「ロマンティックあげない」

松田青子の「ロマンティックあげない」読了。

読みたい本がありすぎて、普段あまり新刊本には目をむける余裕がないのですが、翻訳家エッセイマニアの私としては見逃すことのできぬ一冊。そしてビジネス街のど真ん中にある弱小書店(だけど絵本も美術もかなり充実していて信頼をおいている書店のひとつ)で平積みされていて「おぉ」と思い、即購入しました。(タイトルはおそらく、かの有名なアニソン「ロマンティックあげるよ」のアンサー?)

翻訳家の書く文章はおしなべて面白いのですが、この本もその例に漏れず非常に面白かったです。何度か吹き出しました(フィギュアスケートのくだりと、こけしのくだり)。ちなみに翻訳家の書く文章が面白いのは、「翻訳」という作業を通して文章を吟味し、味わい尽くし、研究し、360度の視点から眺めたり撫でたりつついたりしているからだと思っています。

松田青子さんのエッセイは、デトックス岸本佐知子、とでもいうのでしょうか。岸本佐知子+山崎まどか÷2とでもいうのでしょうか。なんとなく、筆者自身も岸本佐知子を意識している感がありました。しかし、岸本佐知子の変態性はもはや殿堂入りと言っても過言ではなく、しかもあれは天賦の才であり先天的な能力だと思っているので、まあ要するに完全に別ものでした。

アメリカのポップスとフェミニズムの関連性についての記述は非常にわかりやすく、確かに音楽って人のメンタリティーに相当な影響を及ぼしているなと納得させられましたし、アメリカンポップスの持つメンタリティーを初めて知って驚きました。私も今日からテイラースウィフト聴こう!!!という気持ちがみるみるわいてきた。

これを読んで、考えさせられるとか、持論がより深まるとか、新しいものをクリエイトしたくなるとか、そういったことは全くないのですが、ただもう単純におもしろく読めて、映画や音楽の楽しみが少なからず増えることは間違いないと思います。

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