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イタリアに第二波はやってくる?

8月15日、日本は終戦記念日だけど、イタリアではキリスト教の祝日「聖母の被昇天」という日で、その前後2週間ほどの間はバカンスがピークに達する。

7月、8月はすでにバカンスモードなイタリア。6月に入ると、仕事をしていてもそわそわして使い物にならない、そんなイタリア人が多いけど、みんながイメージするような、イタリア全国民が長〜いバカンスを取れたのは遠い昔の話。でも8月15日の前後2週間ぐらいは話が別だ。レストランやバールやブティックも、休むところが多い。日本のお盆週間みたいな感じ。だからこの時期は街から人も、車も消える。

まるでロックダウンみたいだったあの頃

24年前、イタリアに来たばかりの頃は、本当に全ての店、レストランが休業になったから、私や、トリノに暮らしていた日本人の友人たちは、水が買えなくなったら困ると言って買い込んだり、中華レストランだけは閉まらないから餓死はしないよね、なんて冗談半分で心配していた。

知り合いの日本人女性が妊娠したらしいと6月中旬に産婦人科に行ったら
「はい、妊娠です。今度は9月に来てくださいね」と言われてびっくりした、そう言っていたのを思い出す。今、考えてみると、あの状態はロックダウンの日々と似ていたような感じがする。

去年までと全然違う8月のイタリア

あれから何年も経って、イタリア人も一斉にバカンスへ行くのは混むし高いし馬鹿らしい、と考える人も増えたのか、経済効率を優先する傾向がどんどん進んだのか、あの頃のように全てが休みになることはなくなった。

それでも8月のこの2週間ほどは、やっぱり街から人も車も圧倒的に減る。

というのは去年までの話。いつもならこの時期、車の駐車場所探しも苦労しないし、都会で居残りライフをする人のためのイベントが盛りだくさんに企画されて楽しいから、昨日、友達と待ち合わせて行ってみた。

すると中心街の駐車スペースはいつもと同じように全然いっぱいで、探すのにあちこちぐるぐる回って、待ち合わせに遅れてしまったほどだ。つまりたくさんのトリノ住民が車を家の近所に止めていたり、車で街中へ来て過ごしていたということ。

コロナの影響で、バカンスに行く人が少ない、という報道を見てはいたものの、えー! これほど?という思いと、やっぱりそうか、という諦めみたいな気分が結構どよーんとやって来る。


ちなみにイタリアの駐車システムは、というと。


車を買う時に車庫証明が必要ない。だから家に駐車場を持っていない人がとても多い。郊外の一軒家なら別だけど、ミラノも、フィレンツェもローマも、もちろんトリノも、都市の中心街では、家の近くにあるかもしれない数少ない契約駐車場をラッキーにも借りられるか、でなければ道路に止めるか、ということになる。

例えば私が以前住んでいたトリノの中心街のアパートは築200年の建物だった。内部は現代的に改装してあるけれど、外装は200年前のままのバロック様式。基本構造も200年前のまま。つまり地下駐車場なんてのもない。近所の契約駐車場はどこもいっぱいだったから、家の前の道路に止めることになる。そう、路駐。

ただし路駐といっても駐車違反なわけじゃなく、道路の端っこに線が引いてあって、そこが駐車スペースになっている。

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その線の色によって、白なら無料、青は有料と決められている。例えばトリノの中心街は1時間2.5ユーロと結構高い。でも少し町外れになれば値段も下がる。黄色ラインというのもあるけれど、それは警察車両とか契約車両などで、一般の人は止めたら罰金を食らいますので、旅行でレンタカーを使う時にはお気をつけください。そんな心配もいつのことになるやら。

バカンスに行かないイタリア人。

コロナを警戒して出かけない人、経済的打撃が大きくてバカンスに行く予算がない人、そしてロックダウンで休みすぎたから今年は夏休みなし、という企業もあるのかもしれない。

今年のバカンス状況について検索してみると、その手のことを書いた記事がたくさんヒットする。

たとえばイタリアの経済新聞『ilSole 24 ore』7月18日の記事にはISNART(イタリア観光調査機関)の調査結果が書かれてる。今年はイタリア人の2人に1人はバカンスに行かず、例年の40%ぐらいの割合になるという調査結果。そしてバカンスに行く人たちの86%という圧倒多数がイタリア国内で、
コロナも恐れず海外だ!というツワモノはたったの4.8%。

https://www.ilsole24ore.com/art/turismo-italiano-due-non-andra-vacanza-ADmyN8e?refresh_ce=1

