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『応答せよ1988』の話

韓国ドラマ『応答せよ1988』、素晴らしいドラマだった。見終わって胸がいっぱい。全42話もあると知り驚愕したけど、本当に見てよかった。
かの松本隆さんが「観ないと人生の損」とまで激推しする「応答せよ」シリーズ。『1997』『1994』『1988』の全3作で、現在Netflixにない『1994』は未見。でも確かに「これを見ずして韓国ドラマを語るなかれ」といわれるのも充分納得で、松本さんいわく「これは風街だ!」という表現も、しみじみ分かる気がする。
それぞれ独立した話なので、単品で見ても大丈夫。私が特に良かった『1988』の話をしますね。

●『応答せよ1988』(2015)

韓国で初のオリンピックが開催される1988年、ソウルの下町。幼なじみの5人を中心に、彼らの親や兄弟たちを交えた5つの家族の日常を80年代~90年代の音楽に乗せて描く青春群像劇。1971年生まれの高校生たちのお話だけど、彼らの親たちの日常もふんだんに描かれた人生まるごとの群像劇。
閉経や更年期が出てくるドラマを初めて見た気がする。何度も爆笑したし、嗚咽するほど泣いた。

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実際に韓国で起きた事件や流行、カルチャーを時代ごとに追っていく面白さもポイント。分かりやすいのは家電の移り変わり。もちろん電話はダイヤル式の黒電話。家族に隠れて電話しづらかった時代、最後の方でようやく子機つきプッシュ電話が登場したり、インターネットのチャットが登場したり。
驚いたのは「練炭」で、後半ようやく台所に初めてガス台が入り、お母さんが「便利~!」と大喜び。土間に洗面器を置いて髪を洗っているのも驚き。当時の韓国は日本よりもかなり技術的に遅れていたのがよく分かる。今じゃ完全に追い抜かされたと思うけど…。

一方、主人公たちが夢中になる流行りものカルチャーは日本と似通っているなと思う。深夜の勉強といえばラジオ。映画は『男たちの挽歌』やウォン・カーウァイが大流行。音楽の傾向も懐かしさを覚える音楽にあふれてる。
例えばこういうのが何度も登場する。K-POP以前、実在の韓国 80-90's Music。

毎度、韓ドラを完走する度に「もう彼らに会えないのか…」という寂しさでいっぱいになるのだが、これはロスになれない最終回だった。なぜなら「彼らにもう会えない」と嘆いているのが、私より先にドクソンだったからだ。
ずっと、主人公はドクソンだと思っていた。でも、この物語の本当の主人公は、双門洞という横丁に流れていた「二度と戻れないあの時間」だったんだと思う。

私も彼らも、そして親たちにもあった、恋とか友達とか勉強とか、仕事とか家事とか子育てとかに明け暮れ、くだらないことで笑って泣いて、朝になったら起きて、夜になったら寝て、毎日同じようなことを繰り返し、これからもそんな時間が永遠に続くような気がしていた日々。でもそれはある日ふと終わりを迎える。振り返って初めて気づく、何気なくも切なく愛しい時間。記憶の中にだけ存在する「あの頃」。
出てくる人の人生の全てが愛おしい『応答せよ1988』、とてもお勧めです。

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