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パレスチナ国家創設否定を議決したイスラエル国会と、パレスチナ国家を承認しない日本

 17日、イスラエル国会(クネセト)は圧倒的多数で、パレスチナ国家創設を拒絶する決議を通過させた。この決議はネタニヤフ首相の訪米に合わせたもので、2国家共存を主張するバイデン政権をけん制する目的がある。ネタニヤフ首相の与党が賛成したばかりでなく、ネタニヤフ首相の政敵と見なされ、米国からも信頼されるベニー・ガンツ元国防相も賛成票を投じた。このように、イスラエルは今後のパレスチナとの和平交渉でパレスチナ国家承認を議論しない姿勢を見せた。

昨年9月国連総会で ネタニヤフ首相の見せる地図にはパレスチナはない https://alaska-native-news.com/netanyahu-shows-map-of-new-middle-east-without-palestine-to-un-general-assembly/69931/

 他方、メイラヴ・コーヘン・イスラエル社会平等相は、ガザにおけるホロコーストを誇りに思うと発言した。80年先、イスラエルの若い世代はガザのホロコーストを正しかったと思うだろうと述べた。コーヘン社会平等相はイェシュ・アティッド(未来があるの意味)という中道政党に所属するが、ナチス・ドイツのホロコーストという極めて非道な経験をしたイスラエルのユダヤ人たちはいつの間にかホロコーストを肯定するようになっている。

 イスラエルの国会議員たちがパレスチナ国家を拒否する理由は、イスラエルの地の中心とも言えるところにパレスチナ国家を置くことは、イスラエル国民の安全上の脅威になり、アラブ・イスラエル紛争を恒常化させ、地域の不安定要因になる、ハマスがパレスチナ国家の権力を掌握し、過激派の拠点をつくり、テロに報酬を与えるものだとイスラエルの議員たちは考えている。

 1993年のオスロ合意は、パレスチナ独立国家への道筋を示すものであったし、民族自決権は国際法の常識のように認められている。イスラエルはこの国際法の常識とも言えるパレスチナ人の民族自決権を一向に認めようとしない。

 イギリスとフランスは、第一次世界大戦でオスマン帝国に勝利すると、そこに住んでいたアラブ人たちの地域を国際連盟の「委任統治領」という新たな植民地にした。パレスチナを手にしたのはイギリスだったが、国際連盟規約では、現地に住む人々が独立国家となるまでアドバイスと援助を与えるということになっていた。イギリスが委任統治していたイラクは1932年に独立国家となったが、他方、パレスチナでは、パレスチナ国家が存在しないどころか、民族自決を主張するための根拠となる土地もイスラエルによって次第に浸食されつつある。

 パレスチナを委任統治したイギリスは17日、チャールズ国王がスターマー新首相の施政方針を読み上げ、パレスチナ・イスラエルの2国家共存による和平実現を確認した。

 今年になってヨーロッパのスペイン、ノルウェー、アイルランド、スロベニアがパレスチナ国家を承認した。これで国連に加盟している193カ国のうち147カ国がパレスチナ国家を承認したことになった。

グローバルサウスの多数の国は国際司法裁判所でのイスラエルに関する南アフリカの立場に賛成だ ドイツだけがイスラエル支持

 日本政府は、パレスチナ・イスラエルの当事者間の交渉を通じた「二国家解決」を支持するとして、パレスチナ国家を承認していない。すっきりしない理屈だが、今回のイスラエル国会の動きを見ても当事者間の交渉でイスラエルがパレスチナ国家を認める様子はまるでなく、可能性がないものを支持するというのはまったく無責任だ。「当事者間の直接交渉」を強調するのは米国バイデン政権も同じだが、これではパレスチナ人たちの国家創設という希求は見捨てられたと同然だ。

 米国に追従して日本がパレスチナ国家承認を行わなければ、半永久的に承認の機会を失うことだろう。米国はトランプ政権時代、イスラエルの一国支配を事実上認め、テルアビブにあった米国大使館もパレスチナが首都と主張するエルサレムに移転してしまった。米国が真摯に当事者間の交渉を期待している様子はなく、またパレスチナ国家を承認する気配も毛頭感じられない。その米国の姿勢に日本政府は追随している。

本当に言ったのだろうか https://x.com/sahouraxo

 パレスチナ国家承認には日本の良識が問われている。パレスチナ国家承認も米国追従では日本は、岸田首相が重視するアラブ・イスラム諸国も含むグローバルサウスの信頼や敬意を得られないことは明らかで、グローバルサウスを巻き込んで反中ロ同盟を築くことなど所詮絵に描いた餅だ。グローバルサウスはロシアの侵攻を非難し、イスラエルのガザ攻撃を問題にすることがないG7の偽善にとっくに気づいている。

表紙の画像はイタリア・ローマ
6月1日
https://www.commondreams.org/news/is-there-a-palestinian-state



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