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ダルビッシュ投手の「仲間には友情、現世来世の安らぎは」

 大リーグ・ドジャースとパドレスの開幕試合が明日、20日に韓国・ソウルで行われるが、パドレスの先発投手はダルビッシュ有投手だ。

 18日の毎日新聞に「ダルビッシュ、ファン経営のカフェを突然訪問 店主『叫びました』」https://mainichi.jp/articles/20240318/k00/00m/050/197000c
 
という記事が掲載された。ソウルでカフェを経営する李光熙(イ・グァンヒ)さん(40)は、大のダルビッシュ投手のファン。

 李さんがツイッターでダルビッシュ投手に投げ方の質問をすると、本人から直接返事があった。また、ダルビッシュ投手が2016年に使用しないグローブ(グラブ)について投稿した際に、李さんが「頂けたら大事にします」とメッセージを送ると、「プレゼントします」と返事が来た。そして本当に李さんの元にグラブが送られてきた。李さんはその年、実際に渡米してダルビッシュ投手の試合を観戦するのだが、試合前にダルビッシュ投手の投球練習を見ると、涙があふれてきた。その様子を見たコーチらが李さんにボールをくれた。

 パドレスが開幕戦で韓国に来ることがわかると、会いたいというメッセージをダルビッシュ投手に送った。すると、ソウルを訪問しているダルビッシュ投手が李さんの店に突然現れた。李さんは感激のあまり叫んでダルビッシュ投手を2回ハグしたという。李さんの店にはダルビッシュ投手のグラブや渡米した際に贈られたボールが飾られている。

カフェを訪れたダルビッシュ有投手(右)と李光熙さん=2024年3月15日、李さん提供 ダルビッシュ投手は本当に人格者だと思います。 https://mainichi.jp/articles/20240318/k00/00m/050/197000c

 こうしたエピソードや、球場の周辺で「大谷、大谷!」とコールする韓国の若者たちを見ていると、韓国や韓国人への感情もいっそう良好になるに違いない。

「友には友情、敵には譲歩、現世来世の安らぎは、この2つを心得てこそ」-イランの詩人サーディーの言葉

すべての人々よ 憎しみあうことなかれ 互いによき友人たれ  友情は人々のなすべき道なり

  これは、ウズベク文学の祖といわれるアリシェール・ナワイー(1441~1501年)による詩だ。ウズベキスタンで民族的詩人として尊敬を集め、日本人抑留者が首都タシケントに建設し、日本とウズベキスタンの友好のシンボルとなっているナヴォイ劇場もこのナワイーの名前にちなんでつけられた。

食事代はダルビッシュ投手が出していると思う。 https://www.sponichi.co.jp/.../20231216s00001004554000p.html

 国家を超えた友情があってこそ寛容や忍耐を身につけてこそ狭量なナショナリズムをのり越え、相互に理解することができることは言うまでもない。

「世の平和は2つで成り立つ。仲間には友情、敵には忍耐」―イラン・シーラーズの詩人ハーフェズ(1325~1389年)

 同じような格言は世界に多くあるかもしれないが、国、民族、宗派が異なっても人々が求める価値観は同様であり、また相互に理解できるということをダルビッシュ投手のエピソードや、イスラムの詩人たちの作品は教えている。

優勝し、胴上げされるダルビッシュ=昨年3月21日、米フロリダ州マイアミ【時事通信社】 https://www.jiji.com/jc/p?id=20230322152615-0044746917

 ダルビッシュ投手は変化球を投げるのが好きだと常々語っているが、その器用な手さばきは精巧なペルシャ絨毯をつくる織り手を連想させる。ペルシャ絨毯は五木寛之の小説『燃える秋』にも描かれているが、天国を連想させるようなさえずる鳥、美しく咲き乱れる花、形状が曲がった茎など多様な意匠を織り手が何十年もかけてつくり、織り手の人生がしみ込んだような目が覚めるような魅力的な作品もあるが、ダルビッシュ投手の変化球のすばらしさもまさに目が覚めるようだ。

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