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横尾さんが怒ってる

「モノづくりに携わるアーティスト同士のモラルが、あまりに欠けてることに呆れ、憤ってるんです。要するにプライドの問題です。」

現代美術家横尾忠則さんが怒っておられるらしい。

横尾さんが出したアイディアを山田洋次監督がなんのエクスキューズもなく、礼儀に欠いたやり方で用いたということに憤りを感じておられるらしく、いったいどうしたのだろうと内容を読んで、昨日の夜もう一度読み返してみたのだけど、なにか釈然としないまま朝を迎えた。

なぜこんなにモヤモヤが続くのだろう。

犬散歩中にもずっと考えていたのだけど答えが出なくて、それならいっそ割り切って他のことに意識を向ければいいのに、しつこくモヤモヤに付き合いたがる自分にもモヤモヤし始めてしまって、とはいえ、さすが散歩の威力は大きい。無心に歩くことで活性化された細胞を用いてもう一度読み返したら、わかった。

「テレビや新聞、雑誌に山田さんが出ても発案者の名は出ていません。面白いアイディアは独り占めにするっていうのが彼の性格なのかな、恥ずかしくないのかしらと困惑しました。加えてアーティスト同士という感情以上に、山田さんに年上の友人として敬意を抱いていましたしね。僕は友情を踏みにじられたとも感じています。そういう態度やモノの考え方は彼個人のものなのか、それとも日本映画界の悪習でしょうか?」

友情か。
そこだ、モヤモヤしていたのは。

仕事上の問題に関してプライベートな感情を5枚切りトースト1枚あたりバター200g全のせしちゃってる勢いを感じて、首をかしげてしまったのだ。しかもそれを週刊ポスト経由で全くの一般人である私がゴシップとして受信してしまったから、その、下世話にしたくないのに下世話になってしまったような状況に、更にモヤモヤしてたのだ。

仕事に私情が挟まっている。それだけで、ザッツベリーコンプリケーテッドだ。そこに週刊誌が入ってしまって横尾さんだけの視点で映画制作者、それも現在上映真っ最中の映画を作った方への批判がなされ、激昂したままの荒削りな塊を、週刊誌という増幅装置でキャッチしてしまった私は、読んだ途端に「?」、「何かが変だ」と思い、故に再読してしまって、そのうちなんだか読んでる私が横尾さんの思わぬ恥部を光学顕微鏡最大倍率で要らぬ細部に渡り観察してしまった気がして、これは苦い。。と口元を歪ませてしまったのだ。

横尾さんに関しては、Y字路のシリーズがとても好きで、はるか昔にやっていたMOTの個展も本当に素晴らしく、ほとばしる躍動に満ちていて、喜びを頂いたという記憶のみがあった。だから、久しぶりの情報アップロードがこの件だったとなると、口の歪みはそう簡単には取れない。しかも、私が恥部だと感じてしまったその恥部とはいったいなんなのか、と考えてもよくわからず、ああ、、、スッキリしたい。。。と思いながら夜中に映画を観ていたら、あぁ‥‥これかもしれない‥‥と思った瞬間がやってきました。

故に、今の私は溜飲が下がった状態と言って良いと思います。

でその件の映画というのが、現在Netflixで公開されている『2人のローマ教皇』の中に出てくるワンシーンなんです。

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現ローマ教皇であるフランシスコが過去の過ちを懺悔する際に、その過ちを犯した原因を断言するシーンがあるんです。これです。↓

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これか。

プライド。
そうか。プライドか。
プライドは、、、厄介だよな。

社会的影響力のある人がプライドを傷つけられれば、そしてそこに友愛の感情が絡んでくれば、清明な眼は曇り、あるいは濁り、

週間ポストでの怒り表明

ということに、あるいはなるのかな。なるのかもしれない。そしてプライドを守るために取った行動が「批判」や「破壊」や「侮蔑」であったならば、そしてそれら攻撃的な行動が公にされた場合、私はその人の「恥部を見てしまった」思いがするのだろう。

プライドを傷つけられた、と感じることは私もある。でも幸か不幸か私は無名の人物だから、大きな媒体と組んで感情を公にできないし、第一しない。

あるいはまた、感情の表出、ということを多かれ少なかれ実行したとして、恐らくは怒り、悲しみそのものを丸ごと精査なしに情報の大海に放り込む勇気はない。

あるいはあるいはまた、深川育ちの江戸根性が根付いているのか、その行動を無粋だと思ってしまうええかっこしいの自分がいる。


ここまで考えてきて、そうか。週刊誌に、というくだりはどうにも理解し難いけれど、横尾さんは感情の表出そのものに、完全に正直で脚色のない方なのかもしれない。

私の中のベランメイはそれを良しとしないが、芸術家の本分をまっとうされているのかもしれないと思うと、横尾さん、まだまだ素晴らしい作品を生み出されるのかもしれない、と段々に晴れやかな気持ちになってきた。

なのでおそらく、これで無事横尾さん由来のモヤモヤからは解放されそうです。

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