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中村哲医師の言葉「剣によって立つ者、必ず剣によって倒される」はイスラエルに向けられている

「中村哲が14年に渡り雑誌『SIGHT』に語った6万字」と題するサイトは、中村哲医師がアフガニスタンでの実践から得られた政治・社会観を2002年から9年に渡って語った言葉を紹介している。

 そこには「聖書の言葉を使うと、『剣によって立つ者、必ず剣によって倒される』と。これはもう歴史上の鉄則なんです。」と書かれてある。

 「剣によって立つ者、必ず剣によって倒される」―これは、今のイスラエルにも言い得ることだと思う。

 イスラエルはヌセイラトから人質4人を救出するのに、270人余りのパレスチナ人を殺害し、700人を負傷させた。ネタニヤフ政権ガザのすべての病院を意図的に破壊してしまったので、700人の負傷者たちはヌセイラトの医療施設に収容されることはなかった。ヌセイラトでは270人の遺体を収容する安置所もない。このヌセイラトでの軍事作戦は、ネタニヤフ首相は戦争犯罪人であるという国際司法裁判所(ICC)の主張にいっそう正当性を与えることになった。人質4人の命が助かったことはもちろん喜ぶべきことなのだが、しかしそのために270人の命が犠牲になったということは、イスラエル人とパレスチナ人には1対67.5という命の軽重があるということになる。

平凡社の非戦のための2冊 平凡社ツイッターより


 ところで、イスラエルでも避難民が生まれていることはあまり報じられていない。ガザで市民の殺害を伴う大規模な軍事作戦を行うイスラエルだが、イスラエル国家の存在を脅かすような軍事的脅威が現在発生しつつある。
 レバノンのイスラム集団のヒズボラがそのミサイルやドローンの性能を向上させたために、イスラエル北部の住民たちは、避難したまま帰還ができない状態になっている。

ヒズボラの女性支持者


 ヒズボラはより正確で、洗練され、破壊力の大きなミサイルを戦闘に導入するようになり、イスラエルはその防空システムの脆弱ぶりを露呈するようになった。6月3日、ヒズボラはイスラエル軍のガリラヤ地域の基地をドローン編隊で攻撃したが、ヒズボラのドローンはほぼ無傷でイスラエルの空域に侵入することに成功した。

 ヒズボラの戦力の向上にイスラエルは有効に対処できていない。5月14日、ヒズボラはイスラエルの監視気球を撃墜し、その基地があるイスラエル北部のアダミット地区を攻撃した。また、6月1日には、ヒズボラはイスラエルの新鋭のヘルメス900軍用ドローンを撃墜した。

 ヒズボラの軍事能力の向上はイスラエル国民に不安と懸念を与え、イスラエルの政治・軍事指導者の能力に疑問を投げかけることになっている。イスラエル北部メトゥラの町長は、30%から40%の住民はもはや帰還できないだろうと語るようになった。ガリラヤ湖周辺では96,000人余りの住民が避難しており、彼らはヒズボラの脅威に有効な手立てを講ずることがないネタニヤフ政権に見捨てられたとも感じている。また、ネタニヤフ首相は避難民たちにいつ帰還できるかを明らかにすることもない。ガザでの戦争が進行中のイスラエル軍にできることはヒズボラとの戦闘をエスカレートさせないことだけだ。

レバノン南部の景観 https://lebanoninapicture.com/pictures/%D8%B9%D9%86-%D9%87%D9%8A%D9%83-%D8%B5%D8%A8%D8%A7%D8%AD-south-lebanon-nature-naturephotography-natu


 イスラエル軍の指導部はヒズボラの脅威があるために、ネタニヤフ首相の姿勢とは異なってハマスとの停戦協議を支持するようにもなっている。イスラエルはヒズボラから国家存亡の危機を与えられていると言って過言ではない、まさに「剣によって立つ者、必ず剣によって倒される」状態になっている。

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