在日パレスチナ人が説く「一人の小さな手」
在日パレスチナ人のモハメド・ファラジャラさん(27)がテレビ・ニュースでガザの問題は一人一人が関心をもって、たとえ小さくても声を上げていくことが肝心で、それが国際社会の大きなうねりになればと語っていた。
イギリス人のアレックス・コンフォートが作詞し、フォーク歌手のピート・シーガー曲をつけた「ひとりの手」は公民権運動やアパルトヘイトに抗議する人々の間で頻繁に歌われ、政治犯の逮捕・拘束に強く抗議した。
「ひとりの手」(One man's hands)
一人の手で牢屋は壊せない
二人の手で牢屋は壊せない
でも二人と二人 50人が百万人になれば
その日が来るのが見えるだろう
その日が来るのが見えるだろう
トーケンズなどの歌で知られる「The Lion Sleeps Tonight (ライオンは寝ている)は南アフリカに起源をもつ歌と見られている。トーケンズのヴァージョンを聴けばああ、あの曲かと思われる方も多いかもしれない。歌の動画は下にある。
https://www.youtube.com/watch?v=SIKMM2skLeM
この歌は1939年にソロモン・リンダという南アフリカの歌手が作曲したもので、元々は「Mbube (ム・ブーベ〔ライオン〕)」というタイトルだった。この歌も1952年にピート・シーガーが英語の詞をつけてヒットしたが、シーガーはズールー王国最後の王シャカをライオンに見立てて、ヨーロッパがアフリカで植民地政策を始めた時の様子を表現し、帝国主義政策を非難した。
「ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる。(A dream you dream alone is only a dream. A dream you dream together is reality.)」 -ジョン・レノン
シーガーが作った曲の中でアメリカの公民権運動や反アパルトヘイト運動の中で歌われたものには「ひとりの手」の他にも「天使のハンマー」「ターン、ターン、ターン」などがある。「天使のハンマー」はPPMも歌っていたが「それは正義のハンマー、それは自由の鐘、それは兄弟姉妹の間の愛に関する歌、この地全体のための」と歌われる。
「ターン、ターン、ターン」は旧約聖書の「伝道の書(コレヘトの言葉)」3章の一節にメロディーをつけたもので、
愛するための時があり、憎しむための時がある
戦争の時があり、平和な時がある
抱擁するときがあり抱擁を拒む時がある
平和のための時
それはまだ遅すぎではないのだと
私は声を大にして言うのだ
http://www.tapthepop.net/roots/49548
というもので、平和への想いが歌われる。イスラエルで極右を含む政権が成立して、その中の「ユダヤの力」という極右政党はパレスチナ人から投票権と医療保険をはく奪することを提唱する。完全に南アフリカのアパルトヘイト体制と同様だ。みんなが集まって声を大きくすればナショナリズムやアパルトヘイトの壁を壊し、パレスチナでの平和を実現することができる。
モハメド・ファラジャラさんと同じニュースの中で、フェイスブックの友達でもある在日イスラエル人のダニー・ネフセタイさん(66)はイスラエルでは学校教育の中でもホロコーストなどのユダヤ人の受難の歴史が教えられ、国を守るためには戦争もやむを得ないと考えていたが、そんな考えが変わったのは、平和な日本で長年暮して母国を外から眺めたことによってだった。2008年のイスラエルのガザ攻撃で子どもたちが多数犠牲になったことで、武力では何も解決できない、何の前進もないと思うようになり、話し合いによる解決を訴えている。
中東をはじめ国際社会の一人一人が武力や暴力が無意味であるという思いを共有できれば、中東にも平和が訪れることがいつかはあるだろう。中東を訪ねて現地の人から中東は紛争ばかりだと自嘲的に言われることがあるが、「東南アジアも30年、40年前は紛争や流血ばかりだったが、今では安定して発展があるではないか」と言うと納得されることがある。いつか中東も紛争を乗り越え、平和な時代が訪れるには一人一人の平和を希求することが重要であることは言うまでもない。
──もう自分の国だけの平和を求める時代は終った。ほかの国が平和でなくて、どうして自分の国が平和であり得よう。 ―井上靖・硫黄島「鎮魂の丘」の碑文
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