どんな高級外車よりもあなたの白い軽自動車が

ガソリンスタンドでアルバイトをしていると、色々な車が来る。

改造されて、音がうるさい車

車高を下げすぎて、洗車機に入れなくなった車

社長さんの高級で貴重な車

スポーツカー

無心で仕事をしなくてはならないのだけど、お高そうだな、格好いいな、と感想を持ってしまうこともある。

しかし、スタンドに入ってくると、どんな車よりも私の心がどきどきする車がある

白くて、小柄で、ライトをいじっていて、ナンバーが3桁の軽自動車

高校を卒業してから久しぶりに二人で会うときも、

近くに遊びに行くときも、

想いを伝えてもらうときも、

初めてふたりの唇が触れ合うときも、

一緒にお弁当を食べたときも、

遠くで暮らすのが悲しくて泣いたときも、

私たちは、あの軽自動車の中にいた。

車なんて、この世の中に何台もある。

高級な車も、カッコいい車もたくさんある。

でも、私は、あの軽自動車がいちばん愛おしい。

どんなにいいものでも、

思い出という付加価値があるものには勝てないよね。

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