見出し画像

ポップアップ・ブックカフェ「Books & Bee (蜜蜂)」イベントレポート#2 - トークセッション (前編)

2022年4月22日(金), 23日(土)に、第4回目のブックカフェを開催いたしました。詳細はこちら
おかげさまで無事に終了しましたことを改めて感謝申し上げます!

今回も当日の様子を数回に分けてレポートをお届けいたします。

1. ポップアップブックカフェ の様子
2.トークセッション (浅間ガーデン養蜂場 小金沢さん・長岡さん)前編

3.トークセッション (浅間ガーデン養蜂場 小金沢さん・長岡さん)後編4. 蜜蝋キャンドルワークショップ(蜜蝋キャンドル作家 glim 上田さん)

今日のために「らしくダイニング&キッチン」さんが作ってくださった、特別な蜂蜜スイーツとコーヒーをいただきながら、若き養蜂家、小金沢さんと長岡さんによるトークセッションが始まりました。ちなみに、コーヒーには浅間ガーデン養蜂場のアカシア蜂蜜を入れるのがおすすめ…とのことで、参加者のみなさんもトライ。スイーツと合わせていただきます。

左から、長岡さん、小金沢さん

中学校以来の同級生というお二人のお話は、蜂と家族への愛にあふれるものでした。

まずは、お二人の自己紹介をお願いします。

(小金沢さん)
見た目でお分かりかと思いますが、ずっとヒップホップダンスをやっていました。ダンスチームのためのロゴの制作など、デザインの仕事も。結婚して、男の子が産まれて…というタイミングでなんと会社が倒産して…。このタイミングで?と、頭が真っ白になりました。人に紹介してもらって別の仕事につけたんですけど、自分に合っていなくて、体調を崩したりしたんですよね。その時、自分の人生について、生き方や働き方について、すごく考えました。お金だけを目的にするのではない働き方はできないかって。

その時、ふと、中学生の時に父親の養蜂を手伝ったことを思い出しました。父は鍼灸師をやっていて、養蜂は趣味でやるとずっと言っていたんです。この養蜂という仕事は、地球のために自分の体を使える仕事なんじゃないかと思いました。それで長野に戻って、人生かけてこの仕事をやりたいと思っているので、養蜂一本で一緒にやろうと父を説得したんです。それを受け入れてくれて、まずは父が専業でやっていけるようになり、その後、自分もできるようになりました。

(長岡さん)
自分は職業的なこだわりがぜんぜんなかったんですね。どんな仕事でもできるというか。実際にいろいろな職業を経験して、その仕事に自分の生き方を重ねてはいなかったんです。どんな業界でも楽しめると思っていました。

小金沢さんとは中学校からの同級生です。彼から、会社が倒産したので、地元に戻って養蜂をやるという話を聞いて、初めて自分の働き方についていろいろ考えました。最初は、養蜂ではなく、農業や畜産など広く調べてみたんです。どれも大変そうだというのは分かりました。でも、小金沢さんの父親の話を聞いて、心が動かされたんです。誰も傷つけない仕事、という点にも強く惹かれました。それで、自分も一緒にやろうと思いました。

養蜂ってどんなお仕事なのか教えていただけますか。

養蜂の仕事は、大きく分けると、蜂蜜を採ることと蜜蜂の管理になります。まず、巣箱の中に働き蜂が巣を作り、その中に女王蜂が卵を産み、それを働き蜂が温めます。タイミングを見計らって、巣脾(スヒ、蜜蜂が巣をつくる台)を増やして巣を大きくしていきます。巣脾の量と蜜蜂の数のバランスをとることが養蜂家の大事な仕事で、一群(一つの家族)ごとに見極める必要があるんです。人間が欲を出してどんどん巣脾を追加すると、蜂が卵を温める力以上のサイズになってしまって、群れ全体をだめにしてしまう。巣を大きくして蜂蜜をたくさん採りたい、という欲との戦いですね。

