人生の半分損してる



トマトが嫌いです。


生のトマトが苦手で
食べられないことはないが、
食べない人生の方が幸せである。

宮本家の人間はみんなトマトが大好きだったものですから連日大皿に大量の冷やしトマトが並び辟易した。

一瞬で消えるトマト。永遠に残る人参。

トマト一つで大喧嘩に発展することもあった。
誰が多く食べたとか食べてないとか
そんなしょうもない理由で妹はこの世の終わりみたいな顔をして泣いていた。

トマトの恨みは恐ろしい。

『トマトさえなければ…ッ!!!』

トマトなんて物があるから
いつまで経っても戦争がなくならないのだ。


居酒屋で冷やしトマトを見るたび、
口の周りをびちゃびちゃにしながら
バキバキの目でトマトにむしゃぶりつく兄弟たちの姿を思い出し、貧血で倒れそうになる。

トマトが食えれば貧血にならずに済んだのに。


宮本が人生で疑問に思うことランキング第37位。

『トマトが大好きな人は何故トマト嫌いの人にトマトを食べさせたがるのか』

嫌いだと言っているのに
なぜか勧めてくるのである。


「このトマトはマジで美味しいよ!」
「このトマトだったら絶対食べられる!」
「このトマトはマジでトマトじゃない!」

このトマトはマジでトマトじゃないって何だ?

勢いに圧倒されてつい口に入れてしまう。
こちらからしたらどんなトマトもトマトなのですよ。

「えー!何で!?こんなに美味しいのに!」
「トマトが食べられないなんて可哀想!」

「トマト食べられないとか人生の半分損してる!」


ちょっとあんまりじゃないか。
ひどい言われようである。
お前の人生の半分はトマトでできているのか。

良かったですね!リコピンたっぷりの人生で!!!



話は打って変わって

宮本は蕎麦が食べられない。
アレルギーというやつで。


死ぬ。最悪死ぬ。

「うわー。俺ざるそばにしよっかな〜。蕎麦アレルギーだけど」

宮本の鉄板アレルギーギャグである。

宮本を殺したいほど憎い人。
うまいこと蕎麦を食べさせるといいですよ。

『1番好きな食べ物は何?』

と言う質問に「蕎麦」と答えた人に
人生で3回出会ったことがある。


この世で1番好きな食べ物が……蕎麦???


『……食べてみたすぎる』


ステーキやお寿司、ハンバーグにカレー。
オムライスにラーメン、餃子に焼肉。

これだけの強敵を抑え1位に躍り出る蕎麦。

あまりにも気になるじゃねえかよ。

食べたことはないが分かっている。
あんなモン美味いに決まっている。

推測でしかないが

柔らかくもコシのある麺を啜れば
蕎麦の香りが出汁の香りと共に鼻に抜け
つるりと滑らかな喉越しに感嘆し天を仰ぐんでしょ。

蕎麦食いたくなってきたな。
出前取ろうかな。蕎麦アレルギーだけど。

宮本の鉄板アレルギーギャグはさておき
来世ではいっぱい蕎麦を食べたいんだ。


年越しには長寿を願い蕎麦を食べ、
引っ越したら縁起を担いで蕎麦を食べ、
旅行先でご当地蕎麦に舌鼓を打ち、
時間がない時は立ち食い蕎麦をかきこんでみたい。 

1口ずつお腹がいっぱいになるまでそばを食べ続けるというイカれた郷土料理も食べてみたいな。


そして言う。絶対に。間違いなく。
蕎麦アレルギーの人間に。


「お前蕎麦食えないとか人生の半分損してるぞ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?