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「ヘーゼルナッツ界のガヤ」と呼ばれる男の話

 あのヌテッラが凡庸な味に思えちゃうほど、ハチャメチャにおいしいヘーゼルナッツのスプレッドクリームと、その材料であり、そのまま食べて最高においしい「パパ・ディ・ボスキ」のヘーゼルナッツ。それを作っているヨゼは「ヘーゼルナッツ界のガヤ」という異名を持っている。

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↑ヘーゼルナッツの木を剪定中のヨゼ。

「ガヤ」と言えば、イタリアワイン好きなら思わず背筋がピーンと伸びる「Angelo Gajaアンジェロ・ガヤ」のこと。ピエモンテ州ランゲ地方のバルバレスコという小さな村で、世界中がよだれを垂らすビッグな(そして超お高い)ワインを作るワイナリーの名前であると同時に、その4代目オーナーで、ファミリーが代々作ってきたワインのクオリティを極めに極め、世界に知らしめたアンジェロ・ガヤ、イタリアワイン界の帝王とも呼ばれる人の名前だ。

そんな人の名前を冠される。それだけヨゼのヘーゼルナッツ作りにかける情熱とこだわりと、そこから生まれるクオリティが普通じゃないということだ。

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↑私のお宝、帝王直筆サイン入り「ガヤ」ボトル。

そして、そのあだ名をつけたのが、またまたランゲの超ビッグ、エリオ・アルターレだというから、どんだけレベル高いの、という話だ。

エリオ・アルターレとは、これまた言わずと知れたイタリアワイン界の超ビックで、伝統的なピエモンテの赤ワイン、バローロをモダンで飲みやすいワインへと進化させ、世界中に広めた立役者。エリオさんとアンジェロ・ガヤさんは幼馴染で、切磋琢磨してピエモンテワインの発展に寄与したんだという。

そんなワイン界の最高峰たちが、試飲会で自分たちのワインと合わせるのが、ヨゼのヘーゼルナッツなんだって。最高のワインの香りと味を邪魔せず、引き立てあう、最高の「おつまみ」なんだそうだ。

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↑殻付きのヘーゼルナッツ


トリノから車を飛ばして約1時間30分。一面に広がるランゲのブドウ畑を見ながらどんどん丘を登っていくと、人口約500人の小さな村、レクイオ・ベッリアに着く。その小さな村のはずれに「パパ・ディ・ボスキ」はある。辺り一帯はヘーゼルナッツの森だらけで、「トンダ・ジェンティーレ・デッレ・ランゲ」と呼ばれる品種が栽培されている。世界中のトップパティシェやトップシェフたちが使いたがる高級品種だ。

使いたいけど、大産出国のトルコに比べると生産量が少なくて値段が高いので、なかなか手が出ないと、前に、とある日本のパティシェさんが言っていた。

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↑ヘーゼルナッツの畑

で、そのすごい品種をみんなが作っているのに、ヨゼのヘーゼルナッツが飛び抜けておいしいのには、いくつか理由がある。

まずはヨゼが先祖から受け継いだヘーゼルナッツの畑が、世界最高峰と言われるピエモンテのヘーゼルナッツ産地の中でも、「アルタ・ランガ」という、特にヘーゼルナッツ栽培に適した位置にあること。

ピエモンテ州の南東部、白トリュフで有名なアルバやら、バローロやバルバレスコといったイタリア赤ワインの最高峰をゴロゴロ生み出す地域を、Langheランゲと呼ぶけれど、そのあたりから20〜30キロ離れ、少し標高が高い地域が「アルタ・ランガ」(ランゲの高い部分)。強い酸性の土壌と、秋から冬にかけて湿度がとても高いこと、そして山を越えたらすぐそこにあるリグーリア州の海からの風が、ヘーゼルナッツには最高なんだそうだ。

このアルタ・ランガで栽培されたヘーゼルナッツが世界一と言われる理由は3つある。トーストをした後の香りが高く、長く続くこと。薄皮がトーストしただけで簡単に外れるので、皮をむく余計な作業をしてナッツにストレスをかける必要がないこと。そして酸化しにくく長持ちするということだ。

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↑トースト作業中に、ほらこんなに剥けちゃっている。白くてキレイでおいしそう〜。

けれどもヨゼは、ただでさえすごいナッツを栽培できる土地を親からただ受け継いだだけでなく、土地が持つ自然の力を最大限に引き出すにはどうしたらいいか研究し、極めた。

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↑Papa dei Boschiの工房。お父さんとお母さん、左がヨゼ。

たとえばナッツの味を決めるとても大事なフェーズである収穫は、ギリギリの完熟まで待って、自然に木から落ちたものだけを拾い集める。拾い集めると言ったって、50ヘクタールもある畑をヨゼは一人で、掃除機付きトラクターみたいな車に乗って、埃まみれ、汗まみれになって拾い集める。大量生産の大農場だったら、機械で木を揺すって、まだ完熟でない実もいっせいに揺さぶり落としちゃうところを、ヨゼは、一粒一粒が、自分で落ちたくなるのを待って、拾うだけだ。

そして最終的な味を左右するのが、収穫したナッツの乾燥作業だ。

「うちのヘーゼルナッツの味は、自然の乾燥方法から生まれていると言ってもいい。収穫したナッツたちは、地面に重ならないように一層に広げ、太陽の光に当てて4〜5日間乾燥させる、それが味を決めるんだよ」とヨゼ。

50ヘクタール分のヘーゼルナッツ約500トンを地面に広げて昼間干し、夕方はしまう、という大変な作業を繰り返して、あのおいしさがあるというわけだ。

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収穫・乾燥が終わったヘーゼルナッツは、殻をつけたままストックしておいて、オーダーが入るたびに少しずつ製品化されていく。大量にドバーッと作って、どーんと倉庫にしまっておくのではありえない、できたての味をお客さんに届けるために、こんな小さな機械で?と驚くほど、チマチマと(失礼!)作る。その様子や、焙煎の様子など、youTubeで見られるのでどうぞ。

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↑こんなふうにチマチマと(笑)作っているから、世界中にバンバン輸出なんかできない。それどころか、イタリア国内でも、知る人しか知っていない。それでも最近は、ヨゼとマリアのヘーゼルナッツのおいしさを嗅ぎつけた私たちのような人間が増え(笑)リクエストも増えたから、トリノに小さなショップを出した。

トリノの中心街からちょっと外れた商店街に「ババ・ディ・ボスキ」のショップはオープンした。小さなその店内には、ヨゼのヘーゼルナッツ商品と一緒に、ヨゼと同じようにピエモンテのいいものを作り続ける仲間の商品が置かれている。いつかまた、気軽に旅行ができる日が戻ってきたら、ぜひご案内いたします。

イタリアへは行けないけど、食べてみたいーという人はこちらから購入できます。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc7nyD8ilznX_U1_VxtUbMmFLy7CgYPaae9LUSNdSv7hmmHAw/viewform

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Papa dei Boschi  

https://www.papadeiboschi.com/
shop :  Via Cibrario,24/B  10143 Torino  Italia



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