見出し画像

「忘却を恐れます」「雨を汚したのは誰?」 ―ジョン・ウェインはなぜ死んだか?

昨日の長崎平和宣言で、鈴木史朗・長崎市長は、谷口稜曄(すみてる)さんの「過去の苦しみなど忘れ去られつつあるようにみえます。私はその忘却を恐れます。忘却が新しい原爆肯定へと流れていくことを恐れます。」という言葉を引用した。平和宣言全文はhttps://www.city.nagasaki.lg.jp/.../307100/p036984.html にあるが、核抑止からの脱却を訴えるこの平和宣言を支持したい。

鈴木史朗・長崎市長の言う通りだと思います。 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1115861/


 谷口さんが言うように、国際社会は核や原子力の恐怖を忘れつつあるように見える。
「What Have They Done to the Rain?/雨を汚したのは誰?」は核実験に抗議する意図を込めて米国のシンガーソングライターのマルヴィナ・レイノルズ/Malvina Reynoldsによって書かれ、日本ではジョン・バエズの歌で知られている。
 ジョン・バエズの歌の動画は下にある。

https://www.youtube.com/watch?v=9mEq7s8xHWE

 

この歌は、核実験によってストロンチウム90という放射性物質で大気が汚染され、放射能の雨が草木を枯らし、その草を食べた牛から出た牛乳を飲んだ人間をも殺してしまうことを訴えている。
Just a little rain falling all around,  少しばかりの雨が見渡す限りに降っている
The grass lifts its head to the heavenly sound,  草が心地よい音に聞き耳立てる
Just a little rain, just a little rain,  少しばかりの雨、少しばかりの雨
What have they done to the rain?  彼らは雨に何をしてしまったの?
 現在では酸性雨など環境破壊に抗議する歌となっている。

 アメリカでは西部ネバダ州の核実験場で1951年から58年まで地上核実験を97回行った。「What Have They Done to the Rain?/雨を汚したのは誰?」は地上核実験に抗議する意味もあったが、この歌がつくられた前年の1963年に部分的核実験停止条約が成立し、地下核実験に切り替えられた。地上での核実験が脅威であるのは日本では第五福竜丸がビキニの水爆実験で被ばくし、久保山愛吉さんが亡くなったことでも切実に受け止められた。地下核実験を含めると、1951年から92年にかけて米国では925回の核実験が行われた。

 1954年にユタ州セント・ジョージ市郊外の砂漠地帯でハリウッド映画「征服者」のロケが行われた。主役はジョン・ウェインで、ジンギスカンを描いたスペクタル映画だった。ロケは数カ月にわたって沙漠の中で行われた。このロケ地はネバダ核実験場の100マイルほど風下だった。ウェインはその後もユタ州やアリゾナ州の沙漠でのロケに参加した。ジョン・ウェインは1979年に大腸ガンで亡くなっている。「征服者」の相手役スーザン・ヘイワード、メキシコ人俳優ペドロ・アルメンダリス(ガンを苦に自死)、それに監督以下スタッフの多くがガンを患った。さらに、先住民居住地やセント・ジョージの市民にもガンの発症率が高いことが判明した。ハリウッドで西部劇が制作されなくなった理由にユタ州やアリゾナ州などの砂漠でのガンの発症率の多いことがあると広瀬隆氏は述べている。

https://movie-tsutaya.tsite.jp/netdvd/dvd/goodsDetail.do?titleID=4567877979&fbclid=IwAR2Fjq_hrYwXwNFUU9k2Iq9QGyq63GlVnLXG9_V18mQ-PB-X3CS3WRlXcfY


 アメリカの核実験は風がラスベガスやロサンゼルスを向いている時には行われなかった。日本に多数ある原発や核廃棄貯蔵施設は、地上核実験の死の灰と同様なくらい危険であるという見方もある。ネバダの核実験場とセント・ジョージの距離は、福島第一原発と東京、また福島第一原発と釜石と同じくらいになるそうだ。放出する原子物質はほぼ同じだが、原発からは猛毒物プルトニウムが出る上に、放射能総量は福島第一原発のほうが2割多い。広瀬隆氏は、これは『大量殺人』ではないのか?と述べている。(DIAMOND online,2015.8.5 5:03)

アマゾンより


 井伏鱒二の小説「黒い雨」は1945年8月6日、瀬戸内海の小舟に乗っていた主人公の高丸矢須子が、原爆投下後に降った黒い雨で放射能に汚染され、原爆症に苦しむ姿を描く。入浴して髪を梳かすと、毛髪が抜け落ちることなどが衝撃的で、戦後も縁談を断れるなど、被爆者の女性としての苦悩が描かれる。「黒い雨」では、矢須子の叔父の閑間重松(しずま・しげまつ)は、「正義の戦争よりも不正義の平和の方がいいということが、なんでわからんのじゃ」と語るが、ここに井伏鱒二の戦争や核兵器に対する強いメッセージがある。この言葉を借りれば鈴木市長の言う通り「核兵器の抑止よりも核兵器の禁止の方がいいということがなんでわからんのじゃ」ということになるだろう。

日本人が観るべき映画だと思いました https://hodanren.doc-net.or.jp/info/news/2022-07-25-8/

表紙の画像はスーザン・ヘイワード
彼女もガンを発症した
http://mamdarin.blog87.fc2.com/blog-entry-101.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?