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つぶやき 初めてのウド(後編)

前編より続く)
 スマホに「ウド、ベーコン」と入力してインターネットでレシピ検索したら、次々にレシピが現れた。

「ウドとベーコン、あるんじゃん!」
 その中でいちばん上に出てきた「ウドとベーコンのバター醤油炒め」を作ることにした。作り方は簡単だ。

① ウドは皮を剥き、斜め切りにする。
② ベーコンは適当な幅に切る。
③ ベーコンを先に炒め、出てきた脂をいったん拭いてからバターを敷き、ウドを入れて炒める。
④ 醤油で味を調える。

 いただいたウドは「とても新鮮で皮を剥かなくても食べられる」とのことだったが、3本のうち1本は軽く剥いてみた。

 ためしに切れ端を生のまま齧ってみたら、独特の苦みとウド特有と思われる風味が口の中そして鼻腔に広がって衝撃的だった。が、嫌な感じはまったくない。春を待っていた地球のエネルギーが、体を突き抜けていく感じ。いままで経験した食材のどれにもなかった、爽やかで力強い感覚に驚いた。 

 さて、フライパンにベーコンを入れ――脂身の少ないタイプだったので少しだけオリーブオイルを敷いた――軽く炒めてから、バターを入れてウドを加える。料理酒を入れて蓋をし、加減をみる。ウドは、火が通ると透き通ってくるようだ。火が通りすぎてもよくないだろう。適当なところで追いバターをし、醤油を少しだけ垂らす。わが家の醤油は、郷里の醤油屋「サクラカネヨ」の薄口醤油で、炒め物もほぼこれ。

 これだけだと彩りがいまいちなので、小口切りの万能ねぎを散らしたが、ウドの風味のじゃまにならない程度。あればキヌサヤなどのほうがよかったかもしれない。

 できたてをいただく。さっくり火が通ったウドからは、香りがよく立つ。ベーコンとの相性もいい。もっと脂身の多いベーコンでもよかったかもしれない。ウド自体淡白な食材だし薄めに味付けしてあるので、バクバク食べられる。本来なら「春の香りと味わい」として大切に、しみじみといただくべきなのだろうが、ウドが伸びる勢いに急かされてるみたいに、箸が進む。

 それにしても、不思議な香りと味わいだ。これまでまともに(?)食べたことがない食材なのに、春と、春が運んできたエネルギーを確かに感じる。「ああ、地面の下でじっと春を待ってたんだなぁ」と。ウドなんて全然身近じゃなかったのに、この感覚は何だろう? 日本人だから?

 栃木からやってきたウド。おいしさとともに、貴重な体験をもたらしてくれた。おそらく、お店で売っているウドを同じように調理しても、同程度の感動はないかもしれない。でも、来年の春ウドを見かけたら、また作ってみようかという気になった。

 今年は、この1回の経験でもう十分満足したので。

※写真左の「かき菜」は、おかか和えとごま和えの2通りにしてみた。
補足:ウドをくださったのは「ワイン居酒屋バンビーノ」のお二人です。

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