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ネタニヤフ首相はもはや日本を訪問できない

 先月、ICC(国際刑事裁判所)はイスラエルのネタニヤフ首相、ガラント国防相、ハマスの指導者たちに対して逮捕状を出した。これで、ネタニヤフ首相は、日本など日本などICCに加盟する124の国と地域を訪問すれば逮捕される可能性があり、彼の外交活動は大きな制約を受けたことになる。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20240328-OYT1T50013/

 2014年5月12日、安倍首相(当時)と会談したネタニヤフ首相は中東和平について「二国家解決に向けた協力、入植活動の凍結、パレスチナ囚人の解放等に努力してきた」ことを説明した(外務省のページより)。その後、ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家を認める用意がないこと、また入植地拡大を継続し、パレスチナ人政治犯を多数拘束してきた。彼の日本での発言がいかに誠意のないのものであったかがわかる。

 このネタニヤフ首相の来日では、イスラエルとの防衛協力が成立し、また人的交流が活発に行われることで一致を見た。中東戦争を行ってきたイスラエルは紛争当事国になる可能性があるとして旧・武器輸出三原則では禁輸対象国だったが、2014年のネタニヤフ首相の来日の際に「包括的パートナーシップ」を結び、イスラエルに対する装備や技術移転が可能になった。このイスラエルとの包括的パートナーシップによって、現在のガザ攻撃に日本の防衛装備品や技術が用いられていることは否定できないだろう。日本はICCなどの判断を受けてイスラエルとの包括的パートナーシップの見直しや停止を行ったらどうだろう。

「日本政府、ネタニヤフ首相を戦争犯罪者として扱うことにあいまいな態度」と「アラブ・ニュース」は書いています。 上川氏は、「刑事裁判の手続きに関わる問題であり、ICC の判断について政府として予断することは差し控えたい」とした上で、「いずれにしても、わが国はICCの締約国として、また本件がイスラエル・パレスチナ情勢に与える影響の観点からも、重大な関心を持って引き続き注視をしていく」と述べた。 また、戦争犯罪の容疑者に日本の政府関係者が関与していくのかどうかについても明言しなかった。 https://www.arabnews.jp/article/japan/article_120121/

 F35の技術開発については日本も参加し、その技術がレバノンやガザなどを攻撃してきたイスラエルにも移転されていることは確実だ。F35の部品の40%以上は日本が製造しているとも見られている。

 日本は1948年に成立したジェノサイド条約に参加していない。ジェノサイド条約(=「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」)は、国連総会で採択された最初の人権条約であり、ナチス・ドイツが600万人のユダヤ人を虐殺したことを背景に生まれた。条約を批准、また同条約に加入した153の締約国が、ジェノサイドの犯罪を防止して処罰する義務を負うが、日本は締約国になっていない。

 その理由は参議院によれば、日本には「共同謀議」とか「扇動」を処罰する国内法がないからジェノサイド条約の締約国になる条件を満たしていないという説明だ。しかし、第二次世界大戦直後に成立し、世界の圧倒的多数が加盟する条約に批准していないのは怠慢のように思える。

世界が注目する“ジェノサイド条約”に日本が批准しない理由 https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202402130650/detail/

 世界では40カ国ぐらいが侵略や人権侵害行為自体を罰する法律を独自にもっている。チリの独裁者ピノチェト将軍は1998年10月16日に、スペインの治安判事バルタサール・ガルソンによってチリで犯した人権侵害で起訴され、その6日後にロンドンで逮捕された。スペインとイギリスの連携による迅速な措置だったが、ピノチェトは健康上の理由で釈放されるまで1年半の間、自宅拘禁に置かれた。国内法が外国の元首だった人物に及んだ最初の事例だった。

ICCが対象とするのは国際的に極めて重大な犯罪です。具体的に言うとジェノサイド(集団殺害犯罪)、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪の4つです。中核犯罪(コア・クライム)とも呼ばれるこれらの犯罪を対象に、個人の刑事責任を追及するところが、ICCの大きな特徴です。  よく国際司法裁判所(ICJ)と混同されますが、ICJは国家間の紛争解決を目指す国連の機関です。いっぽうICCは国連とは独立した機関で、あくまで個人の刑事責任を追及することで、同様の犯罪の抑止を目指しています。 https://plus.usio.co.jp/blogs/contents/2024-024

 また、スイスの戦争犯罪法(1927年成立)では、国籍にかかわらず戦争犯罪に関わった人物に対して裁判を起こすことが可能だが、2019年7月にオルメルト氏はスイスで逮捕、拘禁されることを恐れてスイス訪問をキャンセルした。同様に、オルメルト氏はベルギーでも2006年7月にレバノン攻撃における人道犯罪で提訴されている。

 日本にもスイスやベルギーのような国内法で、世界の人権侵害や戦争犯罪を抑止するためにも、外国人の人権侵害や戦争犯罪を裁く法律があってもよいのではないか。著しい人権侵害を行うネタニヤフ首相へのICCの判断に接してあらためてそう思う。

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