやし、Psycho le Cemuもその流れやし。
Nao:当時人気があったAlter System(TAL、RYO、MASAKI前身バンド)とIN-SeIN(TAKA、MASATO前身バンド)が解散して、そのメンバーがTRANSTIC NERVEを組んだときは、ずるいわって思ったもん。
シュウヘイ:ファーストインプレッションで、これは売れると思ったよね。
seek:僕ら、音も聴かずに、ポスターを見て、これは売れるって言うてましたもん(笑)。

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●姫路の中ですごい濃い人間関係ができてますけど、DEVELOP FRAMEは京都のバンドですよね。どういう経緯でBetaに?
シュウヘイ:京都MUSEでMASCHERAと対バンやったときに、リハをやってたら、michi.と田中社長がガン見してるんですよ。シンセ周りの機材が多かったのが珍しかったと思うんで。リハが終わった後に、michi.が「機材すごいですね」って話しかけてきたんですね。それがきっかけでmichi.と仲良くなって、親密になっていったのと同時進行で、田中さんから一緒にやらないかって言われたんです。
Nao:DEVELOP FRAMEに関しては、京都にすごいバンドがおるって噂だけは聞いてたし、めっちゃ仲良くなりましたね。
Nao:DEVELOP FRAMEが姫路のほうに来てなかったら、トランスは音が違ってたんちゃうかなって、今日聴きながら思った。
MASATO:絶対違ってたと思う。

●そして、末っ子がPsycho le Cemu。
Nao:サイコのBetaワンマンはいつなん?
seek:99年9月かな。
Nao:もう俺らは東京に行ってて、MYU(DAISHI、Lida前身バンド)のあいつらがごっついことをやってるって聞いて、ライヴビデオを見せてもらったんですよね。そしたら、何や、これって思った(笑)。演奏力が高いとか、創造力があるとかっていう伝統は?って。
seek:姫路のブランドがね(苦笑)。
Nao:すごいことを始めたなぁって。
MASATO:ビックリしましたね。
Nao:それがまたウケてるって聞いたからほんまにビックリした。
シュウヘイ:あのときの1年とか2年の違いがデカいのかな、シーンにとって。いろんなことを見て吸収できる立ち位置で動いてたから。
seek:俺らもそうやし、DAISHIがその前のバンドを経験してて皆さんに勝てなかったというのがすごく大きかったみたいで、違う方法論でやるというのはあったみたいです。


●それで中でも個性的なバンドになったわけですね。
Nao:でも考えてみたら、michi.もMCしないでポエムを読んだりしてたね。
シュウヘイ:MCになったら、真っ暗でピンスポが落ちて。
seek:演劇っぽいことはしてはるというのは聞いてましたね。サイコは、MASCHERAの影響を受けてるようなスタイルには見えへんかもしれんけど、メンバーはめちゃめちゃ影響を受けてますから。
シュウヘイ:MASCHERAはファンタジーが入ってるバンドやったから、今ALICE IN MENSWEARを見ると、進化したMASCHERAをやってる、原点回帰してる感じがすごいある。
Nao:Betaができてすぐの頃にたまたま行ったら、MASCHERAのリズム隊だけで練習してて、めちゃめちゃカッコよくて。ちゃんとした土台があるから、ファンタジーみたいなところがちゃんと成り立ったのかなって思う。俺らも練習せなあかんわって当時思ったの覚えてる。
seek:僕ら、そこがなかったですわ。それを見て、もっとダンスの練習しようとか、芝居でこうしようとか思ったんで(笑)。よく東京とかにライヴに行って言われましたよ。姫路のバンドの何を見て来たの? みたいな。姫路にもこんなバンドがいるんだって。
Nao:うちの場合は、MASCHERAが先に行ってたから、ライヴハウスの人が若いバンドに、「姫路のバンドが来るからちゃんと見とけよ」って言ってたりして、プレッシャーがあった。MASCHERAで、姫路のバンドというブランドが出来上がってたから。それがTRANSTIC NERVEで完成して、サイコがうわって。
seek:ガシャーンって!(笑)
一同:(笑)
シュウヘイ:とにかくヴォーカルが上手いバンドばっかりやったからね。
seek:それは今回の音源を聴いてもすごく思いましたね。

