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楠瀬"poco"タクヤ インタビュー


四十歳を<不惑>という。「四十歳にして惑わず」ということだが、
実際にはまだまだ迷っているという四十歳は少なくないだろう。
4月12日に<不惑>を迎えた楠瀬タクヤはどうだろうか。
ミュージシャンとして光り輝くスポットライトを浴びた経験を持ち、
そして今でも自身のクリエイティビティを発揮し、音楽を楽しんでいる。
残念ながら誕生日記念のイベントは中止となったが、
そんな中で迎えた四十歳。彼の音楽遍歴をたどりつつ話を訊いた。


音楽との出会いから、山のいただきに駆け上がるまで

■音楽の記憶で古いものというと、どんなものでしょうか。
「自分で好んで聴いていた音楽はほとんどないんですよね。流れてくるものを流されるままに聴いてたんです。幼少期に、親が運転する車で(井上)陽水がかかってたとか。小学校に入っても、とんねるずの番組を見てるからとんねるずのCDを買ったとか。ヒットチャートを、ヒットしてるから聴く、みたいな感じでしたね」

■家では、音楽が流れているような環境だったんですか。
「違いますね。町工場を営んでる父なんで、音楽的素養とかはないです。(親もアーティストの)二世の方みたいな、カッコいい生い立ちはないですね。両親とも趣味として音楽を聴くのは好きというぐらいだったので、まさか楠瀬家からミュージシャンが出るなんてっていう感じです」

■英才教育を受けるとかもなく。
「ないない(笑)。小学校のときにピアノは習わされたんですけど。自分から行きたいと言ったんですね」

■男の子だとピアノを自分からやりたいというのは珍しくありませんか。
「結果的にそうなっちゃったんです。リトミックみたいな、音楽で遊ぶグループレッスンに幼稚園の頃に行っていたんですけど、ほかの子たちがやめていき、小1ぐらいでこのまま続けるならピアノのコースだよねっていうことになってしまったんです。だから、ピアノは3、4年でやめたのかな。ただ、グループレッスンをやりたかったのは覚えているから、バンドは向いてたのかもしれない。みんなで一緒に、ガチャガチャ打楽器を鳴らしたりするのが好きだったんです」

■それからはどんな音楽を聴いていましたか。
「小学校のときはヒットチャートをラジオで聴いてるぐらいでした。WANDZとかZARDとかが流行ってて、B‘zがCDを出せばずっと1位みたいな時代。中学生ぐらいになるとカラオケに行くのが最大の娯楽になって、物真似をしながら氷室京介の「KISS ME」を歌うとか、布袋寅泰みたいにギターを弾いてるふりをしながらカラオケをするとか。

それぐらいのときに、この二人(氷室と布袋)、同じバンドにいたんですかっていうのを後から知るんですよ。それはヤバいねと。悟空とベジータは昔兄弟やったんですかっていうぐらいのものなんで(笑)。それで、BOOWYのコピーに挑戦しようってなったんですよね。そんなに難しくないし。だから、最初にコピーしたのがBOOWYです。「B・BLUE」か「NO N.Y.」とかを練習し出しました。中学2年生の頃かな」

■そのときからもうドラム?
「はい。人と違うことをやるのがすごく好きで、みんながやってることは面白くないし、違う道を行くぞっていうのが好きなんです」

■その頃には、ロックバンドのコンサートに行ったりしてたんですか。
「初めて行ったのが、高校1年のときのLUNA SEAですかね、(大阪)城ホール。BOOWYでバンドの音楽に入ったけど解散してるし、THE BLUE HEARTSもカッコよかったけどハイロウズをやってる時代やったし。UNICORNも解散したし。コピーしたいと思うバンドはもう活動してなかったけど、ヴィジュアル系がどんどん出て来る時代やったんですね。

LUNA SEA、GLAY、SIAM SHADE、黒夢。心斎橋にミヤコというCDショップがあって、LaputaとかD=SIREとか、どんどんハマっていきましたね。『GIGS』とか『バンやろ(BANDやろうぜ)』とかの付録のバンドスコアもそういうヴィジュアル系のバンドの曲やったんで、コピーするようになったんです」

