ヨーロッパ帝国主義が盗みまくったエジプトの誇りと文化遺産
小池百合子・東京都知事の学歴詐称疑惑をめぐってやはり東京都知事を務めたことがある舛添要一氏が小池氏はもう政界から去ったほうがよいと✕に書き込んだ。舛添氏は２０２０年に小池氏の疑惑がもち上がった時に「カイロ大学が小池都知事が１９７６年に同大学を卒業したと声明。卒業証書や卒業に至る経過、成績表は公開せず。先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで（小池氏は）使う。・・・エジプトという専制国家ならではの腐敗の極みだ。証拠も出さずに○○が卒業生だと声明を出す先進国の大学は絶対にない」とツイートした。
「先進国」「専制国家」という表現を使うところに舛添氏のエジプト観が表れているようだ。その舛添氏が留学をして、彼が「先進国」と考えるフランスをはじめヨーロッパ諸国はエジプトの文化遺産を盗みまくった。舛添氏が「腐敗の極み」という言葉を使うならばヨーロッパ帝国主義の歴史をもつ国々も腐敗や非道の極みを中東イスラム諸国に対して行ってきた。
篠田航一著『盗まれたエジプト文明 ナイル５０００年の墓泥棒』では、エジプトの古代遺跡の盗掘の歴史や、盗掘団の村の紹介、いかに西欧世界がエジプトの古代遺産に関心をもち、それを盗みとって本国に持ち帰ったかなどについて書かれている。ローマ帝国はエジプトのオベリスク（神殿などに建てられた一種の記念碑のようなもの）を略奪しまくり、その盗まれたオベリスクは、ローマのポポロ広場や、トルコ・イスタンブールのスルタン・アフメト広場などに置かれている。ヨーロッパでは、ミイラに薬効があると信じられ、切り刻まれた病人や病弱な人の薬として１３世紀から１７世紀あたりまで使用され、ミイラの盗掘とヨーロッパへの売買が進んでいたらしい。
１８世紀末から１９世紀初頭にかけてエジプトに遠征したナポレオンは２００人近くの科学者を引き連れて学術調査を行わせた。その結果生まれたのはエジプトに関する百科事典ともいえる『エジプト誌』である。ナポレオンのエジプト遠征の結果、１７９９年にフランス軍兵士がエジプト北部の町ロゼッタで「ロゼッタ・ストーン」を発見するが、その直後にフランス軍はイギリス軍に降伏したために、「ロゼッタ・ストーン」はイギリス軍に渡り、現在は大英博物館の「目玉」として入館後間もないところに展示されている。このロゼッタ・ストーンがエジプトの神聖文字（ヒエログリフ）解読のカギとなった。大英博物館やルーブル美術館には中東に関する展示物が多くあるのはヨーロッパ帝国主義の強奪・略奪によるものだ。
映画「インディ・ジョーンズ」の主人公にもたとえられるイタリア人探検家ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルツォーニ（１７７８～１８２３）は、ルクソールで発見された「ラムセス２世の（若きメムノン）」の胸像の搬出・輸送に成功し、これも現在大英博物館に展示されている。また、日本人観光客にも人気があるアブシンベル宮殿も彼は発見した。
エジプトはアラブ世界にあるが、エジプト人たちは、古代から続く歴史や古代遺産に特別な誇りをもっている。古代から現在まで続くエジプトの盗掘は、人類最古の歴史を誇り、現在でも想像を絶するような巨大な建造物をつくり上げ、ツタンカーメンの黄金のマスクに見られるように支配階級は贅沢な文化を築いていたエジプト古代に特別な価値があるから続いて行われているのだろう。
東京歯科大学市川総合病院の眼科医師として勤務するエジプト人のオサマ・イブラヒム氏は日本で医学を学ぶ道を選択したのは、日本は眼科治療では世界のトップレベルにあり、幼い頃には空手をたしなんでいたことや、日本は治安もいいし、医療技術も最先端であることなどの理由だった。日本では差別を感じたことがなく、日本ではチャレンジ精神と楽しむ姿勢があればおおいに可能性を広げることができると考えている。小池氏の疑惑からあたかもエジプト社会全体が腐敗にまみれているかのような誤解や偏見をもってはならないことは言うまでもない。
アイキャッチ画像は大英博物館のエジプト・コレクション
https://www.tripadvisor.co.uk/AttractionProductReview-g186338-d11453769-British_Museum_Highlights_Private_Tour_in_London_including_the_Rosetta_Stone-Londo.html
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