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商店街で古着屋が育む「愛着循環」

2月24日(金)福岡県飯塚市本町商店街に「TANEMAKI」をオープンしました。
「古着と古本のコミュティスペース」という業態です。

TANEMAKI

【経緯】


東京から福岡に移動し約2年間、アパレルブランドSPINNSの新規事業として「ローカルコミュニティ事業部」を立ち上げ活動してきました。
九州内を中心にいろんな地域にお伺いし出張出店をしてみたり、地域密着型の古着屋をつくってみたり、学校へ出前授業に行ってみたりといろんな「やってみたいこと」や「これやったらどんな風になるんだろう?」をトライしながらひたすら駆け抜けてきました。

今回出店した飯塚市は昨年より定期出張出店をさせてもらっていた地域です。

2022年1月から始まった定期出張出店


たくさんのご縁をいただき、紹介いただいた物件に一目ぼれをしてしまい、出店を決意。

これは正直なところですが、地域はどこでもよかったのかもしれないです。
ただ、きっかけをもらい、いい人たちに出会ったという事、そしていい物件に出会ったこと、さらに自宅から車でギリ通える距離だということ。それだけです。

事業部を立ち上げるまえから全国いろんな地方の商店街に呼んでいただき、出張出店をしていましたが、クローズシャッターが目立つ商店街課題として「若者離れ」が一番多い悩み。コンテンツ不足をどこも嘆いていました。
僕が出張出店をすることで「コンテンツ」としては一瞬だけ盛り上がるのですが、その後は・・・という状況で、心苦しいことが多い。

自分がどこまでできるのか?そして、事業アイデアを「やってみる」から「育んでみる」にトライしたときにどんな光景が見えるのか?そしてそれが地域のためになり、ビジネスとしてしっかりと成立していくのか?
そんなことを全部詰め込んだ事業実験であり、地域に根差した店をつくることが目的で「TANEMAKI」を飯塚市の本町商店街につくることになりました。

TANEMAKIのある本町商店街

【愛着循環とユースカルチャーを育む場】

飯塚市につくった「TANEMAKI」のテーマは「愛着循環」。事業コンセプトである「気づきのタネを発見し、みんなで育てる場所」の元、この店と出会い、利用し、遊び、繋がることで地域への愛着が根付くこと、そしてそれが「ユースカルチャー(若者が生み出す文化)」となり、「場所」は定着しながらも少しずつ人やコンテンツが変化して永く続いていく。そんな循環を生み出していく拠点にしていきたい。
将来的に服屋じゃなくてもいいし、カフェやコワーキングスペースになっても良い。
「昔ココで遊んだなぁ」、「ココでこんなことがあったなぁ」という思い出とともに愛着が循環して続いていくのが理想です。

みんなで一緒に遊ぶ場所になりたい


僕が借りた物件はもともと「宮部書店」という名の本屋さんです。オープン準備をしている時からいろんなご年配の方が声をかけてくれて、昔の思い出話をしてくれました。
僕はこのお店をされていたおばあちゃんにお会いすることはできませんでしたが、きっとこの街のたくさんの方に利用され、愛されていた本屋さんだったのだろう思います。
もともとは古着屋としてオープンする予定だったのですが、急遽古着と古本屋にしたのはそのことがきっかけ。この「思い出」を僕が残していかなくては!という使命を感じてしまいました。

書店として歴史を刻んできた物件

【コンテンツ/サービス】


・SPINNSのセレクト古着、回収古着の販売
「普段選ばないイロ・カタチの服を着て街を歩いてみる。少しだけ生活が楽しくなった。」というメッセージで古着を販売。実際、新しいファッションスタイルであったり、普段着ないような服を着て外を歩いてみると、少しドキドキしたり、街のガラスに映る自分をついつい見てしまったり。出会った人に「その服いいね!」って言われるとホッとしたり嬉しかったり。いつもと変わらない日常がちょっと変化して楽しくなってきたらと良いなぁと。
生活エリアへ出かける楽しさが地域への興味関心のきっかけになることってあるんじゃないかな?という実験。

気軽にチャレンジできる古着を500円から販売
いつも選ばない服を着てみるという体験

・本のお預かり、そして貸出し
「新しい遊び」として読後の本の預かりと無料貸出しをサービスとしてスタート。
読み終わった本を自宅の本棚に眠らせておくのであれば、ウチに預けませんか?そして誰かに読んでもらいませんか?借りた人は読んだら感想を添えて返してね。っていう内容です。
預けた方はまた読みたくなったらもちろん持って帰ってOK。
そのときに他の読んだ方の感想が挟まってたら素敵だなぁっていう実験。
とくに10代の子たちですが、若者があまり本を読まなくなった時代です。
洋服以外のコンテンツがほしかったこと、ここが本屋だったこと、そして何よりも僕が読書が好きなので、根気強くやってみます。ぼくは預かった本はできる限り読んで感想を添えたいと思います。

読書を通してヒトと繋がるサービス

・フリースペースの運営
2階は居住スペースだったので、もともとは事業倉庫として使用予定でしたが、地域の方と話す中で「学生が勉強できるスペースが少ない」ということでしたので、オープン前に自由に使えるスペースになるように改良。
勉強でも誕生日会でもママ友会でもワークショップでもなんでもOKにしてみます。
小さいイベントが生まれたらいいなと思っていて、僕はイベントの企画相談や運営のお手伝いをさせてもらえたらと思っています。
「何かができる場所」として2階は成長してほしい。

もともとは住居スペースだった2階

【これから】
オープンはいつでもよかったんですが、どうせなら縁起がいい日がよいなぁと思い、一粒万倍日にオープンしたTANEMAKI。
お祝い花をいただいたり、関係者の方に来店いただいたり、新聞取材に来ていただいたりと、ゆったりですが良いオープンができました。
スタッフが僕1人です。なかなか大変かもな、、って思っています。
かといってアルバイトスタッフを雇う感じでもない気がする。。
思い付きだったのですが、この店の働き方を「店番システム」にしてみようかと。
駄菓子屋みたいに子供が勉強しながらレジで店番している感じ。
そんなに忙しい店じゃないので、おそらくヒマな時間が多いと思っています。それなら、高校生や大学生が勉強する時間と店のスタッフをする時間を合体させてお互いにWINWINな関係性を埋める気がしました。
アルバイトだと1人雇うのが限界かもしれない。でも「店番」っていうカタチで入れるときに2時間、3時間いてくれる学生が地域に総勢50人いたら、、
お友達をよんでワイワイしてくれるし、地域の大人との出会いもある。
何よりも数年後その子たちが大人になった時に、店の前を通りかかって「あ、ここで昔よく店番してたんよねー」っていえる人が増えたらそれは「街の記憶」として素敵なことなんじゃないかなって。

ここでの体験を街の記憶にしていきたい

オープンして3日間営業してみて、初日にお買い物をしてくれた近所で働いている方が今日は息子さんを連れて買い物に来てくれたました。
他にも、息子さんの習い事を待ってるお母さんが通りかかり、店内で談笑していたら、夕方に習い事終わりの息子さんを連れて買い物してくれたりと、スタートから良い出会いがありました。
「また来ますね!」と言ってくれるのは本当に嬉しい。

ひとまずオープンをすることができました。人の少なくなった商店街で、この得体のしれない店が、2年後にはユースカルチャーが生み出される若者のたまり場になり、いろんな世代の住民が交流する地域愛着の場所になれた時、TANEMAKIは地域事業として1つ成長できるのかもしれません。


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