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日本と、「ジェノサイド」が指摘されるイスラエルとの「防衛協力」はどうなっているのか?

 日本はJICAや様々なNGOがガザ地区住民への生活支援などを行い、パレスチナ社会から評価されてきた。しかし、他方で、今回のガザ紛争に対する日本の否定的関与はあまり知られていないと思う。

 3月12日、4つの世界的なNGOがデンマーク政府に対して、戦争犯罪を行っていることが見られるイスラエルへの武器輸出停止を求める訴訟を起こしたことが明らかになった。また、2月12日、オランダ・ハーグの高裁は、F35戦闘機の部品輸出を7日以内に停止することをオランダ政府に求める判断を下している。その理由はイスラエルの攻撃が民間人にもたらす結果を十分に考慮せず、不均等な数の民間人が死傷しているというものだった。

 こういう報道に接すると、日本とイスラエルの防衛協力は現在どうなっているのかという疑問や関心をもたざるを得ない。

 中東戦争を戦ってきたイスラエルは紛争当事国になる可能性があるとして旧・武器輸出三原則では禁輸対象国だったが、2014年5月、安倍政権はネタニヤフ首相の来日の際に「包括的パートナーシップ」を結び、イスラエルに対する防衛装備品や技術移転を可能にした。このイスラエルとの包括的パートナーシップによって、現在のガザ攻撃に日本の防衛装備品や技術が用いられていることは否定できないだろう。

パレスチナ自治区ガザへの攻撃に抗議するため、「有志の会」が11月、JR渋谷駅前で実施したデモ=東京都渋谷区で https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=308257&pid=1331402


 イスラエルとの防衛協力も国民にほとんど知らされぬまま進められてしまった。イスラエルとの防衛協力など国会での議論が行われた気配がないので、これも「閣議決定」によるものなのだろう。

 日本の「武器輸出三原則」は、1967年に佐藤栄作政権時代に「共産主義の国」「国連の決議で決められた武器の禁輸国」「そして国際紛争の当事国」に対して武器輸出を認めないことにした。さらに1976年に、三木武夫政権時代に、佐藤政権に設定された条件に限らず「憲法の精神にのっとって、武器輸出を慎む」と決定し、実質的に全ての武器輸出を禁止した。安倍政権は「武器輸出三原則」を大幅に緩和し、イスラエルとの防衛協力を推進した。

UNRWAへの拠出金の停止はガザ230万人住民への死刑判決。日本政府はその片棒をかついでいる。 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出停止に抗議する人たち=7日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のUNRWA事務所前で(AP) https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=308257&pid=1331403


 日本も開発に参加した次世代ステルス戦闘機F35の部品の40%は三菱重工はじめ日本が供給することになっている。イスラエルは現在50機のF35を保有し、これを75機にまで増やそうとしている。すでにF35はガザ攻撃に投入されているが、日本製のF35の部品がイスラエルに移転される可能性があることはすでに「現代ビジネス」が「F35部品は三原則の例外 政府決定 イスラエルへも日本製部品 揺れる「平和国家」[武器輸出]」(2013年4月)と題する記事の中で指摘、紹介している。ガザ攻撃に見られたように、多くの無辜の市民を殺害してきたイスラエルとの防衛協力は、平和や戦争放棄を説く日本の憲法の法的安定性、基本的精神を奪うものだ。

イスラエル軍のF35戦闘機。テルアビブで行われた航空ショーで(2023年4月26日撮影、資料写真)。(c)JACK GUEZ / AFP https://www.afpbb.com/articles/-/3509558


 日本はかつて伊東正義外相がパレスチナ問題の根源はイスラエルの占領の継続や入植地の拡大であると表明するなど、パレスチナ和平に日本の公平な立場が評価されてきたが、イスラエルとの防衛協力の推進などはアラブ・イスラム世界をはじめ世界の平和を希求する声に背くものであることは間違いない。

 日本がイスラエルにどんな防衛装備品を提供し、F35の部品を輸出しているのか、またどのような技術の提供を行っているのか、ガザが人道上の危機を迎えている中でその検証が必要なことは言うまでもない。伊藤忠商事がパレスチナ人に対するジェノサイド行為を阻止し、民間人を助けるための措置を講じるよう国際司法裁判所がイスラエルに命令したことを受けてイスラエルの軍需産業大手エルビットとの協力関係を解消したように、日本政府もイスラエルとの防衛協力を放棄したほうがよいだろう。


イスラエルの軍事企業との取引停止を求め、伊藤忠東京本社前で実施された抗議デモ=今年1月19日、東京都港区(杉原浩司さん提供) https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=308257&pid=1331401

表紙の写真はhttps://www.arabnews.jp/article/japan/article_107113/  より
伊藤忠はエルビットと手を切ったのだから今度は日本政府の番だと思います
そもそも伊藤忠とエルビットの協力をもたらしたのは、日本政府のイスラエルとの防衛協力の推進だったのだろう


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