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ポップアップ・ブックカフェ「Books & Bee (蜜蜂)」イベントレポート#3 - ワークショップ編

2022年4月22日(金)・23日(土)に、第4回目のブックカフェを開催いたしました。詳細はこちら
おかげさまで無事に終了しましたことを改めて感謝申し上げます!

今回も当日の様子を数回に分けてレポートをお届けいたします。

1. ポップアップブックカフェ の様子
2.トークセッション (浅間ガーデン養蜂場 小金沢さん・長岡さん)前編
3.トークセッション (浅間ガーデン養蜂場 小金沢さん・長岡さん)後編
4. 蜜蝋キャンドルワークショップ(蜜蝋キャンドル作家 glim 上田さん)
 ↑今回はこちら!

ブックカフェ2日目もポカポカ陽気の中スタート。昼下がりの暖かな春の陽光が差し込むらしくダイニングキッチンさんの併設アトリエにて、蜜蝋キャンドルづくりのワークショップが開催されました。

講師の上田由利子さんは、小諸市在住の蜜蝋キャンドル作家さんです。蜜蝋100%の美しいキャンドルを20年以上作り続けていらっしゃいます。(上田さんの作品はこちら

今回のキャンドルは「ディッピング」という昔ながらのやり方で作ります。溶かした蜜蝋に芯を浸けては出し、浸けては出しをていねいに繰り返すこの手法、アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーもこうして蜜蝋キャンドルを作って暮らしていたのだそうです。

まずワークショップ前に、上田さんとみよたBOOKSの小さなスタッフが準備を開始。
上田さんは、養蜂家から分けてもらった蜜蝋を何度も精製してゴミなどを取り除いて使われるのだそうです。今回使う蜜蝋はきれいな淡いオレンジ色をしています。甘いはちみつの香りのする蜜蝋をバキバキと割って・・・

大人も子供もつい夢中になる作業。パキパキ

湯煎で溶かして、80℃くらいの適温にして、準備完了。

参加者の皆さんが来場され、アトリエの大きな無垢のテーブルを囲んで座ります。

「今日4月23日は『サン・ジョルディの日』というスペインのカタルーニャ地方に伝わる本の日で、恋人たちがお互いに本を送り合うという習慣があるのだそうです。こんな日にこのイベントで、皆さんとワークショップができることをとても嬉しく感じています」という、上田さんの素敵なイントロダクションでワークショップが始まりました。

上田さんが蜜蝋キャンドルと出会ったのは20年以上前、上田さんのお子さんたちが通っていたシュタイナー教育の幼稚園でのことでした。自然素材のもので身の回りの環境を整えるというシュタイナー教育の方針のもと、その幼稚園では秋に1年分のろうそくを蜜蝋で作るという作業が行われていました。甘い香りに包まれての瞑想のような作業。初めてその作業に参加した時、上田さんは「なんて贅沢で幸せな時間なんだろう」と感じたそうです。すっかり蜜蝋キャンドルにはまった上田さん。ご自宅で制作を始め、2007年からは販売もされています。

そんな上田さんが影響を受けた、大好きな本としてお持ちくださったのは、ローラ・インガルス・ワイルダーの有名な著作「大きな森の小さな家」と、ドナルド・ホール著の絵本「にぐるまひいて」の2冊でした。

大きな森の小さな家」は、19世紀後半のアメリカ北部ウィスコンシン州で開拓民として暮らすインガルス一家の物語です。厳しい自然や天災、さまざまな危険と隣り合わせの中、衣食住のほぼ全てを自分たちの手で作り出していく生活。彼らはそうした日々を、単に生き抜くだけではなく、助け合いながら、慎ましく、美しく暮らしていきます。

にぐるまひいて」も19世紀のアメリカの、何もかもが手作りの時代のお話。農家の家族一人ひとりが丹精込めて作った1年分の品物を、荷車に積んで父さんが町の市場に運んでいきます。市場で全ての品物を売り、必要最低限の道具を仕入れて、歩いて家路につく、そしてまた次の1年かけて品物を作っていく・・・その繰り返しが、静かに、美しく描かれた素敵な絵本です。

これらの本の家族たちの慎ましやかな暮らし方、自然とともに、地に足をつけて生きる、その生き方に上田さんはとても共感し、現代では失われつつある、私たちにとって大切なことが何なのかを思い出させてくれる本として、参加者の皆さんに紹介したいと思われたそうです。「19世紀は私の憧れの時代なんです」と、ほほ笑んでおっしゃる上田さん。上田さんのシンプルで美しく、静謐な空気感をまとった作品からも、込められた想いが伝わってくる気がします。

19世紀当時、蜜蝋キャンドルは教会の大切な儀式に使われていたそうです。上田さん作のキャンドルに火を灯してみました。

蜜蝋100%のキャンドルは、石油でできたパラフィンのキャンドルに比べて燃焼時間が長く、炎の色がオレンジがかっていることが特徴です。シュタイナー教育の幼稚園では、毎日、子どもたちが心を落ち着かせ、内面に意識を向けるためにキャンドルを灯す時間を持つのだそうです。小さなオレンジの炎を揺らしながら、はちみつの香りをほんのりと漂わせて、とろとろとゆっくりと燃える蜜蝋キャンドルを眺めていると、確かに肩の力がふっと抜けて、心がゆるんでいくのを感じます。

さあ、いよいよ実際に蜜蝋キャンドルを作る時間です!

「皆さんにはまっすぐの美しいろうそくを作っていただきたい。そのためにはディッピングに集中すること、心の静けさが大事なんです。」と上田さん。

1本の芯の両側にヌンチャクのようにぶら下がる2本のろうそく。それが完成形です。その形を作るために、芯を溶けた蜜蝋に浸す、冷やす、乾かす、形を整える、浸す、、、をひたすら繰り返します。参加者の皆さんは、テーブルの周りをローテーションしながら順番にその作業を進めていきます。

芯を蜜蝋に浸して・・・

冷やして、乾かして、形を整える。

テーブルの周りを、皆でぐるぐる・・・

心を静かに、ぐるぐる・・・

小さなスタッフもディッピングに集中。こうやって木の枝に芯を結び付けて作る手法もあります。

まっすぐな蜜蝋キャンドルの完成っ!

手仕事に集中した後の達成感が半端なく大きく、参加者の皆さんのマスクの下からも伝わるこの笑顔!

1匹の蜜蜂が一生のうちに作るハチミツはティースプーン1杯分。そこから採れる蜜蝋はたったの10分の1(約0.5g)しかありません。このキャンドルの蜜蝋を作るのに、どれだけの多くの蜜蜂たちが花々を飛び回ったのだろう、、、そのことに想いを馳せると、手にしたキャンドルがさらに愛おしくなります。

ディッピングというとてもシンプルな作業は、こうした自然の営みとのつながりが、蜜蝋の甘い香りと柔らかな手触りを通して伝わってくる、とても豊かで心静かな時間でした。このような貴重な体験の場を作ってくださった上田さんに、心から感謝いたします!

次回開催のブックカフェが決まりましたら、Webサイト / Facebook / Instagramでお知らせいたします。

それでは健康にお気をつけて、良い読書を~📚


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