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細かいことなんですけれども

住宅設計をしているとき、お客さま(特に奥さま)から度々言われる言葉がある。それが「細かいことなんですけれども」という前置き。

いやいや、その細かいこととっても大事です。細かいことなのに気になるんでしょ?気になるの放置しちゃだめです。そういうのどんどん言ってください。そうやって細かいことがたくさん積み重なって、家の形になるのですから。


細かいことって悪いことなのかな?

わたしの住宅設計にとっては、逆に細かいことを教えてもらった方がその人らしい家ができるので大歓迎なのですが、それを「細かいこと」と他者に否定される、もしくはそんなことが気になるの?と言われることが不安なのかもしれません。

大丈夫ですよ、私は一切否定しませんから。

その考えが良いか悪いか、うまくいくかいかないかは別として、家のことでとても気になる「細かいこと」があるわけじゃないですか。それに対してのプロの意見はきちんと言いますし、活かせるものなら活かしたい、と思っています。それってあまり良くないです、なんて私は言いません。

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実際にキッチン背面収納の引き出しの奥の隙間使えないのが気になるのよね、と言って、隙間に棚を作っちゃったお客さまもいました。

細かいことって悪いことではありません。むしろ、細かくて気になっていることなのに我慢して暮らす方が辛いじゃないですか。


なぜ「細かいことなんですけれども」とことわるのか


間取り相談業務を始めてから、なぜお客さまが「細かいことなんですけれども」と前置きされるのか、なんとなくわかってきた気がします。

ひとつは「普通はこうである」「普通はそのようなことをしない」といって業者側がリスクを回避しようとしているから。

あとは、自分の考えが「普通でないのかも」と感じてしまうから。


暮らしは「普通ではない」の積み重ね

自分にとっての普通が、他者にとっての普通ではない。もちろん逆のことも言えるのですが、初めてそれを感じたのは学生の時に友だちと一軒家をかりてシェアハウスしていた時でした。彼女の食器の洗い方、掃除の仕方、みんな自分の知っているものとは全然違って、そういうところが気になるんだー!と驚いたものです。

途中で揉めたくないので、最初に徹底して話し合ってはじめたシェアハウスだったので、すごく貴重な経験でしたね。

その経験から「家事の仕方はひとそれぞれ」だと思うようになったので、お客さまが話す「細かいことなんですけれども」というのも、その人の大事な暮らしのひとつなのだと私は思っています。

自分の暮らしですよ。それを他者に合わせる必要はありません。

もちろん家族では調和させる必要はありますが、自分の家なのに「普通はそんなことはしません」と言われたら「私はそうします」と言って良いくらいだと思います。


そんな視点はなかった

そうやって「普通の暮らし」が当たり前な世の中になっているので、家の主役を家族、自分にしてお話しすると、みなさん「そんな考え持ったことなかった」と驚かれます。ダメですよ、家で我慢しちゃ。

特に今年はコロナ禍で家に居る時間が長くなっているはずです。

少しでも家で我慢せず、自分らしく暮らせるようにしてもらいたいなと思っています。



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