トリノよいとこ一度はおいで その1 そもそもトリノって?
イタリアのトリノに24年前から住んでる、ただのライターの私だけど、コロナ禍で観光が壊滅的な打撃を受けたイタリアのため、一人で勝手にトリノ観光応援連載をすることにした。
イタリアのトリノというところは、日本の人にはイマイチ知られていないけれど、実はイタリアの他の都市に負けない、魅力いっぱいな土地だ。一度来た人は、また来たい!とリピーターになることも多い。
とは言え、そもそもいったいトリノってどこ? と思う人も多いはず。聞いたことはあるけど、みたいな。
トリノの超基本情報
「イタリア北西部のフランスと国境を接するピエモンテ州の州都」で、「イタリア語ではトリーノ、英語でトゥーリン」。「地図上では、ミラノから左にほぼ一直線150キロ行ったところにある、イタリア第4番目の大都市。人口は100万をちょいきるぐらい」
なんていうのが、トリノを説明する時によく言われること。でも、これじゃ、あまりイメージがわかないと思う。じゃあ、
「トリノはイタリアがイタリアという国になった時の、最初の首都だった美しい街」で、「トリノを州都とするピエモンテ州はイタリア最高峰のワイン生産地の一つだし、世界中のグルメ垂涎の白トリュフの名産地、そのほかにも美味しいものがザックザク!」
と言ったら? ちょっと来てみたくなるでしょ?
じゃーん、これがピエモンテ州アルバ産の白トリュフ。
こんなふうに卵たっぷりの手打ち麺「タヤリン」に削ってかけて食べる。
「トリノでは2006年の冬季オリンピックが開催されました。荒川静香さんがイナバウワーを決めたのも、ここトリノです」。
いつまで古い話してるの、という気もするけど、だから未だに、雪深い寒~い土地と思っている人が多いのか。「トリノって雪が多いんですか? 寒いんですよね?」とは本当によく聞かれる。
たしかにピエモンテ州という州全体で見れば、雪が多い地域もあるし、「山の足元」という意味のピエモンテ(Piede=足 Monte=山)という名前の通り、アルプス山脈の足元に広がる州だから、晴れた冬の日には、トリノの街の中からでも、白い雪化粧をした山並みが見えて、山好きでなくてもうっとりしちゃう美しさだ。ちなみに冬季オリンピックのスケート競技は市内で、
スキー競技はトリノから100キロ以上離れた山岳地帯で開催した。
だからと言ってトリノの街自体はそれほど寒くないし、雪も少ない。真冬の一番寒い時に、時々気温がマイナスになるぐらい。東京よりちょっと寒いかな、そんな感じ。かといって夏が涼しいかといえば普通に暑い。
最初の首都だったという話
イタリアは1861年まで、ミラノ公国とかトスカーナ大公国、パルマ公国などがバラバラに存在していて、「イタリア」という意識はあったものの、一つの国にはなっていなかった、だからイタリアには「イタリア料理」というのはなくて、「ピエモンテ料理」やら「トスカーナ料理」といった郷土料理がいっぱいあるんだよ、とはイタリア料理の勉強をするとまず出て来る話。
そのバラバラな国を統一してイタリアという国にしたのが、当時トリノ一帯を納めていたサヴォイアという貴族の長、ヴィットーリオ・エマヌエレ2世。彼の8代前の祖先がサルデーニャ王となった時点で公爵家から王家に昇格していたから、イタリア統一後は彼が初代イタリア王になった。
ちなみに、サヴォイア家を王家にしたヴィットーリオ・アメデオ2世という人は子供の時病弱で、彼のために発明されたある食べ物が、のちのイタリアでとてもポピュラーになるのだが、これはまた、別のお話。
こうしてトリノは、1861年にイタリアの首都になったのだけど、4年後にはフィレンツェに遷都、さらに6年後にはローマに引っ越し現在に至る。
ところで今、アメリカやヨーロッパで人種差別に抗議する運動が過激化していて、歴史上の人物の銅像が破壊されたりと、攻撃の対象になっているという。その中に、このサヴォイア家の王様達の銅像も含まれているらしい。
その話も、もう少し勉強して、近いうちに。
観光観光してない、スッとしたエレガントな街並みがいい
さて、フランスのサヴォイア地方とピエモンテ地方がテリトリーだったサヴォイア家の趣味は多分におフランステイストだったようで、碁盤の目に整備された通りに、バロック建築やリバティ建築が今も残る街並みは、とてもエレガントで優雅な雰囲気。ちょっとおパリに似ていなくもない。
実際、街を横切るポー川に、いくつもの美しい眼鏡橋がかかる風景はとてもきれいで、「ピッコラ・パリージ」(小パリ)と呼ぶ年配のトリネーゼ(トリノ人)も多い。その頃に建築されたサヴォイアの王宮群は世界遺産に指定されているし、1757年創業のレストラン「デル・カンビオ」は、お味の方はともかく(笑)、昔のままの姿を残していてとても素敵。
2014年に経営陣が新しくなったのを機会に料理は一新して、ミシュラン一つ星のついたモダンな料理になった。昔ながらのトリノ料理ではなくなって
つまんない、という意見もあるけれど、一度は行ってみる価値はあるかも。
そんなわけで「トリノよいとこシリーズ」、次回は、私がトリノで一番好きな、一度ならず何度も行きたいオステリアのおいしいおいしいお話。(そんなわけって、どんなわけ?)「デル・カンビオ」の話は、その後で。
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