蜂の群れは、最初から女王蜂と働き蜂に分かれているわけではなくて、働き蜂の中から女王蜂が生まれるんです。ローヤルゼリーをたくさん食べた蜂が女王蜂になる。巣脾がいっぱいになってしまうと、群れを分けて出て行ってしまうので、そのタイミングを見逃さないようにして、残ってもらえるような仕掛けをします。蜂たちは、いわばうちの正社員ですから(笑)、逃げないようにしっかり見て、気持ちよく働いてもらえるようにします。花が咲く時期に、巣箱を二段に増やして強い群を作るのが理想です。その見極めが養蜂家としては悩ましいけれど、楽しいとも言えますね。

働き蜂は花を探して、ダンスでその情報を伝えて、みんなでその蜜を集めに行きます。その花が枯れるまで、基本的に同じところから集めてきますので、次の花が咲いて移動する前に採蜜すると単花蜜になるんです。他の花が近くに咲いていても、基本的には移動しないんですよね。家族単位で、その花が枯れるまではずっと同じ花から蜜を集めてきます。養蜂家は、巣の蜜を確認して、花の種類を判断しています。

おもしろいことに、毎年、違うところから蜜を集めてきます。集まった蜜をすぐに採ると、蜜の糖度がまだ高まっていない場合もありますし、糖度が高まるのを待っていると、他の花に移ってしまって蜜が混じることもある。その判断がやっぱりおもしろいんですね。

養蜂家は長野県が一番多いんです。北海道も蜂蜜の生産量が多いですが、大規模にやっているところが多くて、長野は個人や小規模がほとんどです。その中でも、佐久地方は養蜂にものすごく適しています。養蜂は標高600〜800mがちょうどいいんですが、佐久市はその位置にあります。水源にも事欠かきません。日照時間も長く、晴天率が高いので、本当に蜜蜂の生育に適しているんですね。

同時に、蜜を集めるアカシアの生育にも適しています。昔、砂防目的でたくさんのアカシアが植えられたんですが、それが千曲川沿いの下流から咲き始めて、そのまま上流へあがってきます。標高のずれからそうなるんですが、結果的にアカシアの蜜が長期間取れます。養蜂家にとって恵まれた環境です。
(ここで、お二人がアカシアの蜂蜜の瓶を並べ始めました。後ろに白い紙を置くと、それぞれの色の違いがはっきりと分かります)

その年の出来は自然環境に左右される

アカシアのハチミツは透明であればあるほど純度が高い、アカシアの割合が多いんです。違う花の蜜が入ると、少し濃い色になります。色が違うと味も変わってきます。透明で水のようなアカシアが取れると本当に嬉しくなるんです。

実は、去年は遅霜で花芽がやられてしまって、透明度の高いものが採れませんでした。そんなふうに、自然に左右される、思い通りにならないというところが難しさであり、同時に面白さでもありますね。


(さらに、養蜂家としての生き方について話が深まります)

養蜂家の特権は、早朝4−5時、蜜蜂が動く前に作業を始めると、バラ、桜など、花の香りを楽しみながら仕事ができることです。自然相手で楽ではないし、欲を出して蜂が全滅したりすると本当に心苦しいんですけれど、おもしろく、楽しい仕事です。

この仕事は自分との戦いですね。判断して、対応する。自分の判断が合ってるのか間違っているのかわからないけれど、判断して決断しなくちゃいけないという葛藤が常にあります。つい空の巣脾を足して巣を大きくしたくなりますけど、欲からは何も産まれない。群れが弱ると、自分に負けたと思います。

以前、台風の時に、川辺に置いている巣箱が全て流されたことがあります。心配しながら見に行ったら、本当に跡形なく流されて何も残ってなかった。自分はその場で震えるぐらい動揺して、現実が受け止められなかったんです。でも、父は、こんなさっぱり何もないと逆に気持ちいいねって言うんですよ。その言葉に自分は救われました。気持ちをいかに切り替えられるかなんですけど、自分の父親ながら、本当に尊敬しました。

お二人の話に引き込まれる会場

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
後編に続きます🕯

お楽しみに!

お知らせ
2023年冬に第5回目のイベントを計画しております。詳細は追って… :)) 


この記事が参加している募集

#イベントレポ

26,371件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?