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アメリカの標的暗殺とイスラエルのアパルトヘイトを非難したアメリカの大統領 ―トランプ暗殺未遂は「アメリカと正反対」ではない

 ドナルド・トランプ前大統領の暗殺未遂事件について「ニューヨーク・タイムズ」は、「アメリカとは正反対だ(The Attack on Donald Trump Is Antithetical to America)」という見出しの記事が出た。アメリカの自由や民主主義の価値観とは真逆ということを言いたかったのかもしれないが、暗殺されそうになったトランプ氏は2020年1月にイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官の暗殺を指示したことがある。標的殺害はアメリカの対テロ戦争中に数多く用いた手法だった。

ソレイマニ司令官がアメリカ人を殺害したことはない。トランプの妄想だ。 https://www.axios.com/2020/01/03/trump-tweets-iran-qasem-soleimani-strike

 ソレイマニ司令官の殺害はイラク・バグダードで行われ、この殺害がイラクの主権を侵害し、裁判も経ないで行われた超法規的措置であったことは言うまでもない。国際法の観点からも許容されるものでなかった。トランプ大統領はソレイマニ司令官のことを「テロリスト」と形容したが、「テロリスト」は標的殺害を行うトランプ大統領のほうだった。ソレイマニ司令官はイラクやシリアでのISの制圧に功績があった人物で、その意味ではアメリカの目標にもかなう活動を行っていた。

 トランプ氏暗殺未遂の背後にイラン政府の暗躍があると、CNNなどアメリカのメディアは伝え、それをそのまま日本のメディアが紹介している。こうした報道によってアメリカ人はともかく、日本人の対イラン観まで歪んでしまうことに懸念を覚える。かりにあったとしても先に暗殺を行ったのはトランプ氏のほうで、ソレイマニ司令官の暗殺などとともにイランの関与を報じるメディアはない。

 大統領関係者だけでなく、アメリカではロバート・ケネディ、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、マルコム✕、ジョン・レノンなど勇気ある、正当な言論を行った人々が暗殺されている。アメリカはインディアン戦争で数百万人の人々を殺害して建国された国で、また世界の武器の40%はアメリカで製造され、ガザでジェノサイドを行うイスラエルにも武器を輸出している。暗殺はアメリカと正反対ではなく、アメリカ政治・社会の文化そのものという気がしている。

ジョン・レノンも暗殺された https://www.pinterest.jp/pin/653796070919077421/

 ドローンによる標的殺害の回数を増やしたのはオバマ政権だった。パキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)で、オバマ政権が発足してから2012年11月末までに無人機(ドローン)を使った攻撃は6倍に増加した。この「標的殺害」について、ジミー・カーター元大統領は「人権分野で世界の主導的役割を果たしてきた米国が世界人権宣言30か条のうち10か条以上に違反している」と強く批判した。ドローン攻撃の増加によって、パキスタンでは2012年にピュー研究所が行った調査では、米国をパキスタンの味方よりも敵と見る」という考えが74%にも達し、2009年の64%から上昇した。

アメリカ合衆国ジョージア州アトランタにある「カーターセンター」には、日本の寺院で見かける梵鐘(ぼんしょう)が展示されています。実はこの梵鐘が縁となり、元アメリカ合衆国大統領ジミー・カーターさんと、広島県の北部に位置する三次市の小さな町・甲奴町との交流が始まりました。この交流は30年以上続いています。 https://hiroshimaforpeace.com/the-bell-of-peace-as-a-symbol-of-peace-that-connects-hiroshima-with-former-u-s-president-jimmy-carter/

 過日、ケネディ大統領がパレスチナ政策に公平なスタンスだったということを書いたが、さらにイスラエルのパレスチナ政策を「アパルトヘイト」と非難したのはジミー・カーター元大統領だった。ジミー・カーター大統領は『カーター、パレスチナを語る--アパルトヘイトではなく平和を』(邦訳は2008年出版)と題する本を著し、米国内の親イスラエル・ロビーから激しい反発を招いたが、イスラエルには現にアパルトヘイト体制が存在する。

楽天ブックスより

 少々古いデータだが、イスラエルの「ハアレツ」紙がイスラエル人500人余りに行った世論調査によれば(2012年10月23日付)、回答した3分の2以上のイスラエルのユダヤ人が、ヨルダン川西岸がイスラエルに併合された場合、パレスチナ人には選挙で投票する権利を否定すべきであると回答した。

 また、4分の3がイスラエル人とパレスチナ人の道路を分けるべきだと考え、58%がパレスチナ人に対するアパルトヘイトがすでに存在すると回答している。さらに3分の1がイスラエル国籍のパレスチナ人の投票権が取り消されるべきであると答えた。また、およそ4割がパレスチナ人と職場や学校を共有したくないと回答した。この調査が行われてから10年余りイスラエルでは極右を含む政権が成立したように、国民の意識の間ではアパルトヘイトを支持する考えがいっそう定着していることは明らかだ。

 カーター氏はイスラエルにアパルトヘイトがあると認めた最初で、唯一の米国の大統領経験者で、イスラエルの占領地における入植地の拡大が中東地域の安定や平和にとって重大な障害であると訴えた。2016年11月には離任直前のオバマ大統領(当時)に「ニューヨーク・タイムズ」のオピニオン記事で米国がパレスチナ国家を承認することを求めた。

カーター記念球場 住所/三次市甲奴町本郷10861 電話番号/0847-67-3535 甲奴町と交流のあった、第39代アメリカ合衆国大統領ジミー・カーターの名を冠した球場「カーター記念球場」。県内ではMazda Zoom-Zoom スタジアム広島と三次きんさいスタジアム、そしてここカーター記念球場の3カ所でしか使用されていないメジャー仕様のマウンドがあり、外野は選手の負担やケガのリスクが軽い天然芝。ナイター設備も完備していて、大小さまざまな大会が開催されています。 https://www.miyoshi-dmo.jp/carter_stadium/

 1984年5月25日、カーター氏は原爆を投下した米国の大統領経験者としては初めて広島市の原爆資料館を訪れ、平和記念公園の原爆慰霊碑に参拝、献花した(オバマ大統領の訪問よりも32年早い)。「世界の指導者の心構えや行動だけに頼るのでは十分でない。私たちが平和を不断に要求していかねばならない。核兵器の廃絶が一市民としての私の終生の目標となる」と訴えた。カーター氏は世界に高邁な平和の精神を訴え、またギニア虫撲滅運動の中心となるなど人類社会の健康にも尽力した。


表紙の画像は広島県三次市甲奴町の中学生たちと交流するカーター元大統領夫妻
「そういったことがご縁で、甲奴町とジョージア州のアトランタ市・アメリカス市の中学生たちが、お互いの地元を訪れてホームステイする交流が始まりました。異文化を知り、相手を理解することは平和活動において大切ですね。当館が完成の際には、カーターさんの二度目の来訪も実現しました。ここ2年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止していますが、甲奴の子どもたちが訪れると、カーターさんはいつも会いに来てくださいます。子どもたちは貴重な経験をさせていただき、多くのことを学んでいます」
 甲奴町の特産品である『カーター・ピーナッツ』も、カーターさんがピーナッツ農家出身であったことから、友好の証として届いたピーナッツを元に生産が盛んになりました。
https://hiroshimaforpeace.com/the-bell-of-peace-as-a-symbol-of-peace-that-connects-hiroshima-with-former-u-s-president-jimmy-carter/


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