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投資家は、風が吹いた直後に桶屋の株を買う

米フロリダ州の死亡率は全米で最も高いから、フロリダは居住地として極めて不健康なのか?

いいえ。フロリダ州の住民が、他の州よりも高齢なだけです。

サムエルソンの有名な教科書『経済学』で紹介されている、こうした因果関係と前後関係の間違いは、金融市場や資産運用の世界ではわりと軽視されている気がします。例えば、毎日の株式相場の解説は、確かな因果関係を踏まえているわけではなく、単に前後関係から類推しているケースが多いです。金利や為替、商品市況の解説についても同様です。

ユーロ高が進んできた一因がドル安圧力の高まりだ。米国のゼロ金利政策が長引くとの見方から、米長期金利が急低下。投資家がドル売りに動くなか、復興基金の創設で合意したユーロ圏が投資マネーの受け皿になった。

上記のように、ユーロ高の理由として、より多くの投資家が納得するであろう解説が、新聞などに掲載されます。それが正解かどうかなんて、誰にも分かりません。

因果関係が証明できない以上、多くの投資家は、先行・遅行の関係(前後関係)が安定的に成立しているかどうかに関心を寄せます。「風が吹いたら桶屋が儲かる」と確信していれば、投資家は、風が吹いた直後に桶屋の株を買うでしょう。

そこで私が注目しているのは、ユーロ・ドルレートと原油相場(WTI期近物価格)の関係です。最近、ユーロ高とともに原油高も進行しているのですが、過去を見ると、ユーロ相場(対ドル)と原油相場は概ね連動しており、かつユーロ相場が原油相場にやや先行して動く傾向が見受けられます。

原油高には原油高の理由があります。ユーロ高も然りです。ただ、それを否定する理由も同時に存在します。以下の記事にあるように、多くの経済学者はインフレの発生に懐疑的だそうです。もしインフレが発生しないのであれば、さすがに原油相場の上昇は考えにくい。しかし現実に原油相場は上がっており、その先行指標であるユーロ相場も上がっているわけです。

「相場のことは相場に聞け」が必ずしも正しい格言だとは思いません。しかし、インフレを意識した資産運用スタンスに変更する必要性が高まっている、と多くの投資家が考えれば、インフレを前提とした相場は実現してしまいます。もしインフレを警戒するのであれば、ユーロが下落に転じるまでは原油を買っておけ、ということになりそうです。

お読みいただき有難うございました。 小難しい経済ニュースをより身近に感じて頂けるよう、これからも投稿してまいります。