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美味しくておしゃれでびっくり! の海藻スイーツ登場

日本人だけどシドニー育ち、オーストラリアのアンダー30の料理コンテストで優勝したとか、世界最高峰のレストラン「NOMA」出身のシェフが東京にオープンした「INUA」でスーシェフを務めていたとか、そのINUAでたった1年でミシュラン二つ星を獲得したとか、キムタクがフレンチのすごいシェフを演じて話題になったドラマ「グランメゾン東京」のかっこよくて美しい料理を舞台裏で作っていた人だとか。

石坂秀威シェフを形容する言葉はいっぱいあるんだけど、私が今一番言いたいのは

シュウイさんの
海藻スイーツがめちゃくちゃ素敵でおいしい


という話。2022年、つまり去年の12月、東京にいた私は試作品が完成したから味見してみてね、というすごい光栄に浴したのだったけど、最初、海藻のスイーツと言われた時には頭の中で???がいっぱい点滅してしまった(これを今読んでいる皆さんもきっとそうだよね?)。でも実際に見て、食べてみたら、目にも舌にも素敵でおいしくて、ドキドキ興奮してすごく幸せになった。フードジャーナリストなんていう仕事をしていると、何かを食べてそう簡単にはおいしい!と感動できない体質になってしまうんだけど、このスイーツには本当にびっくりさせられた。

たとえばトップ写真のスイーツは「「すじ青のりのチョコレートケーキ」。え? 青のりなの? とあちこちから眺め、匂いを嗅いでみるとたしかに青い海の香りが漂っている。チョコレートビスキュイとチョコレートムースに青のりガナッシュ、すじ青のりパウダー、青のりチョコレートキャラメルクリーム、青のりカカオバターと、青のりがたっぷり使われているのだ。

抹茶を思わせるような香り高いすじ青のりとチョコレートのほろ苦さ、中にサンドされたキウイフルーツの酸味が、スッと自然に混ざり合ったおいしさにびっくり。

「赤い海藻とカカオパルプのミルクムース」

濃いピンク色をしたおしゃれな飾りは、飾りじゃなくてトサカノリという海藻をシロップにつけたり、プラムジュースにつけたりしてシート状にしたもの。甘酸っぱくてちょっとグミみたいな楽しい食感。そして苺の求肥、ホワイトチョコレートのガナッシュ、フイリグサ(海藻)とヨーグルトのソルベ、桜の葉のオイル、カカオパルプムース、ミルクビスケット、カカオパウダーと青のりパウダーのコンビネーション。ふんわりと甘く、優しい味わいが口の中に押し寄せてきて、これもまた海藻なのね!という驚き満載の一皿なのだった。(カカオパルプは、カカオの実の中で、種子であるカカオ豆を包んでいるふわふわの果肉部分のこと。フルーティーなおいしさがある希少食材)

「昆布と黒糖、カカオニブのセミフレッド」

ローストした昆布の粉、セミフレッド(黒糖ケーキ、昆布ガナッシュ、松ぼっくりの新芽シロップ漬け、ベリーの果汁に漬けた昆布、黒く発酵させたリンゴ、ヘーゼルナッツ、燻製したカカオニブ、昆布カスタードクリーム)、昆布ミルクチップ、キャラメリゼしたヒロメ(海藻)

モノトーンでシャープなデザインからは想像がつかないほど優しい甘さがスイーツらしいスイーツ。そしてクリーミーだったりパリパリだったりという、いろんな感覚のバリエーションが楽しかったなあ。

この3種類のスイーツが今、伊勢丹で開催中の「メゾン・デュ・ショコラ2023」で食べられる。開催中の22日から25日の間だけの限定イベントだから、今東京にいる人は迷わず行ってみるべし。

石坂秀威シェフは冒頭に書いたようなすごいプロフィールを持ちながら、2020年3月、働いていたレストラン「INUA」がコロナのせいで閉店してしまうというアンラッキーな目に遭遇。ところがそのアンラッキーが「シーベジタブル・カンパニー」との出会いにつながった。「シーベジタブル・カンパニー」というのは海藻業界で今、グングン頭角を表しているスタートアップ企業だ。

中目黒にあるテストキッチンで試作中jの石坂シェフ

世界中で未来の食材や代替エネルギー源などとして海藻が注目されている今なのに、日本の海藻業界は逆に生産量も消費量も右肩下がりで斜陽産業なのだそうだ。日本人の食スタイルがどんどん欧米化しているから海藻の消費量は下がる一方だし、地球温暖化は海水温度の上昇も招き、そのせいで普通は寒い間は活動しないはず海の生物たち、例えば海藻を餌にするウニなどが一年中元気よく動き回って海藻を食べまくってしまう。だから海から海藻がなくなってきているのだそうだ。

海藻がなくなっちゃうと、ワカメや海苔が食べられない!という簡単な問題だけでは済まなくて、海の中で海藻とその周辺に住み着いて生きている海洋生物たちも食べるものがなくなって死んでしまう。海の生態系がどんどん壊れていくという深刻な問題につながっていくのだ。最近よくニュースになっている魚介類が不漁だという話なんかも、この海藻問題と関わりがあるはずだ、とシーベジタブルの共同代表・友廣裕一さんは言った。

昨年9月、イタリアのトリノで開催されたされた食の大イベント
「テッラマードレ」で、すじ青のりをまぶしたおにぎり配布中の
シーベジ共同代表の二人、友廣裕一さん(右)と蜂谷潤さん。


そんな状況を打破すべく、海洋学者やら水質分析の専門家など海藻オタクのような人たちが集まって頑張っている「シーベジタブル・カンパニー」。その活動の一つが、減りつつある海藻の生産を独自の方法で復活させること、そして新しい海藻の使い方、食べ方を世界に発信すること。そこで中心となって研究開発に日夜励んでくれているのが石坂シェフというわけだ。

日本近海だけでも約1500種類もの食用可能な海藻があるというのに、日本人はせいぜい多く見積もっても20〜30種類ぐらいしか食べていないと友廣さんは言う。たしかに自分のことを考えてみても、ワカメは味噌汁かワカメサラダとか? 海苔だったら海苔巻き、おにぎり、お蕎麦の薬味。そんな程度だ。海外にいたってはもっともっと使われていなくて、せいぜいアジアでほんのちょっと食べる程度。欧米ではほとんどゼロ、という状況だ。

海藻をおいしいと思っていない、おいしい海藻を知らない、そしてどう使ったらいいかわからない。そんな人が世界中にいるのだったら、僕らが提案しようよ、ということでシーベジタブルが頑張っているのだ。

スイーツと一緒に、シーベジタブルが世界に向けて発信する新しいブランド「Re-seaweed」も誕生した。今回のサロン・デュ・ショコラで、その第一弾として発表されたのは海藻で作った発酵ドリンク、その名も「海のワイン」。ノンアルコールだけどワインのような飲み口と、海藻とは思えない、まるでフルーツのようなフレッシュな味わいのドリンクだ。近々ボトリングされて商品化も予定しているらしいから、楽しみに待ってましょうね。

海のワイン。

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ピエモンテのしあわせマダミン
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