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イスラム世界から評価された「中東和平に関する日本の立場」 ―イスラエルがガザに再入植?

2016年末に現代イスラム研究センターのフェイスブック・ページにつないだ日本の外務省の「中東和平についての日本の立場」(2015年1月13日)の英語版への「いいね!」が28、000を超えたことがあった。各段の多さだったが、イスラム世界からの支持が多かった。そこに書かれてある日本の中東和平への姿勢は、イスラム世界をはじめとする国際社会から共感されていることがわかった。その日本語のページは下にあるが、イスラエルの極右を含むタカ派政権が強硬な政策をとる中で理性的な内容となっている。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/middleeast/tachiba.html

 イスラエルのベツァレル・スモトリッチ(Bezalel Smotrich)財務相は12月31日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)の戦後について、ユダヤ人の再入植を主張し、パレスチナ人に地区外への移住を奨励すべきだと訴えた。彼は極右政党「宗教シオニズム」の党首だが、イスラエルのユダヤ人が再入植するということはイスラエルの占領が継続することになり、国際法上の正当性はなく、また占領地に入植地を建設することも被占領者の土地・財産を奪ってはならないという国際法に違反するものだ。

ガザの国連が運営する学校で日本への謝意を示すガザの学童たち

 ヨルダン川西岸の入植地建設について、日本の外務省のページには、

「我が国は、最終的な解決を予断するような一方的な変更は、いずれの当事者によるものであっても、承認できないとの立場に立っている。我が国は、最終的地位を含む問題は直接交渉によって解決されるべきと考えつつ、東エルサレムを含むヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動は国際法違反であり、即時かつ完全に凍結されるべきとの立場を再確認し、改めて、イスラエルに対して,入植活動の完全凍結を求めている。」

日本はUNRWAを通じてパレスチナ難民を支援してきた https://www.youtube.com/watch?v=AjL_d2KC1q8

とある。また、イスラエルのネタニヤフ首相などイスラエルの右翼政治家たちはパレスチナ国家を断じて認めない姿勢だが、これについては、

「我が国は、パレスチナ人の独立に向けた悲願を理解しており、二国家解決の実現を支持している。」とし、またイスラエルが三大一神教の聖地があるエルサレムを一方的に首都としていることに対しては、

「エルサレムの最終的地位については,将来の二国家の首都となることを前提に、交渉により決定されるべきである。我が国としては、イスラエルによる東エルサレムの併合を含め、エルサレムの最終的地位を予断するいかなる行為も決して是認しないことを強調し、パレスチナ人の住居破壊及び入植活動の継続等、東エルサレムの現状変更の試みについて深い憂慮を表明している。」と述べ、アメリカのトランプ前政権が大使館をテルアビブからエルサレムに移したこととは正反対の考えを示している。

 ヨルダン川東岸・西岸全域がユダヤ人国家の領土であるという修正シオニズムの思想を広めたのは旧ロシア帝国オデッサ(現ウクライナ領オデーサ)生まれのジャーナリスト・ウラジミール・ジャボチンスキー(1880~1940年)だった。ジャボチンスキーは1940年にアメリカの修正シオニズム団体「ベタル」を訪問中に心不全で亡くなったが、パレスチナでは彼の信奉者たちが1940年代に活動が活発だったテロ組織の「イルグン(イルグン・ツヴァイ・レウミ)」を創設していた。この組織は後に「へルート」党となるが、科学者のアインシュタインなどはこのヘルートのパレスチナ人虐殺などの活動がナチス・ドイツのユダヤ人弾圧を想起させるものだと批判した。イルグンは、1946年月22日にエルサレムのキング・デーヴィッド・ホテル爆破事件を起こし91人の無辜の人々が死亡した。また1948年4月9日にデイル・ヤースィン村で100人から120人のアラブ人住民を虐殺した。イスラエルのネタニヤフ首相をはじめ右派・極右の政治家たちはこの修正シオニズム思想の信奉者たちだ。

ジャボチンスキーの写真の前でスピーチするネタニヤフ首相。この人にとってジャボチンスキーは「偶像」なのだろう。 https://www.gov.il/en/departments/news/epmjabo

 外務省のページは「パレスチナ難民の経済・社会生活を向上させる国際的取組に貢献するため、我が国は、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)を通じたパレスチナ難民支援に引き続き努力していきたい。」と締めくくられているが、こうした主張がいまの国会議員たちに共有されているだろうか。

 1980年10月31日に伊東正義外相は、「安全保障及び沖縄・北方問題に関する特別委員会」で「米国を訪問した際に中東和平の基本はパレスチナ問題であり、それはパレスチナ人の国家までつくる権利も認め、そしてイスラエルがPLO(パレスチナ解放機構)も認めることだと主張しました。」と語っている。

http://kokkai.ndl.go.jp/.../093/1745/09310311745003c.html 

 米国を訪問して伊東氏と同様のことが言える胆力のある政治家がいまの内閣や国会にいるだろうか。

国境なき医師団の中嶋優子医師。戦禍のガザによく入られました。頭が下がります。 https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Uv430BZ7bKU

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