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99歳・長崎被爆者のガザ平和への訴えと福田須磨子の反核詩

 長崎で21歳の時に被爆した中村キクヨさんがガザでの平和を訴える動画がガザ停戦を求める世界中の人々の間で拡散されている。

中村キクヨさん

「21歳の時に長崎に原爆が落ちました。平和と原爆の廃止をずっと叫んでまいりました。日本のニュースを朝晩聞いています。ガザ地区の人たちの避難する姿とか子供の姿を見ていつも私は涙が出ます。どうぞ戦争は止めてください。子どもたちには何も罪はありません。一日も早く戦争を止めて子どもたちが三度の食事をゆっくり食べれるような平和に戻ってもらいたい。それだけがお願いです。」と訴えた。

 21歳の時に被爆した自身の経験と、現在のガザの人々の悲惨な様子が重なり、被爆死した長崎市民たち同様に、無辜の市民が殺害される様子に心を痛めている。

 無慈悲にもイスラエルのスモトリッチ財務相は、8月5日、ガザ地区へのユダヤ人の入植を呼びかけ、イスラエル人の人質がガザ地区に拘束されている限り、200万人のパレスチナ人を飢え死にさせることは「公正で道徳的」だと主張した。また、長崎の平和祈念式典を欠席した米国のエマニュエル大使は、港区・増上寺の長崎原爆殉難者追悼会に参列し、「ロシアは侵略した国で、イスラエルは侵略された国だ」と述べ、イスラエルを平和祈念式典に招待しない長崎市の姿勢をあらためて非難した。エマニュエル大使のこの発言は事実誤認も甚だしく、「侵略」の定義が「他国に攻め入って土地や財物を奪い取ること。武力によって、他国の主権を侵害すること。」とならば、イスラエル軍事力で、占領を継続し、パレスチナ人たちの土地や財産を奪い続け、入植地を拡大してきた。


 平和祈念式典の鈴木史朗市長の平和宣言の中には今年、没後50年を迎えた被爆者で詩人の福田須磨子(1922~74年)の下の詩が引用されていた。

【平和祈念式典】“世界中の誰にも、二度と同じ体験をさせない”との強い決意「長崎平和宣言文」《長崎》 2024年8月9日 11:13 https://news.ntv.co.jp/n/nib/category/society/ni360257cca70642ceb455228ebf77c5e6

原爆を作る人々よ!
しばし手を休め 眼をとじ給え
昭和二十年八月九日!
あなた方が作った 原爆で
幾万の尊い生命が奪われ
家 財産が一瞬にして無に帰し
平和な家庭が破壊しつくされたのだ
残された者は
無から起(た)ち上がらねばならぬ
血みどろな生活への苦しい道と
明日をも知れぬ〝原子病″の不安と
そして肉親を失った無限の悲しみが
いついつまでも尾をひいて行く
原爆を作る人々よ!
今こそ ためらうことなく
手の中にある一切を放棄するのだ
そこに初めて 真の平和が生まれ
人間は人間として蘇る(よみがえる)ことが出来るのだ

福田須磨子は長崎師範学校の会計課に勤務していた23歳の時に被爆し、両親と長姉を失った。文筆活動によって原爆の非人道性を訴え、原水爆禁止運動や安保反対闘争に参加した。被爆の後遺症のために52歳の若さで亡くなっている。また下の詩は第五福竜丸の被爆の悲劇を背景に長崎の被爆者の反核の想いを訴えたものだった。

「いのちある限り」

罪もなき少年の頭上に
運命の閃光が炸裂し
悪魔の爪は 永劫に消ゆることなき
深い傷痕を残していった。

絶望と恐怖の交錯する中でのろのろと 月日が流れて行った。
強いられた運命に堪えぬいて
少年はすでに若人となっていた。

死の灰が 日本の空を被い始めた置き
彼は沈黙を破って起ち上った

“原爆の不幸は我々で沢山だ”(抜粋)

福田須磨子 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/455027/

 南アフリカは常々パレスチナもウクライナと同様にその土地が奪われ、自由が奪われていることに対して国際社会はもっと目を向けるべきだと欧米のウクライナとパレスチナに対する「二重基準」を批判してきたが、今回の長崎平和祈念式典を欠席する米英などの姿勢について日本政府からは何の批判もない。

 第五福竜丸の被爆でも米国原子力委員会ストローズ委員長が「一連の(水爆)実験は成功であり、今後も実験を続ける」という声明を出すと、日本政府も「米国の実験が悪いものとの印象を与えたり、実験を阻止するような態度を取りたくない」(岡崎勝男外務大臣)という声明を支持した。https://www.dailymotion.com/video/xp4jye 日本国民が米国の水爆実験の犠牲になってもこの発言である。対米一辺倒という点では日本外交はこの時代から進歩がないようだ。

表紙の画像は福田須磨子
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20240402/5030020461.html

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