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常石敬一氏が訴えた戦争責任に関する不誠実な姿勢の積み重ねと、「法の支配」を主張する資格はない

 松本サリン事件などで、テレビでコメントし、『消えた細菌戦部隊 関東軍七三一部隊』などの著書がある常石敬一氏が亡くなった。

 『消えた細菌戦部隊』は理系の学者の常石氏らしく、薬品や細菌・病名など実に事細かに説明がなされ、そこには戦慄を覚える731部隊の活動が記されている。部隊本部の建物はハルビンから南へ約25キロのところにある平房に造られた。目立たないところに建設されたのは、細菌兵器という軍機に関わる開発をしていたということもあったが、毎年500人から600人の人体実験が行われ、被験者が死ぬまで実験は繰り返された。

 非人道的な、確実に戦争犯罪と言える活動を行っていた731部隊だが、常石氏は日本政府が確認しているのは、かつてその部隊が中国東北部で活動していたということだけであると述べている。 1982年4月6日に厚生省は衆議院の内閣委員会に「関東軍防疫給水部略歴」という数ページの文書を提出したが、そこに書かれているのは、部隊の正式発足が1936年であり、その後再編強化され、敗戦時には支部も含めて約2300人の隊員がいたということだけだった。中国各地やノモンハン事件での細菌戦の実行や部隊本部での大がかりな人体実験には一切触れていない(『消えた細菌戦部隊』266~67頁)。日本政府は敗戦の時に731部隊に関する記録は廃棄されてしまったので、その活動の詳細については知らない、言いようがないという姿勢に終始しているようだ。

 しかし、常石氏は、米軍が大量の資料をもち帰り、1950年代の末か、60年代の初めに日本に返還したと書いている。その資料は日本の官庁のどこかに、あるいは慶応大学(おそらく医学部あたりだろうが)に保管されているのだそうだ。常石氏は、731部隊の日本政府の不誠実な姿勢の積み重ねが戦争責任についての日本に対する国際的な不信感を醸成していることがまだわからないのかと強調している。 第731部隊長の石井四郎中将は戦後いち早く日本に帰国し、新宿区若松で旅館業を営んでいたが、新聞記者の追及に遭うと姿をくらました。石井中将関係の人々は日本に帰国すると、戦争責任を問われることなく、GHQに留用(一定期間雇用)されることになる。松本清張の推理では第731部隊、あるいは第100部隊(関東軍軍馬防疫廠)が研究していた生物・化学兵器の知識を米軍が来るべき局地戦(朝鮮戦争ということになったが・・・)に利用しようと考えていた。

 昭和23年に毒物で12人が殺害された東京椎名町の帝銀事件の真犯人も731部隊の関係者という説もあったが、その追及も厳しく行わなかったのは米軍にとって不都合な事実があったからだと言われている。ドイツの大量破壊兵器開発者に対する追及が厳格に行われたのに対して、日本の関係者に対する追及が緩かったのは、米軍が731部隊の研究成果を独占したからだとされている(松本清張の『日本の黒い霧』などを参照)。

 日本は2003年のイラク開戦で、イラクが生物(細菌)兵器などの大量破壊兵器を保有していると米国のイラク攻撃を支持したが、ついにイラクの大量破壊兵器は見つからなかった。真っ先にイラク開戦を支持した小泉純一郎元首相は2021年3月に、脱原発について記者会見を行った際に、査察を受けなかったイラクが悪かったと開戦から20年近く経ってもイラク戦争支持を正当化した。イラクが査察を受けなかったというのは事実誤認も甚だしく、イラクは1990年代から国連による査察を受け続け、UNMOVIC(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)がその開発や保有を証明することができず、また国連の大量破壊兵器の査察に参加したスコット・リッターも1990年代に国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)でイラクの大量破壊兵器の査察を行った結果、イラクには大量破壊兵器は存在しないと断言していた。

小泉純一郎氏は責任をとるべきですね。イラクでは50万人とも60万人とも言われる人々が亡くなっています。彼は「刺客選挙」などを行い、日本の民主主義を壊しました。 https://twitter.com/ayukero52/status/625123388294475777

 岸田首相や林外相はウクライナを侵攻したロシアや南シナ海に進出する中国の脅威について「法の支配」という言葉をしきりに使うが、過去の重大な戦争責任に向き合うことがなく、イラク戦争という国際法に照らして無法な戦争を支持した責任を問うこともない政府に「法の支配」云々を言う資格はないだろう。

戦争責任にきちんと向き合わず、イラク戦争を支持したり、イスラエルの占領に沈黙したりする日本政府には「法の支配」云々を言う資格はないと思います https://www.youtube.com/watch?v=BxuUsfNdPLs


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