●当時から姫路のバンドとして見られてるという自覚はあったんですか。
MASATO:めちゃめちゃありましたよ。姫路のバンドは上手いって言われてるのは聞いてたんで。それは誇りでもあったし、ちゃんとしないといけないと思ってライヴにも臨んでました。
Nao:ちゃんとし過ぎや(笑)。
シュウヘイ:うちは、from姫路って書いてあると、京都なんですけどって言いに行ってた。
Nao:対バンのメンバーが酔っ払ったときに、「MASCHERAの二番煎じや」って言われたことはあった。そう見られとんのか、もっと違うことをしないとなって思った。
シュウヘイ:哀愁漂う懐かしいメロディっていう、ILLUMINAのキャッチコピーは、最初から狙ってたわけじゃないの?
Nao:最初は、もっと違っててダークやった。最初のほうのデモテープには、「棺の中」っていう曲とかもあったし、ワイドパンツを履いたりしてたから。
シュウヘイ:今改めて聴いたら、ILLUMINAの曲、めちゃめちゃええなって。そういう話をRYOとしてた。その話をNaoにしたら、「当時気づいてほしかったな」って言ってたけど(笑)。当時は耳が偏ってたし、この歳やから、ILLUMINAの曲が沁みるねん。
Nao:当時、言ってほしかったな(笑)。


姫路から、気づけばみんな東京へ

seek:バンドが大きくなって東京に出て行って、連絡をとらんくなる時期があったりするんですか。
Nao:先にMASCHERAが東京に行ってからは、連絡とらんくなったかな。
シュウヘイ:メジャータイミングで、ちょっと空気が変わってるね。
seek:MASCHERAの次に東京行きはったんは誰ですか。
Nao:うちかな。
seek:そのタイミングで、Beta東京支部ができたんですかね。

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●それの次がTRNSTIC NERVEですね。先ほどお話が出たみたいに鳴り物入りで登場して、早くに東京にも行って。
MASATO:もともとのメンバーに申し訳ないみたいな、内情的にはいろいろありましたけど。バンドが始まったときから、絶対これはいけると思ってました。東京に行ってからは、展開が速すぎて頭が追いついてなかったですね。どんどん事務所がやっていくんで、それをこなすのに精いっぱいでした。
シュウヘイ:MASCHERA、ILLUMINAとデビューして、次にTRNSTIC NERVEがデビューしたんですよ。うちらがその次で。本当はうちよりトランスが後輩なのに、同じ会社に入ったからうちが後輩になったんよ。

●会社の中では。
シュウヘイ:「俺ら、トランスの後輩やな」ってわざと言って、トランスのメンバーに「やめてください、やめてください」って言わせてた(笑)。
seek:その後、僕らがPLUG RECORDに入ったんで、3バンドが同じ会社になったんですよね。

●そうやってみんな東京へ出て来て、デビューしたたわけじゃないですか。俺ら、夢を叶えたなぁみたいに思うときはありました?
Nao:まだ結果を喜ぶような状況ではなかったかな。
シュウヘイ:規模の差はあれど、それぞれがもう1個上に行くためにどうするのかということばっかり考えてたから。
Nao:それぞれの活動をしながらも、今DEVELOP FRAMEはどうしてんのかなとか、サイコが出て来たとか、何か気にはなる存在として全部のバンドが俺の中にはあったかな。負けたくないというのとはちょっと違うけど、奮起させてもらえる存在なんかな。
シュウヘイ:気にはしてたな。MASCHERAが『HEY! HEY! HEY!』に出るって知ったら、見なって思ったし。そういうのはあった。
Nao:あの頃は不思議やった。ちょっと前まで姫路で一緒にやってた連中がテレビに出てるのが。

当時のメンバーの姿が浮かぶ『VERSUS FATE』

●さて、seekさん発案のこの企画ですが、『VERSUS FATE』というタイトルは、michi.さんがつけたんですよね。
seek:仮にタイトルを『VERSUS』ってつけてたんですよ。当時の姫路BetaのコンピレーションCDのタイトルが『VERSUS』やったから。MASATOさんとジャケットのデザインの話で電話してたときに、「若干違和感を感じる」って言ってはって。『VERSUS』というタイトルは、参加バンドを競わせるみたいなそういう意味合いやったから、違和感があるという話になったんです。それで、michi.さんにタイトルをつけてもらうことになりました。

