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つぶやき 初めてのウド(前編)

 栃木出身の知人からウドをいただいた。どんな関係かを語り始めると長くなるので、そこはとりあえず置く。80歳を超える実家のお父さんはまだ畑仕事をされていて、ときどき野菜などを送ってくれるのだという。知人は飲食店経営なので、それらの野菜を使った料理を出すことがあり、わたしもお店でいただいたことがあるが、今回初めて未調理の状態でもらった。

 それが、ウドだった。

 ウド。鹿児島出身のわたしには、まったくと言っていいほど馴染みのない山菜である。正確には「だった」。たぶん中学生の頃には「ウドの大木」という諺を知ってはいたが、ウドがなんなのか、なぜ「木偶(でく)の坊」のような意味で使われるのか、まったくピンと来なかった。

 やがて首都圏で暮らすようになってからは、季節になるとタラの芽やコゴミなどと同じく春の山菜として店先に並ぶのを見かけるようになったものの、味の予想がつかないし、アク抜きが必要そうなのもハードルが高く、もしそこまで手をかけても「おいしい!」料理になると思えず、手を出せないままに過ぎてきた。

 とは言え、会席料理などで、ウドの酢味噌和えがきれいな小さい器にちょこっと盛られているのを食べる機会はあった。酢味噌がかかった白いぺらぺらしたものをしみじみ眺め、「これがウドか」と口に入れても、山菜だと言われればそうだし、あまり味のしないふつうの野菜のようにも思えた。そうやって、人生は60年ほども過ぎてしまった。

 そして突然ウドはやってきた。正直なところ、手に余る気がした。どう食べるのがいいか知人(料理担当の旦那さんのほう)に聞いたら
「フリッターがおいしいですよ。あと、一般的なところではさっと湯がいて酢味噌和えとか。新鮮だから皮は硬くないけど、気になるなら薄く剥いて」。

 揚げ物は、基本やらない。油の処理が大変だからだ。家で使っている甘口の鹿児島麦みそで作る酢味噌に合うのかもわからないし、そもそも調合がめんどうだ。困った。しかし、せっかくなら新しいうちに食べてあげたい。

 ふと、揚げ物にできるなら油との相性はよいだろう、と閃いた。そうだ、ベーコンがあった。ベーコンと炒めたらどうか。
後編へ続く)

※写真はいたいだいたウド。菜物はウドといっしょにいただいた「かき菜」。

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