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「彼らは経営者だからできるんでしょ?」 そこから先へ進めたい。

   

 本日、日経BPより新刊『気鋭のリーダー10人に学ぶ 新しい子育て』が発売になりました。

 本書は、2018年8月8日(パパの日)に上梓した『子育て経営学』の続編第2弾として、生まれたものです。
 日経ビジネス電子版に、ほぼ週1回ペースで連載させていただいているインタビューシリーズ「僕らの子育て」の中から、特に好評だった記事を抜粋、さらに筆者の視点としてのポイントや総論を加筆した上でまとめました。

 めでたく続編出版が決まったとき、編集者とまず話し合ったのは、本のタイトルでした。
 より広くたくさんの方々に、より分かりやすく届けられるメッセージが伝わるタイトルを考えてみよう、と意見を出し合いました。

「新しい子育て」

 机上にあがったその文字を見て、これだと直感しました。
 
 未来は何も予測できない。どんな社会になっても、仲間をつくり、たくましく生きる力を身につけてほしい。
 そう願う彼らは、自分たちが自分の人生をそう切り拓いてきたように、子育てにおいても斬新な試みやチャレンジを続けています。


 「僕がやっている子育てなんて、間違いだらけですよ。そもそも子育てをできているかも自信がないです」

 そう言って謙遜するものの、日々の行動や考えには確固たる哲学や価値観を感じられます。
 それもそのはず。教育、ITサービス、飲料、スポーツ、ゲーム、ウェディングなど、各業界の最先端で事業づくりやクリエイティブな活動に打ち込むリーダーたちの子育てに、こだわりがないはずがないのです。
 また、彼ら自身が“どう育てられたか”も、子育て観に強く影響するファクターであると考え、質問をするようにしていました。

 この本で紹介するのは、各界で活躍する10人のリーダーたちのインタビューです。下記にそのお名前を挙げます。

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 謙虚な彼らに代わって、リーダーたちの子育てから見えてきた共通項を7つのポイントとして、本の冒頭にまとめました。

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 リーダーの子育てには、将来リーダーとして輝く人間育てのメソッドが少なからず凝縮されているはず。
 彼らの言葉は、社会の変化に負けず、たくましく生き抜く力を養うための実践に役立ちます。
 子育てのみならず、「人を育てる」場面であればいつでも参考になるヒントがきっと見つかるのではないかと思います。
 

 さて、ここであらためて、このインタビューシリーズの成り立ちについて簡単に。

 若手経営者や研究者、文化人など各界の先端を走るリーダーたち、それも“男性限定”で「子育て」について、じっくり話を聞く。
 これが、このシリーズの枠組みです。
 事業やビジネスについての取材には慣れている彼らも、この取材は新鮮な気持ちで受けてくれました。
 掲載する媒体を選ぶ際、子育てのテーマをほとんど扱っていなかった「日経ビジネス」というお堅いメディアでやりたい、と願い出たのも明確な意図があります。
 すでに子育てについて多く発信しているメディアでは、挑戦する意味がないと考えていました。

 子育ての専門家でもない私がこのシリーズをコツコツ続けている動機は、「子育ての“主語”を増やしたい」から。
 子育ては母親だけのもの、あるいは「イクメン」と自他共に認める男性だけのもの。子育ては家庭の中で完結すべきもの。
 そんな古い価値観を脱ぎ捨てて、もっと開かれた子育てを社会全体で支えていきたい。
 九州から上京し、都会の端っこで夫と二人、あくせく働きながら一人息子を育てる母親として、大小の葛藤も抱える中でたどり着いたテーマでした。

 そして、もう一つ、同じくらい強い動機として、インタビュアー兼ライターとしての純粋な好奇心もありました。
 取材で出会う同世代の経営者たち、さらに若いリーダーたちは、普段はどんな父親なのだろう? 
 多忙な日常の中でどうやって子育ての時間を確保し、パートナーとどんな役割分担をして、子どもに何を伝え、どんな機会を与えて、親としてどんな手本を見せようとしているのか。

 質問を向けてみると、リーダーたちの口から、期待以上に言葉があふれ出しました。次第に目が輝き、頰を紅潮させ、夢中で話してくれる彼らと向き合いながら、私は感動し、明るい希望を持てました。
 新しい社会を築いている彼らが、子育てについて自分事として語る言葉を、世の中に広く届ければ、きっと日本の子育ての未来は明るくなる。
 この希望を発信しないといけない、とエンジンがかかりました。
 普段はそれぞれの専門分野で活躍している彼らを、子育ての語り場というステージに引っ張り出して、たくさんの観客に鑑賞してもらうことが、私の役割だ。
 そう考えるようになり、書籍化へと一気に進めていったのです。

 前著を出してからいただいた反響の多くは、「今までにない本だった」「夫婦で読みました」とポジティブな内容が多く、本当にありがたく受け止めていました。
 一方で、こんな反応もいただきました。

「彼らは経営者だから特別でしょう? 勤怠も自由に決められるし、シッターさんを頼めるくらい経済的にも恵まれている」

 そのとおりだと思います。
 だからこそ、彼らの実践には「仕事が好きで夢中で働く男性たちが、子育てを楽しめるヒント」が詰まっているのだと私は考えます。
 柔軟な働き方がもっと多くの職業に広がっていくこと。また、子育ての手が足りない時に経済的負担を気にせずプロに頼れる制度を整えていくこと。
 例えばそんなヒントが、社会全体で解決していくべき課題として、彼らの言葉から見えてきました。
 そして、ここから先は私の期待ですが、子育てに深く関わるリーダーが増えていき、その姿がもっと可視化されていくことで、日本の子育ては良い方向へアップデートされていくはずだと信じています。

 嬉しかったのは、『子育て経営学』の趣旨に共感してくださった男性リーダーたちが、子育てをテーマに語る場をさらに発展させてくれたことです。
 気鋭のベンチャー経営者たちが集まる国内最大級のビジネスサミット「ICCサミット」を主催するICCパートナーズ代表の小林雅さんから、「子育てをテーマにコラボセッションをしませんか」とご提案をいただけて、2019年2月にリアルなステージでのディスカッションが実現。
 ビジネスリーダー6人が子育てについて白熱して語る姿は会場全体を引き込み、参加者満足度は全70セッション中1位という最高の結果に。好評を受けて、2回目、3回目と企画が続いています。

*企業トップが子育てについて語る白熱セッションは、日経ビジネスでも記事化。


 子育てに終わりがないように、彼らが語る言葉も尽きることがありません。
 そして、取材を重ねるごとに噛み締めるのは、連載第1回に登場くださった早稲田大学大学院ビジネススクール教授・入山章栄さんの言葉です。

 「子育てに正解はない」

 終わりなき対話を、この本を手に取ってくださったあなたと一緒に楽しむことができたら、とてもうれしく思います。



  宮本恵理子

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上記は、本日発売になりました『気鋭のリーダー10人に学ぶ 新しい子育て』の「はじめに」として書いた文章を元にご紹介させていただきました。

ご興味を持っていただきましたら、ぜひ本書をお読みいただけるとうれしいです。




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