見出し画像

「関係障害論」を読みました。

なぜ読んだのか

  • 会社の方おすすめ!

  • 介護職の方が一度は読んでおくべきと言われる名著

感想

1997年に発行された本なので、平成初期の本ですね👀
たったの27年前に、「老人を縛らないために」というサブタイトルの本が出ていることにまず驚きました。

タイトルからしてものすごく難しそうな本だと思っていたのですが全くそんなことはなく、著者の独特な話し方が親しみやすく、爆笑してしまう箇所もいっぱいありました。

正直、これを読んで人生の価値観が変わりました。それくらい、今まで人間関係でモヤモヤと感じていたことがスッキリ言語化されました。

防衛機制による自虐

寝たきりのお父さんが、ある日献身的に介護をしている奥さんが浮気をしているのではないかと疑います。

お父さんはどうしてそう思うようになってしまったのかというと、介護する側と介護される側には一方的な関係になり、権力が生まれてしまうというのです。奥さんはお父さんのことが全て見えていますが、お父さんからは奥さんのことが見えない時間があります(買い物など)。それで、お父さんの防衛機制が働いてしまったというのです。

「私はもう家族に見捨てられてしまった」なんてよく言います。それは、面会に来て欲しいということを言っているのです。面会に来てくれと言って頼んで、来てくれなかったらそんな惨めなことはありませんから、「見捨てられてしまった」と一番悪い状況を先取りすることで傷つくまいとしているのです。これは日本の老人の心理的特徴という気がします。

p37

どう解決したかというと、お父さんの人間関係を豊かにするためにショートステイに泊まってもらうようにしたそうです。お父さんは「父の顔」以外にも外での顔も持っているので、それを出せたことで良い気分転換になったようです。

ちなみにこの話は、老人だけではなくて、若い人にも当てはまると思います。このケースを聞いて、自分がかつて重度のメンヘラ彼女だった理由がわかりました。

ピアジェとマズローを批判する

3章では、進歩主義を批判しています。

これは、現在でも安楽死を認めるのかという問題や、社会保障費の話、行きすぎた資本主義による環境破壊も関係している話だと、とても強く思いました。

「進化しなければならない」という強迫観念にかられて、いずれ来る老いや、もう目の前に迫っている環境破壊、異常気象、戦争などの”現実"を直視しないという風潮は、27年経った今さらに加速しているのではないでしょうか。

制度を変える前に、まず自分の『老い』や『進化』に対する認識を改めなければならないと深く反省しました

ピアジェの考え方というのは、人間は発達していくものだということが前提にありますから、今やっている子供の動きは、それ自体としてはほとんど無意味なんです。
〜中略〜
ピアジェ的な見方というのが通用しない世界が現れたのです。重度心身障害児の世界です。
〜中略〜
ご親切にも早期発見、早期治療と言うでしょう。しかし実は、早期選別、早期隔離ということをやって、極めて特殊なリハビリの専門家ばかりに囲まれて、なんとか法といった理論に基づいて訓練されるというのを、一生やらなければならないということです。いつまで経っても関係にいけなくて、個体の理論の中にずっといるということです。果たしてそれでいいのか、という疑問が起こってきました。

p158

さらにある学者なんか、老化さえ認めていません。「人間は死ぬまで進歩する」なんて無茶苦茶をいう。進歩しなくてはいけない、という強迫観念が強すぎて、呆けたり、もうろくしたりという自然過程まで見えないんです。

p165

個体の問題が、関係の結果であるという視点を持つ

著者は、社会的関係、自分自身との関係、家族的関係の3つの軸で3次元の座標を作り、関係世界を立体で表しています。

どれか一つでも0になったら、立体ではなくなってしまいます。そうならないように、3つの軸からアプローチしようというお話でした。

私たちは人間というものを見るときに、もちろん個体の評価はしなくてはいけませんが、たとえば高血圧だとか、糖尿病だとか、躁うつ病だとか、認知症の症状だとか、それは個体の問題だと思われているんだけれど、実は関係の結果なのではないか、という視点を持っていなくてはなりません。

p191

最後の感想

本当に、人生の価値観が変わる一冊でした。

私は子供が産まれてからというもの、政治や自然環境の問題にとても関心が高くなりました。そうして自分が仕事を通して何ができるか考えたときに、福祉関連の事業に携わりたいと思って転職させて頂いたのですが、毎日毎日介護の勉強をさせてもらうと、人生の答え合わせをさせてもらっているな、と思います。

自然環境もそうだし、政治的な話でも、自分の子供や孫が住みやすい世界を作るにはどうしたらいいんだろう、とよく考えるようになりました。でも政治や自然環境の話って、一人ではどうしようもできない感じがしますよね。

しかしながら、著者は環境や社会のせいにするな、自分自身が社会の代表なのだとおっしゃっています。これは介護職員の方に向けたメッセージでしたが、介護以外のことでも当てはまると思いました。この言葉を胸に、自分には何ができるのか考えながら生きていきたいです。

環境が悪いから、社会が悪いからという言い方はどこか自分の責任を放り投げている感じがするからです。とくに、社会が悪いという言い方にはそれを強く感じます。社会が変わらない限りは老人が元気にならないなんて言い方は、どこか自分の課題としてではなく、人のせいにしているような気がします。

ところが、老人にとっては、介護者である私たち、特に夜寝ていて、ナースコールを鳴らしてやってきたその人が、実は社会の代表なのです。私たちは、老人の前に、社会そのものとして現れているし、私たち自身が最も大きな影響力を持った環境そのものなのです。

p73

(アフィリエイトリンクではないのでぜひ!)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?