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雨の日に過去へ戻った気がするのは何故だろうか

これは、昔と同じ時間を過ごしているような感覚と言ってもいい。

TVから『あたしンち』が流れていたって不思議じゃないし、母が作った焼きそばがコトンと机に置かれたって何の違和感もない。

目を閉じて耳をすませば、網戸にした窓からザーザー降りの雨音が聴こえてくるような気さえする。

この雨音と共に過去を振り返ろうとすると、何故だか涙が出そうになってしまう。

薄暗い光、しっとりとした空気が体を重くさせ、私の精神を陰鬱なものとさせる。

家族の死別だとか辛かった経験はないが、ただ漠然と後悔や懐旧の念を抱くのだ。

「ペトリコール」とは、雨が降った時に地面から上がってくる匂いのことを言う。ギリシャ語だそうだ。

情緒的な言葉を沢山持つ日本だが、このペトリコールに近いような言葉がないことに驚いた。

ただ、雨上がりは土の香りがすると言えば、どこか上品な感じがする。

高校の頃、もし女の子と雨宿りをしていたとしよう。できれば軒下がいい。

雨草、透けたブラウス、水溜りを弾くタイヤの音。想像はできるだけ豊かに。

ここで「雨降った後の匂いが好きなんだよね〜」なんて言われたら、私は間違いなく恋をする。

雨の日に始まる恋なんて、素敵じゃないか。

私はこんなことを考えながら、感傷と妄想に浸り、雨の日を過ごす。

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