●そしてジャケットのデザインをしたのがMASATOさんですね。
MASATO:全然素材がないから、最初は文字だけでいこうかなと思ったんですが、昔と今がつながってる印象を出すにはどうしたらいいか想像しながら考えました。個人的には、若干懐かしめのデザインテイストにあえてしたという感じです。

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●そしてリマスタリングをしたのが、シュウヘイさんとRYOさん。
シュウヘイ:当時の時代背景とか流行りの音の感じを考えると、リマスターのレベルじゃないところ、リミックス兼マスタリングぐらいの領域になるかなと思って。そういう作業としてとらえたら面白いかなと思い始めて、RYOも巻き込みました。
MASATO:ここに来るとき聴いてきたけど、どのバンドもあのときの音やね。
シュウヘイ:基本的にべースが強くて、キックはアタックだけ残ってる感じ。
seek:それが三四郎さん(エンジニア)の特徴なんかな。
シュウヘイ:時代もあるかな。現代になってくると、リズムがもうちょっと強くなってくるから。そこの処理をどうするかが一番課題やった。マスタリングの域を超えとるわ、俺らが一番大変ちゃうのってRYOに言ってた(笑)。

●曲だけではないところも、皆さんで作られたんですね。
seek:みんなで作るアルバムにしたいなっていうのはすごく思ってたんです。今の姫路Betaの若いスタッフの子らには、発送作業をやってもらうんです。今のスタッフの子らは二十歳ぐらいの子が多いから、当時のバンドのことは知らないと思うし。
Nao:生まれる前のことやもんね。イヤんなるね(苦笑)。
シュウヘイ:歴史の本やん(笑)。
seek:こういう先輩たちがいて、自分たちがライヴハウスをやっていけるんやっていうのが、若い子らにも伝わるかなと思って。そこの作業は若い子らにやってほしいんですよね。
Nao:そこまで考えてるんや、すごいね。
シュウヘイ:ちょっとね、異常なんですよ、白水クン(seek)のBeta愛が(笑)。
seek:(照笑)
Nao:発案もこのメンバーの中から出たし、外注に出さずにメンバーの中で完結できたのも意味は大きいんじゃないかな。

●改めて当時の曲を聴いてみていかがでしたか。
Nao:今日も聴きながら来て、知ってる、知ってるって思った。当時の二十歳そこそこの気持ちになって、見える景色が違って見えた。
シュウヘイ:やりたいことをやろうっていうのと、売れたいことをやろうっていう、その辺のせめぎ合ってる感じが各バンドにあるよね。
Nao:全員メンバーが見える。弾いてる姿とか青筋立てて歌ってる姿とかが見えて。楽しいって思った。
MASATO:めちゃめちゃ青春やったなって思う。

●知らない方にもですけど、ぜひ当時のファンの方にも聴いていただきたいですね。
MASATO:発売の告知があったときすごく反響があって嬉しかった。
seek:いろんな反応を見てても、時代によってファンの方も違かったりもするし。俺らだけちょっと世代が下やから、サイコだけ知らんわって言ってる人もいたし。いろんな人に知ってほしいですね。まだこの情報を知らない当時のファンの方もいらっしゃると思うので。
Nao:二十数年前にライヴハウスに来てた人やと、今は子育ての真っ最中やったりするやろうし。Twitterとかもあんまりやってないかもね。
シュウヘイ:じゃあ、『ひよこクラブ』とかにインタビューを載せる?
一同:(笑)
seek:関係者の人に告知情報を送ったんですけど、姫路じゃないライヴハウスの人とか、付き合いのあるバンドマンの子らとかCDショップの人とかが宣伝してくれて、すごく有り難いなって思った。
MASATO:こんなことをやってもらえるライヴハウスってないと思うし、ほんま素晴らしいと思う。
シュウヘイ:こういう機会でもないと、ILLUMINAとかの話をすることもないしね。でも、ただの回顧でもなくて、自分へのカンフル剤になるというか、リフレッシュしたような気分にもなるし、面白いね。
Nao:いろんな角度から面白い。
seek:この記事を読んだうえで聴いていただけるとまた面白いかと。
シュウヘイ:もし第二弾をやることがあれば、そのときはMASCHERAさんにポップな曲を(笑)。


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