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イスラムへの信頼が希望の光となる  ―パレスチナ人支援に生涯を捧げたトルコ系米国人女性

 9月6日、パレスチナ・ヨルダン川西岸ナブルス近郊でイスラエルの入植地拡大への抗議活動に参加していた米国籍で、トルコ系の人権活動家アイセヌル・エズギ・エイギさん(26)がイスラエル軍に頭部を撃たれて殺害された。

アイセヌル・エズギ・エイギさん https://anlatilaninotesi.com.tr/20240906/turk-aktivist-aysenur-ezgi-eygi-bati-seriada-israil-askerlerinin-kursunuyla-hayatini-kaybetti-1087741810.html


 10日、中東の専門サイト「ミドル・イースト・モニター」に「トルコ系アメリカ人の活動家アイセヌール・エズギ・エイギの生涯と遺産:パレスチナの希望の光(The Life and Legacy of Turkish-American activist Aysenur Ezgi Eygi: A Beacon of Hope for Palestine)」という記事が掲載された。

 記事によれば、トルコ生まれで、米国のシアトル育ちのエイギさんの活動はイスラムの信仰に深く根差しており、イスラムの正義、平等、アッラーへの服従という根本的な教えを強く意識しながら活動を行っていた。彼女はイスラム共同体であるウンマが変革に与えるパワーを信じていたが、抑圧に立ち向かうその姿勢で著名な活動家となった。記事は彼女の言葉「ウンマは重要であり、私はアラーに完全に服従して私の旅を支える必要があります」が抑圧と不正に立ち向かい続ける無数の人々の心に響き、彼女の人生はパレスチナ解放のための闘いが単なる地域的なものではなく、グローバルな闘争であること、あらゆる階層の人々の連帯と支援が必要であることを確認してくれる希望の光となると書いている。

ヨルダン川西岸、パレスチナの完全支配はごくわずかな部分だ A地区:西岸地区の18%を占める濃い茶色の部分、イスラエルは一応撤退していて、行政も治安もパレスチナ暫定自治政府が担います。エリコや、ラマッラ、ナブルスなどの大きい都市が含まれています。 B地区:22%を占める薄い茶色の部分で、行政はパレスチナ、治安はイスラエルが権限を持っています。 C地区:60%の白い部分で行政も治安もイスラエルが実権を握っています。 https://seichi-no-kodomo.org/2017/02/21/blog-170221/


 同記事によるヨルダン川西岸の現状を紹介すると、2022年現在、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区の250以上の不法入植地に、約47万5000人のイスラエル人入植者が住んでいる。「ディフェンス・フォー・チルドレン・インターナショナル・パレスチナ」は、イスラエル軍が2023年にエルサレムを含むヨルダン川西岸地区で110人の子どもを殺害したと報告した。

 また、国連人道問題調整事務所(OCHA)の2021年の報告書によると、その年だけで、5,300人以上のパレスチナ人がヨルダン川西岸地区でイスラエル軍の銃撃によって負傷した。国連人権理事会は、イスラエルの行動、特に民間人に対する過剰な武力行使と違法入植地の組織的な拡大を繰り返し非難してきた。イスラエルはヨルダン川西岸の分離壁の中にパレスチナ人たちを閉じ込め、そのアパルトヘイト体制は固定化するようになった。

同胞よ
生きろ 生きろ
不公平な状況におかれても 手を高く挙げて
世代交代の象徴だ
新しい世代を揺さぶって こう言え
「私は抵抗した。今度はあなたが逆らう番だ」

 これは、「地球とオリーブの詩人」とも形容されたサミーフ・アル・カースィム(1939~2014)の詩の一節だ。

サミーフ・アル・カースィム(中央)、左はパレスチナの民族詩人と言われたマフムード・ダルウィーシュ https://www.jadaliyya.com/Details/31145



 カースィムは、ヨルダンのザルカでドルーズ派の家庭に生まれ、現在はイスラエル北部にあるラーメの町で育った。1948年のイスラエル建国に際しても家族は難民となって逃れることはなかった。1960年にはドルーズ派に課せられる徴兵を忌避して獄中生活を送ることになった。1967年にイスラエル共産党に参加して、第三次中東戦争の勃発とともに再び刑務所での生活を余儀なくされる。詩作によってパレスチナ人の心情と、その民族的権利を唱道した。イスラエルはパレスチナ人を理不尽な状態に置き、その支援を行う人権活動家、さらにはイスラエルによる国際法違反や人権侵害を伝えるジャーナリストをも殺害している。22年5月にはアルジャジーラの著名な記者シリーン・アブ・アクレ(シーリーン・アブー・アークレ)さん(当時51歳)の頭部を撃ち殺害した。

ヨルダン川西岸で こんな子どもを拘束して何になる https://www.tasnimnews.com/en/news/2022/11/21/2807506/over-50-000-palestinian-minors-detained-by-israel-since-1967-plo



 冒頭でエイギさんのイスラムの正義への信頼に触れたが、イスラエルの人道に反するふるまいはイスラム世界だけでなく、ヨーロッパ、アジア、さらには米国など不正義に怒る人々の連帯をもたらしている。イスラムの信仰心の強いエイギさんの犠牲が、パレスチナ問題に正義をもたらす希望の光になることを願う。

表紙の画像は「ヨルダン川西岸・ナブルスでエイギさんの死に抗議する」
https://www.aljazeera.com/news/2024/9/9/us-not-probing-killing-of-its-citizen-aysenur-eygi-in-west-bank-officials

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