バカンスに行く人たちの中では76%が海。ちまたでは、海は密になるから山が圧倒的に人気、と言っていたけど、夏はやっぱり海ではじけたい! のがイタリア人なのだねー、と実感。そういえば2週間ほど前にアオスタの山奥に遊びに行ったけど、直前予約でも素敵な山小屋ホテルが簡単に取れたのはそういうことだったのかな。

人気はシチリア、サルデニアへ。海がキレイで、感染の危険も少なそうなイメージ? といってもサルデニアは例年よりも観光客数マイナス14%。

↓シチリア・タオルミーナの海

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一方、嫌われ者(失礼!)は、やっぱり、感染被害が大きかった州。ミラノが州都のロンバルディアは、去年に比べて観光客数なんとマイナス80万人!同じくローマが州都のラツィオ78万人、マルケ66万人、ボローニャやパルマ、モデナがあるエミリア・ロマーニャは64万人のマイナスだ。

そして海外からの観光客はどこも圧倒的に減っている。ホテル連合組合の調査では、EU内の国境を開けた6月以降も絶不調で、7月にも例年の数字よりマイナス76%だったということだ。

↓ラファエロ生誕の地でもあるマルケ州ウルビーノの宮殿。

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私はトリノの中心街のアパートを1軒、B&Bとして貸しているけれど、3月に感染が拡大した時に、7月まで埋まっていた予約は全部キャンセルになり、その後、予約は全く入らない。コロナ以前は、ハイシーズンならいつも予約でいっぱいで忙しかったから、私のアパートの質の問題ではないのは明らかだ。

イタリアは国内総生産の13%が観光業で、依存度の割合は世界で第3位だそうだから、 コロナが本当に大丈夫、とならない限り厳しい時代は続きそうだ。この数字は世界旅行ツーリズム協議会の調査。

https://www.yamatogokoro.jp/inbound_data/39485/

この調査によれば日本は7%で依存度11位。以前はもっと低かったから、
オリンピックに向けて頑張ったインバウンド作戦が裏目に出ちゃったということ?

↓ボローニャで食べた絶品ラグーのパスタ

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9月にはやっぱり第二波が?


イタリアはヨーロッパで一番最初にコロナの感染拡大がひどい状況になり、前例のない恐ろしい日々を過ごしただけに、5月のロックダウン解除後も、
マスク着用義務や三密に気をつけるなど政府も国民も本当に頑張って来た。

補償金が少ない、遅い、経済だ自由だと野党や国民から文句を言われても、コンテ首相は頑として、コロナ対策を慎重に続けてきた。そのせいかどうか、フランスやスペイン、ドイツの感染が再び激増している中で、新規感染者数を低く抑えることに成功して来た。

なのに最近、若者たちが夏休みでギリシャやクロアチアへ行って、毎晩ディスコで弾けて、感染して、続々とクラスターを発生させている。ディスコという言葉、日本でいうと古臭い印象だけど、ヨーローッパでは若者も、結構な大人も、お酒を飲んで踊って楽しむ、ポピュラーな場所。特に夏はビーチやオープンエアの臨時ディスコも登場して盛り上がりまくる。オープンエアと言ったって、ぎゅうぎゅうに人が集まればやっぱり感染の危険度はアップする。

危機感を持ったイタリア政府は、スペイン、ギリシャ、クロアチアなどから帰国する人にはPCR検査を義務付けた。

それでも新規感染者数は今、じわじわと増えている。8月10日には259だった数字が、8月12日には481人、13日523人、14日574人、そして15日には629人。

隣のフランスは2日連続で3000人超えを記録した。そして16日、政府は全国のディスコをクローズすることを決定した。18時から6時までの夜間は、店舗、広場、道路など屋外であってもマスクの着用が義務付けられた。

新規感染者数は479人(16日)、320人(17日)と少し減ったけど、集中治療室へ運ばれた患者数がジワリと増えている。

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