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『その男、凶暴につき』を見た

北野武第一回監督作品(1989年製作の映画)『その男、凶暴につき』を見た。
面白かった。

もうレンタルビデオは終わりだ


レンタルビデオで借りて、家で見たTUTAYA。うちの近所のTUTAYAはつぶれたので自転車で3Kmほど先まで取りに行くしかなかったGEO。

大島育宙とジャガモンド齋藤のポッドキャストで語られているのを聞いて興味を抱いて見たくなったのだった。

その内容を抜粋すると、

「これが一本目がいいかもしれない」「普通にたけしじゃなくても面白いくらいに脚本が出来上がっている」「ビンタを20発見舞うような暴力」「深作 欣二監督の企画を引き継いだ」「指の第一関節位をナイフで切る白竜怖すぎる」「刑事だと名乗らずにまず玄関の中に入るたけし」「前半は饒舌だが、後半後藤が殺されてからは寡黙な復讐マシーンとなる」

など。

結果、かなり面白かった。

暴力と暴力がただただお互いにグーっとボルテージを高めていき、ある種恋愛のような殺し合いに発展してクライマックスでピークに至るというのは、『殺し屋イチ』だとか、『粘膜蜥蜴』だとか、とにかく一種の型としてかっこよすぎて、俺の好物である。

その元祖は中世の一騎打ちとか、侍の決闘とかそのあたりにさかのぼるんだろうけど。
※出典不明

巌流島の決戦だって、人殺しと人殺しの一騎打ちである。ただ、本作のようなノワールではそこにヒロイズムではなくて、滑稽さと怖さとの両面を見出していて、音楽に例えると大分ドンシャリ(中音粋を削って高音と低音を強調する)である。

まるでオルタナティブロックのようで、80年代までのグラムロックは死んだ、というしびれる感覚が映像体験によって醸し出されるのだ。

あまりに自然に殺しや死が訪れる~豊臣秀吉と武~

それゆえに、ついつい笑ってしまうのもたけしの計算づくと考えると、確かに恐ろしい才能が殴り込んできたものであると感じたろうなと思う。

・白竜の銃をたけしが避けた結果誤射された若い女
・たけしにあっという間もなく射殺されてしまう安藤
・命からがら白竜から逃れたかと思いきや、出口で鉢合わせたたけしに撃ち殺された遠藤憲一

スラッシャーホラーを見た時に笑ってしまう感覚とこれは、近い。
人間の命なんかばっかでーいという、快感。

一見No.2以下の地位に甘んじていると思われた側近が、同士討ちを利用して漁夫の利を得るというのは、豊臣秀吉@本能寺の変のようで、たけしの人生観のベースにそもそも‟強いものが食い合いそこで狐が最も得をする”というチャンチャンが、あるのかと思った。
※最終的に天下を取ったのは徳川家康なわけだが、本作でトップに上り詰める「あいつ」は豊臣秀吉であろう。となると、徳川家康は……

もちろん、それは笑いのベースでもあるだろう。

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