■このバンドにめちゃくちゃハマったとか、このミュージシャンは特別みたいなのはあまりいない?
「ん~、難しいんですよね。当時は、LUNA SEAにしてもGLAYにしても、天の上の世界の人なんで、好きやし、没頭してたし、その後にJUDY AND MARYが好きになるんですけど、その1年後ぐらいには同じ土俵で働く後輩になるから…」

■ああ、時間の流れとしてはそれぐらい。
「バンドのコピーをやってたのが高1、2だったんですよ。でも、高2の冬休みにはもう佐久間(正英)さんとデモテープを録ってるんです。それで、高3の秋にデビュー。すごく好きだった憧れのスターに実際にお会いしていくんですね。ただ未だに、欠かさずライヴに行くぐらい好きになる人はいないから、音楽への探求度が浅いのかもしれないです。ミュージシャンって、音楽オタクだったりマニアックだったりする人が多いじゃないですか。そういうのはあんまり自分にはないですね」

■早くにプロのミュージシャンになって、幅広く音楽を知っていないといけないということで、意識的に音楽を聴いたりもしました?
「しましたね。洋楽を聴き出しました。流行り歌を聴いて流行り歌を作ってたから、自分たちの作るもののパターンが出尽くしたり、何かに似てるものになっていくのもわかったから。二十歳ぐらいのときですね。多くのミュージシャンはデビューするのが20代中盤ぐらいだし、その方々の知識には勝てないんですよ。Hysteric BlueのTamaもテクニカルでロジカルな大人のミュージシャンとかが周りにいることが多かったんですよね。だから、最低限そこを見返したいというのもありました」

■いろいろな音楽聴いていく中で、カッコいいと思うものが変わってくるようなことはありましたか。
「いわゆるHysteric Blue的な、ガールポップ、かわいらしい音楽に対するアンチテーゼもあったのかもしれないですけど、英語でラップしてシャウトして暴れるみたいな、全く反対のベクトルの音楽に出会ったんですよね。それはすごくハマりました。それで男友達と遊びの延長でヘヴィロックのバンドをやってました。

俺がそれまで聴いてたロック、ヴィジュアル系は、ざっくり言うとBOOWYが敷いた下敷きの上にあるんですけど、そこで出会った音楽はそういう8ビートの音楽と全く違うぞって思って。ヒップホップの延長でハネてたり、メタルの延長でドコドコいってたり、自分の中にあった音楽のジャンルに風穴が空いたんですね。自分の間口を広げたいと思っているときだったこともあって、一気に洋楽のほうに傾倒していったのが二十歳過ぎとかですね。その頃はヒスブルも解散すると決まってたのかな」

■人生の岐路ですね。
「音楽とか仕事のためだけに大学を休学して東京に出て来たのに、それがなくなるって虚無ですよね。でもまだ発表もしてないし、誰も知らないし。今日もバンドのプロモーションはあるし、みたいな。二十歳頃の若者には抱えがたい虚無ですね。だから、その虚無を埋めてくれたものがミクスチャーであり、男友達とバンドをやることだったのかもしれないです」

音楽と共に重ねてきた時間。
そこで得たたくさんのもの。

■それからさらに20年、ミュージシャンとしてのキャリアを積んで、変化してきたところはありますか。
「変化しないといけないというほうが正しいですかね。いろんな人が、年をとっても中身は何にも変わらないと言ってるし、それも実感としてありますけど、仕事として音楽をやって、サバイブしていかないといけないから、変化しないといけないと思うんです。

ポピュラー音楽は若者の特権で、若い人たちが若い人たちの想いを形にして、それに若い人たちが共感して、若者にとっての神のような存在になっていくみたいなことやと思うんですよ。今、サポートミュージシャンとしてツアーを回ったりして、若い子たちの文化を勉強させてもらってるから、かろうじて肌感を失わずにすんでますね。

若いクリエイターたちと話してて思うのは、そもそもバンドという形態が今は古いんですよね。合理的にデスクトップで音楽を作りますから。アメリカのヒットチャートもEDM、ダンスっぽいサウンドが並んでるし。人と関わるのがもうイヤだっていうような世代やから、バンドが一番向いてないんです。でも自分は、バンドに夢中になって音楽を始めて、BOOWYに翻りますけどビートロックを追いかけてバンドをすることで成長して、バンドをすることで見聞を広げてきたから。ただ、音楽を仕事として続けていくには変わらざるをえない部分はあります」

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