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妄想ダイエット

とても久しぶりに会った知人が、前と変わらずスタイルが良くて、髪の毛サラサラで色っぽかった。スタイル維持の秘訣を聞いたら「まつじゅんよ」と言われた。

「え、そうなんですか?」
「バーとかで会っちゃうかもしれないじゃん。もしもすれ違ったりした時いい匂いの髪でいたいじゃん。なにがあってもいいように整えておくの。」

そうなんですねぇ。すごい!と言ってみたけれど、「そういうのないの?」と聞かれて、私‥絶対ないわ‥。と思った。

下世話な言い方をすれば 実際に出会ったことのない でもどこかで生きていることだけは分かっている半分虚構のようなイケてるメンズにいつ抱かれてもいいように常時準備しておくってことだよねその限りなく100%に近い妄想のためにダイエットができるってそれもう尋常ではない精神力だと感服しちゃうんだけど、と心の中で一気呵成に思いが噴き出したけれど、言わずに我慢できた。

姐:「好きな芸能人とかいないの?」
私:「‥ジャスティンビーバー?」
姐:「それアメリカ人じゃん。日本人でいないの?」
私:「(アメリカ人じゃダメなんだ、ていうかカナダ人だし)えー‥小林薫?」
姐「ちょっとー。もうあなた大丈夫ー?」
私:「(小林薫かっこいいじゃん)なんでですかー。小林薫さんすてきですよ?小林さんのためにダイエットしようとは思わないけど。」

仕方がない子ね、って目で見られたのだけど、私からすると、リアリティのない世界で自分の肉体を磨き続ける貴女様の現状にこそ若干の危機感を覚えます、とその時は思ったのだけど、いや待て。と帰りの電車の中で考え直した。

果たして私は妄想を軸においてあそこまで徹底したダイエットができるのか。幻惑を動力源としたスタイル維持の実現、それはそれでひとつのたいへんパワフルな才能なんじゃないか。

私はリアルに出会って恋が始まらないと、動けない。
『はいからさんが通る』の紅緒父が、芸者の吉次さんに一目惚れし、

先立った紅緒母の仏壇に向かって、

「すまん母さん。生身には勝てん。」

と言っていたけれど、まさにそれで、生身に勝るものなし、と思っている私にはなかなか理解が難しい。

いつ自分が選ばれるかわからない、そのいつかに賭けて自分を磨き続けるって、それアスリートだ。

いや、アスリートはまだ、眼前に可能性が物質的に転がっている訳で、その点モチベーションのキープができるけれど、おねえ様はほぼほぼ妄想なのだから、精神力としてはアスリート以上に強いのかもしれない。

あの時私の持論を、まるでさもそれが正しいかのように展開しなくてよかった。知人は変わらず努力をしていて美しい。私はしのごの御託を並べて、身体の美の探求から逃げている。プロセスは何であれ、結果の差は歴然。妄想ダイエットはともかくとして、2020年はリアリティ重視の私に合った身体作り、探求してみよう。


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