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『マスク』を読んだこと


下平慶祐さんの短編小説『マスク』を読んだ感想を書きました。
作品はこちら。


1往復ずつ会話が増えるというフレーズがとても好きで、ふたりの距離が少しずつ近くなっていく情景が見えるよう。

彼は家に帰ったあとに、いったりきたりした会話を思い返してるんだろうな。
教室での会話をおさらいして、今日は何往復したとかカウントしてるのかも。一つ一つ確かめて、どきどきしたりやったーとか思ってみたり。なんとも瑞々しくて甘酸っぱい。

彼が正義感に動かされて声をかけたときに、彼女は何を思ったのかなと考えてみた。何を思うという以前に、初めて彼の存在に心を向けたんじゃないかな。そんな気がするというだけだけど、そんな気がする。あまりに直球な伺いと正直な表情が面白かったのじゃないかな。嬉しかったんだろうな。大きく笑ったという彼女の笑顔を思うとあったかな気持ちになる。

きっかけは、まあどうあれ、彼女はたくさん笑ってたんだろうし、第二章を始める気満々だったと思いたい。叶わなかったけど、それくらいに楽しさやまだ見たことのないさまざまなことにあふれた日々だったんだろう。
きらきら、きらきらとなんだかとても目映いなあと思う。

彼が彼女の包帯を見て声をかけたときも、夏祭りの誘いに頷いたときも、後に彼女の家のドアベルを鳴らしたときも、つい動いてしまったというかんじがして、
そういう衝動が起こる瞬間というものに心が引きつけられます。


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