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ガザ空爆の非情 ―ハマスの戦意をそぐために行われる空爆は市民の犠牲を伴い、戦争犯罪でしかない

イスラエルはハマスの奇襲攻撃を受けて直ちに空爆を開始した。イスラエルは10月12日、7日から始まる6日間にガザに6000発、総重量にして4000トンの爆弾を投下して1400人の犠牲をもたらした。ちなみに1945年3月10日の東京大空襲の爆弾は1665トンだった。ガザの面積は365平方km、東京23区の面積は618.8平方kmだから東京23区の半分強の狭い土地にイスラエルは6日間で東京大空襲の2倍半の爆弾を投下したことになる。イスラエルの空爆がいかに凄惨なものかがうかがえるが、ガザでは91%の子どもたちが2021年5月のイスラエルの空爆によってPTSDに罹患した。

 イスラエルは攻撃による子どもたちの犠牲もいとわないで攻撃を行っている。ガザの行政機関の関係者の話では10月12日までの間の空爆による1400人の犠牲のうち子どもが447人、女性が248人、医療従事者10人であった。この空爆で338,000人のパレスチナ人が家を逐われ、避難を行った。1000戸以上の家が完全に破壊され、560戸の家が大きく損壊した。水や食料の供給も断たれ、ガザの子どもたちの健康に及ぼす影響もますます深刻になっているが、イスラエルはさらに地上侵攻を行う構えでいる。

イスラエル軍にミサイルを撃ち込まれた建物の前で、天を仰いで悲しむ男性=ガザ、2021年5月12日 https://mainichi.jp/articles/20210529/dde/012/030/001000c

 空爆が人道に反するのは、戦闘員と非戦闘員などを区別することなく無差別に攻撃するからで、戦争犯罪に相当する行為だ。戦時国際法では、非戦闘員は保護対象であり、これを無視して危害を加えることは戦争犯罪である。空爆の非人道性はパブロ・ピカソの有名な作品「ゲルニカ」によっても表現された。ドイツ空軍を主体とするゲルニカ爆撃は、敵基地そのものを攻撃する「戦術爆撃」に対して、前線の基地ではなく、後方の市街地を無差別に空爆して、一般市民に恐怖を植えつけ、敵の戦意をそぐことを目標とされた「戦略爆撃」の最初の例とされている。これをイスラエルに置き換えれば、ガザを無差別に攻撃することによって、パレスチナの武装勢力にイスラエルを攻撃する意欲を喪失させるということか。

写真版 東京大空襲の記録 (新潮文庫) 文庫 アマゾンより

 イスラエルのガザ空爆が当初からガザ市民の殺害を意図するものであることは、たとえば2008年2月にイスラエル軍がガザ空爆を継続する中で、ハマスがロケット攻撃で応酬すると、オルメルト政権のマタン・ヴィルナイ国防副大臣はロケット攻撃を停止しなければ、ガザの「ショア(Shoah)」になると発言した。「ショア」とは、ユダヤ人の言語ヘブライ語で「滅亡、壊滅」を意味する言葉で、特にナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅計画をイスラエルでは「ショア」と呼んでいる。

 また、2012年11月に、アリエル・シャロン元首相の息子のギラド・シャロン(1966年生まれ)が「エルサレム・ポスト」紙に寄稿し、「イスラエルは原爆が投下された後の広島のようにガザをペチャンコにすべきである」と訴えたことがある。さらに、イスラエルの副首相だったエリ・イシャイ(1962年生まれ)はガザを中世(the Middle Ages)に戻せ、そうすればイスラエルは40年間平穏になると主張した。(「ベルファスト・テレグラフ」[2012年11月20日])。

 これらの発言はイスラエルの軍事力を背景に、ガザ住民の生命など考慮することなく、ガザを徹底的に破壊することを意図したもので、言うまでもなくナチス・ドイツのホロコーストと同じ発想と言える。

映画「ショア」 ナチスの虐殺と同質のことがガザで起ころうとしている https://www.cinra.net/article/review-20150223-shoah



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