ウクライナの寛容を歌ったダニエル・ビダルの「天使のらくがき」
1969年に日本でもヒットしたフランスの歌手ダニエル・ビダルの「天使のらくがき」はウクライナを歌った曲だった。ビダルの歌の動画は、
https://www.youtube.com/watch?v=1F30Ga1PiVs にあるが、下が邦訳の歌詞の冒頭の一部で、フランス語のタイトルは「あなたを愛する人たちを愛しなさい "Aime, aime ceux qui t'aiment" 」で、邦題にある「天使」も「らくがき」も詞の中にない。
ウクライナ平原では
家々の灰色の壁に
人々は自ら記す
こんな風な言葉で:
「ひとたび友として
この扉をくぐった方は
お望みならいつでも
また戻っていらっしゃい」と。
あなたを愛する人たちを愛しなさい
あなたが蒔いた愛は
必ずあなたに返って来るもの
http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-905.html?sp
ビダルの歌は耳にされたことがある人は少なくないと思う。この愛と寛容の詩に接すると、イスラム神秘主義詩人のルーミーの「ゲストハウス」というやはりあるがままに受け入れなさいという寛容を表現する詩を思い出す。
「ゲストハウス」
人間という存在は、みなゲストハウス
毎朝、新しい客がやって来る
喜び、憂鬱、卑しさ、そして一瞬の気づきも
思いがけない訪問者としてやって来る
訪れるものすべてを歓迎し、もてなしなさい
たとえ、それが悲しみの一団だとしても
できるかぎり立派なもてなしをしなさい
たとえ、それが家具のない家を荒々しく駆け抜けたとしても
どんなものがやって来ても、感謝しなさい
どれも、はるか彼方から案内人として
あなたの人生へと、送られてきたのだから
ロシアのウクライナ侵攻はこの愛や寛容とはまったく縁がないもので、ウクライナ南東部のマリウポリから3万1000人の市民が強制連行されたとマリウポリの市長は述べている。人数はともかく、強制連行はおそらくあるのだろう。ナチス・ドイツの強制収容所や、やはり第二次世界大戦中のアメリカの日系人の強制収容所のように、残酷で、非道徳的な人権侵害だ。
2022年4月8日、ドイツのシュタインマイヤー大統領は、ロシアのプーチン大統領とラブロフ外相が戦争犯罪で裁かれるべきだという考えを示した。シュタインマイヤー大統領は、2019年9月1日に、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まってちょうど80年の式典で、「ナショナリズムの高まりを、人々への憎悪を二度とくり返してはならない」と述べ、またトランプ大統領のアメリカにも世界平和への協調を訴えた。
この式典はポーランド・ワルシャワで開かれたが、2014年に軍事力を背景にクリミア半島を併合したプーチン大統領は不戦を誓う式典にはふさわしくない人物としてポーランド政府から招待されなかったが、これはウクライナ危機がヨーロッパでいかに深刻に受け止められているかを表わしていた。ロシア(ソ連)は、独ソ不可侵条約の秘密の議定書によってポーランドに侵攻して、バルト三国を併合した国でもあり、本来ならばシュタインマイヤー大統領のように反省の意を表明しなければならなかった。
その翌日の同年9月2日、ロシアは対日戦争勝利記念の式典を色丹島と国後島で開いた。9月2日は、米戦艦ミズーリ号の艦上で日本が無条件降伏文書に調印した日だが、ロシアは北方領土を武力で併合した。ロシアには歴史を省みる姿勢がなく、武力で領土を拡大してはならないという第二次世界大戦後の国際秩序もまるで意識していないようだ。
武力で侵略を行い、虐殺、強制連行、略奪など非道な行いをする者たちに対してはウクライナ平原も、またルーミーの表現する「ゲストハウス」にも受け入れる余地がないことは言うまでもない。
ダニエル・ビダル「天
使のらくがき」
https://item.rakuten.co.jp/sounds/24554/
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