真木ひろみ|MAKIHIROMI
満月堂珈琲店にやってくる人々について書き留めたいこと。
基本的に、私はあまり朝に強い方ではない。 手帳に自分の朝の体調と、それから気分を書き込むことにしているが、たいていは「体調=悪い/気分=普通」「体調=普通/気分=悪い」「体調=悪い/気分=悪い」の繰り返しである。(今確認した。) その日はどちらかというと「体調=普通/気分=悪い」と書き込んだ朝で、例によってスロー・スタートとなった。 満月堂珈琲店(これが私の店の名前だ。)の前では様々な種類のハーブを育てている。ハーブの生育は季節によって著しく、特にだんだんと温かくなるころ
諸事情あって、夜の海に入ることがあった。 素足で砂浜を踏み、波打ち際から海のなかへ入る。 その時点ですうっと体のなかの大切なものが抜け落ちようとしている感覚があらわれる。 そのまま膝下まで海に入ると、いてもたってもいられないくらい心臓が高鳴り、ああ、これが恐怖だったと思い出す。 浜辺に向かって立つと、後ろから何か大きいものが手を伸ばして自分を引きずり込もうとしているのだという幻想に囚われる。 自分は今、恐怖を感じているのだ。